かなり 実録 バレー部物語

・己を制御せよ

4月、審判講習会を兼ねる宮城県社会人強化練習会が行われた。今年度の主なルール改正としてサーブ権がジャンケンではなくコイントスに改められたこと、セット間が2分から3分に延長されたことが上げられる。どれも6人制に合わせる改正となったようだ。
試合としては例年以上に仕上がりの良さを感じる内容であった。それが失セットゼロという結果となり、実業団県予選でもNittoをストレートで下すことへと繋がっていく。

今年から大会が新設された。全日本9人制バレーボールトップリーグ、通称「V9チャンプリーグ」が5月から10月にかけて各地で展開される。参加チームは中部徳洲会病院、JFE西日本、おかやま、富士通、住友電工、JT東京、横河電機、サンデンの8チーム。
RI東北は? …今年度は予選とかではなく、昨年度の実績その他諸々が考慮され、残念ながら選抜されなかったということ。でも今の状況を考えれば、それはそれでよかったかもしれない。入れ替え戦があるようなので、しっかり力を蓄えてチャレンジできればいいだろう。
6月の赤城カップはリーグ戦で3戦全勝ながら、肝心の順位決定戦で連敗と詰めの甘さが表れて6位。ただ全体を通して動きは悪くなく、全国大会向かって更に強化していく。

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3月に開業したばかりの北陸新幹線に乗り、向かうは全日本実業団が開催される石川県金沢市。
予選グループ戦は四国電力徳島との対戦、…何と2セットとも2点に押さえてしまった。全国大会では最小失点での勝利に「ちょっと不安」と本国、いろいろ試したいことができなかったようだ。ここは体力温存できたと前向きに考え、次に挑む。
今大会は神奈川のリコー、静岡のリコー沼津も出場しており、どちらも予選を突破することができた。

決勝トーナメント抽選、RI東北は予備抽選で最後から2番目の本抽選順番となってしまい、残り3枠になってもまだリコーの相手が決まってない状況となった。「まさか…」監督の安重にリコーグループ同士の対戦が頭をよぎる。しかしここはTHK甲府がリコーとの対戦を引き当て、安重は四国電力との対戦を引いた。四国電力と言っても今度は徳島ではなく香川の代表。
翌日の1回戦第1セット、動きが硬く2−4とされるが、本国のサービスエースで11−9と逆転するものの、なかなか離せない。RI東北は両サイドの強打で相手の流れを断ち切り21−17で先取。第2セットは10−5とダブルスコアで折り返すと佐藤の速攻、軟硬織り交ぜながら圧倒し21−11でストレート勝ちした。
梅津も「硬かったぁ」と自覚するほどだったが、この先は落ち着いていけるだろう。

住電伊丹にフルセット勝ち。=北陸電力石川体育館

2回戦のNEC府中戦もストレート勝ちし、3回戦の相手は昨年も3回戦で対戦し、敗北を喫した住友電工伊丹となった。第1セット、シーソーで5タイと互角の展開。伊丹の強打で7−10とされ、佐藤の強打などで追い上げるも、後半は判定に抗議するなどリズムを乱し、伊丹のサーブに崩され一気に持って行かれた。
第2セットはラリーから鎌田強打、レフトから鎌田強打、伊丹レフト強打をブロックして勢いに乗ると、要所でサーブが決まり12−7とリード。鎌田時間差、伊丹ライト強打をブロックで16−10、永井C、伊丹Aを佐藤ブロックして18−11とし、このセットを奪い返す。
勝負の第3セット、両者連続得点を上げる白熱の展開から鎌田時間差、ラリーから馬強打を伊丹ブロックオーバーネット、梅津サービスエースで13−9とすれば、伊丹も負けじと速攻と時間差を絡めて13タイとする。
激しい攻防が続いたが、佐藤B、伊丹時間差をブロックして18−16とすると、最後はラリーから伊丹レフトをブロック21−17、接戦をものにした。

観戦した加藤社長から「負けた時のコメントも考えていましたが、勝って本当に嬉しいです。疲れたと思うので、ゆっくり体を休めて明日に備えてください」と激励の言葉をいただいた。
第2セット2−1から佐藤が助走に入ってサーブを打つ直前に隣のコートからボールが入りノーカウントになった。ノーカウントが分かっていて打ったのか定かではないが、ファーストはネット。で、打ち直しはファーストが入って、そこからもう2点が入り、こちらが主導権を握ることができた。いやほんと、ちょっとしたきっかけで流れって変わる。怖いね。

この試合は2セット目から今まで拾えなかったボールもフォローできたし、サーブも要所で決まったし、声も出ていたし、見違えるような素晴らしい内容だった。でも今日が良かったから明日もという保証がないのが今のチーム。いつも1セット目を一方的にやられているようだと、シードチームに対して後れを取ってから盛り返すのは至難の業。さてどうなるか。

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2年ぶりの準々決勝、「え?2年前も最終日に残ったっけ?」と、澤が勘違いするほど昔のように感じられる。それだけここ最近の戦いが不甲斐なかったとも言えるが、トーナメント初戦敗退のリコー、リコー沼津にも応援いただくので、気持ちを奮い立たせて何とかこの一戦を乗り越えなければならない。
相手は第2シードのJFE西日本。第1セット、恐れていたことが起きてしまった。石川のダブリからいきなり8連続失点…東北のダブリ、カットミスが響き、もはや反撃の気力は断ち切られた。11−21で第2セットを迎える。
今度は東北が走る。佐藤B、JFEネットプレーから2段トスドリブル、石川サービスエース、ラリーから渡辺強打4−0としたが、JFEもサーブが冴えて7タイとされ、ラリーはネットに当たって東北コートに落ち8−10と運も味方につかず。
その後もミスが響いて7連続失点、更に3連続失点で9−17。鎌田強打、渡辺フェイント、渡辺連続サービスエースで16−19と、ようやく反撃に出たが、終盤の追い上げ実らずストレート負けとなった。

やはり昨日のデキはまだまだ限定的なものであり、いろいろな条件が揃って発揮できる。今日からが勝負という相手に対し、前日に力を使い果たした中堅チームの戦いという感じであった。カットも2段トスも上がらない、フォローも雑。それでも前日のようなこともあるので、第2セット4−0の時はもしやと思わせたが、あっという間にアドバンテージを使い果たしてしまった。
「(出だしの)石川のサーブミスとか…メンタルだなあ、メンタルだよ。結局ファーストサーブ(のイン率)が10%ぐらいじゃないの?」と鈴木がため息つく。今回もラインクロスが頻発しており、自己コントロールできていない表れである。
とはいえ、最終日に来られたことは、今のチームにとって大きいこと。昨年、全日本総合で惜しくも負けたことがしっかり次につながった。


・リコーグループ強化せよ

8月、チームの強化や活性化などを主旨として、リコー(神奈川)、リコー沼津(静岡)、RI勝田(茨城)、RI東北(宮城)の4チームがリコー厚木事業所に集結し、第1回のリコーグループカップが開催された。
「何かリコーグループのチームでできないですかねぇ」…宮城県社会人強化練習会の懇親会でリコーの長嶋部長に安重が話しかけたことが、リコーグループカップ開催へのきっかけ。ちょうど強化練習会に4チームが参加しており、話が進むのも早かった。
昔はリコー三愛グループバレーボール大会というのが4年間くらい開催されたことがあったが、RI東北(当時東北リコー)は一度も優勝できなかった。しかしここまでの実績からして、今大会でRI東北がリコーグループの頂点に立たないといけないだろう。
ただ、前日にリコー厚木の夏祭りでエキシビションとして リコー vs RI東北 の試合が行われ、リコーがストレート勝ちしている。本番はどうなるか。
(試合は2セットマッチ、順位は勝敗、セット率、得点率の順で決定される)

リコーグループ4チームが揃う。=リコー厚木体育館

まずはリコー沼津との試合、第1セットは5−0と走り、12−5と差を広げる。終盤も馬強打、石川裏時間差、沼津強打はタッチネット、馬サービスエースで18−9とし先取。第2セットは沼津に2−5とリードを許すも、そこから11連続得点で13−5と勝負を決めた…かに見えたが、6連続失点を許し19−16。しかし渡辺にボールを集めて逃げ切った。
2戦目のRI勝田戦、勝田の強打をフォローしきれず5−7とされるが、渡辺強打、レフトから鎌田が連続で強打決め、勝田FR強打アウトで10−8と逆転、そこから確実に加点して第1セット先取。
第2セットも勝田にリードを許すが馬強打、渡辺強打、勝田中央から強打はネットで11−9と逆転、地力を見せてストレート勝ち。

最終戦はリコーとの対戦、第1セットは強打がアウトでリズムが掴めず、4失点が2回で3−9と大きくリードされてしまう。シーソーで何とか落ち着きを取り戻し、佐藤B、ラリーから馬強打、石川トスフェイント、本国セカンドでサービスエース12−13、終盤に鎌田強打、永井サービスエース、相手タッチネットでついに20−19と逆転。デュースになったが渡辺の強打と石川の裏時間差で振り切った。
第2セットは中盤から馬リバウンドでブロックアウト、石川裏時間差、リコーライト強打をブロック、梅津サービスエースで14−10と抜け出し、最後は馬サービスエースでストレート勝ちの優勝、面目を保った。

加藤大会会長の総評:「お疲れ様でした。大きな怪我がなかったというのは良かったです。もっと圧倒的に東北が強いのかなと思ってたら結構いい勝負があって、最後に東北が思い出したような強さを見せ、やっぱ強いなと感じました。結構いい練習になったんじゃないかなと思うので、これからも交流して、お互いに高められるような形でやっていきたいと思います」

リコー戦第1セット、負けゲーム濃厚の6点差をよくぞ逆転した。早めのタイムアウトを取ったベンチワークも功を奏した。対戦前は得失点差で東北が圧倒的に不利だった。リコーは1セット目をデュースで取られたが2セット目を取れば1位になれた。もしデュースで1セット目をリコーが取っていたら、2セット目は14点以上で1位だった。
昨年度の櫻田記念でもそうだったが、どうもRI東北は得点率になると分が悪い。リーグ戦でもトーナメント戦でも“勝ちゃいいだろ”に変わりないが、その前段である1点をムダにしないプレーが勝利につながっていくことを忘れないようにしなければならない。
課題は少しずつではあるがクリアしているようだし、これからもリコーグループとして元気を発信し続けよう。


・ZAOが蔵王にやってきた

9月、総合県予選制覇を経てZAOカップが白石市で開催された。RI東北は参加していないが、V9チャンプリーグ宮城大会としてリーグ所属チーム同士の対戦が共催試合となった。
「14回目にして初めて名前通りの大会が開けたかな」と実行委員長の澤が感慨深げに語ったが、今回の開催地・白石市は蔵王連峰の麓。ZAOカップの名称はその蔵王から取っていることから、ようやく大会名にマッチした場所での開催に至ったというわけ。
会場の白石市文化体育活動センター、愛称「ホワイトキューブ」だが、文化体育というだけあって多目的に使うことができる。アリーナはバレー4コート分の広さがあり、今回はスライディングウォールという可動式間仕切で中央を仕切り、2コートを使用(1コートは練習用)。
実はホワイトキューブ職員の方が、審判台が何に使われるのか分からず、そのうち破棄しようかなんて考えていたそうで、6人制の試合もしていなかったのか…いやぁ日の目を見てよかった。

RI東北としてはV9チャンプに参加しているチームに勝って、意地っていうのを見せて欲しいところ。しかし初戦のサンデン戦は苦手意識があるのか、いいところなくストレートで敗れてしまう。
それでも2戦目の住友電工戦は第1セットを先取すると、第2セットもデュースの末に勝利! 今日は業務の都合で鎌田が参加していないが、いい意味で存在感が薄い菊地がどこからともなく現れて時間差を決めるなど、無難以上にこなしてくれた。

((( Idle Talk )))
初日終了、引き上げようとした時、まさかの事態が発生。今日は隣のフロアでは卓球大会だったが、明日は家庭バレーボールが行われる。しかし予約したコートは3コート分。つまり1コートがダブルブッキングということになってしまったのだ。
しばし担当者間で協議が行われたが、練習用コートを削るのが妥当ということで、明日は1コートのみで開催することになった。幸いにも懇親会にスタッフが集まるので、そこで説明することができる。
「まあ1コートでも進められるし、しょうがない。向こうもバレーだし」と澤。職員の方は平謝りだったが、コートセッティングなど責任を持って対応いただいた。
ちなみにその家庭バレーボールというのは8人制ビニールバレーの大会であり、宮城が発祥の地らしい。ビニールだからサーブは直接相手に届かないため、サーブ → トス → アタックと、サーブ権を持っている側が攻撃できるという特色がある。

大会二日目(最終日)は壁を隔てた隣のコートで開催されている家庭バレー会場にアナウンスしていただき、空き時間に入れ代わり立ち代わり観戦いただいたのは嬉しい誤算。「凄いパワー」「うわあ、何で上がるの?」「真似できないよねー」なんて会話が聞こえてくる。
共催しているV9チャンプリーグの趣旨にも“観て面白い優れた9人制バレーボールの特徴を広く周知する”とあるので、白石での開催は大成功と言えるだろう。
本日の初戦は日本無線と対戦、1セット目は4連続失点、4連続得点、5連続失点というなかなかない展開だったが逆転先取、2セット目は13−8からゲームセットまでずーっとシーソーという展開もなかなかない中でストレート勝ち。

最終戦は横河電機との対戦、やはり1セット目の前半で6−11とリードを許す苦しい展開ながら、鎌田のサービスエースを絡めて逆転、終盤は時間差が冴えて先取。 第2セットはシーソー7タイからピンサ高橋から3連続得点、渡辺のサーブで崩して4点連取、石川のサーブで崩して5点連取と猛攻を仕掛けてストレート勝ち。
3勝1敗で3チームが並び、得点率の差でサンデンが1位、RI東北が2位となった。失点が多いRI東北にとって得点率の勝負になった時点で勝ち目は薄かったが、点数云々って言えるようなチーム力になってきたとも言える。

やはり地元大会、応援団は少数ながらその応援は素晴らしかった。前監督の江口が音頭を取って声援を送っていたが、普通スティックバルーンを使った応援は、苗字か名前の呼びやすい方で、例えば佐藤なら「ヨシアキ」チャチャチャ、永井なら「ナガイッ」チャチャチャ、って感じになるが、永井に対して「ジューーン!」チャチャチャ、と連呼していた。さすが江口の応援はひと味違う。
これが東北の昔ながらのっていうか、悪意のある…じゃない、トゲのある…でもない、クセのあるっていうか、ユニークな応援。呼ばれた本人は苦笑いしていたが、内心はとても嬉しい(はず)。江口も「そうそう、そこら辺はね、敢えて」と狙ってやっている。

敗戦を喫した試合ではなかなか自分たちの流れに持ってこれなかったものの、モチベーションが高く集中力を発揮すれば、見事なパフォーマンスを披露することができる。
結果的に好成績を収めたが、それは本番で勝ってこそ意味がある。強豪は当然のように地力を上げてくるので、こちらも更にレベルアップする必要があるだろう。