かなり 実録 バレー部物語

・本番の怖さ

いくつかルール改正が行われたが、一番影響があるのがメンバーチェンジ。昨年までは4回だったが、今年からは6回となる。6人制に合わせられるところは合わせるということらしいが…交替した選手は同じ選手としか交替できなくなった。つまり実質3回の入替え可能ということになる。
チーム事情で5人が抜けたため、今までセッターがサーブを打つ時のみ石川が代役セッターで上げてはいたが、今年から正セッターとして対応することになった。
司令塔と言われるセッターはチームの勝敗に深く関わる重要なポジション。攻撃の組み立てが大きく変わる可能性もある。本格的なセッター経験がないだけに、どう影響していくのかが最大の焦点。

4月の宮城県強化練習会を経て、5月の実業団県予選ではNittoにストレート勝ちしたものの、あわやの戦い。オーバーネット多発など凡ミスが多すぎ、セッター云々以前の問題だった。
6月の赤城カップでは予選リーグ4チーム中3位、順位決定トーナメントでは2戦全勝で最終7位の成績。5試合中4試合がフルセットで、大敗がなかったというのは、強化が実りつつあるのか…不安と自信が入り乱れる。

◇  ◇  ◇

全日本実業団は島根県松江市で開催された。メンバーが少ないため万が一のことを考え、監督の安重、マネージャーの渡辺も選手登録(18名まで可能)している。
神鋼環境ソリューション戦(予選グループ戦)第1セット、出だし3−0と好調、6−5になったがブロックと石川サービスエース、相手攻撃ミスで10−5とリード。更に鎌田や熊谷のサービスエースなどで攻撃の手を緩めず、21−12と先取する。
神鋼環境戦、菊地の時間差。=松江市総合体育館
しかし第2セットは5タイからサービスエースを取られ、一気に5−9とされてしまった。鎌田の強打などで15−16と迫るが、ピンサ佐藤ダブリでチャンス生かせず18−21でフルセットへ。
第3セット、5−6から鎌田の強打や熊谷の連続サービスエースで10−6と優位に立ち、菊地にも連続サービスエースが出て16−10。集中力を切らさず勝ちにつなげた。

第3セットで負傷交替するシーンがあったのだが、ここから動きがよくなったことは確か。 皆が“頑張らなきゃ”と団結したのだろうが、逆にそんな外的要因がないとスイッチが入らないのか…ということにもなる。
でもそのおかげで、いつもはピンサ交替対象の菊地がそのままサーブを打ち、まさかの連続サービスエースを奪うのだから、やはり試合は何が起きるか分からない。

決勝トーナメント1回戦はNTN岡山との対戦。その第1セット、いきなり0−5から1−8。意気消沈のまま6−16となったが、針生のサーブを軸に相手ミスも重なって6点連取。しかし4連続失点で万事休す、13点でセットを失う。
第2セットは白熱の攻防を見せる。離しても追いつかれる嫌な展開から、NTNの時間差と連続サービスエースで13−16と逆転を許す。
ここが踏ん張りどころだったが、追いつくに至らず18−21、ストレート負けを喫してしまった。

結果論ではあるが、出だしの熊谷のAトスミスが全体の流れを決めるくらいの拙攻になってしまったかもしれない。なぜ熊谷がトスを?…それはメンバー負傷の影響で1番サーバーを石川に替えたから。ここはスタッフもセッターを1番サーバーにしたことを悔いてた。
熊谷も意表を突いたつもりだったが…出鼻をくじかれたことでチームの雰囲気が怪しくなり、そして熊谷自ら連続カットミスへとつながっていく負の連鎖…セオリーとか定石っていうのは確定されたものではないにしても、長年の経過で導かれた最善の手なのだろうから、それを無視しすぎては勝利は遠いか。

他にも全国大会ならではのミスが発生、もうとにかくサーブカットが乱れまくりで、足も動かないなんて初出場のチームか?と思うくらい。そして不安視されていた石川とのコンビ。何しろアタッカーの入るタイミングが練習や強化ゲームとは違うし、もちろんラリー中でもばらつき、特に劣勢の時は同じ高さに上げたつもりでも、アタッカーが打ち切れていなかった。
打つほうが悪いのか上げ方がまずいのか…「どうしたらいいんだ…」と心の中で叫んでいたことだろう。それでも、打つぞと見せかけてのワンハンドトスは素晴らしく、ギャラリーからも「すごいなー」と声が上がっていた。

RI東北として初戦敗退は2003年の全日本総合(2回戦)以来となる。これをどう受け止めるか。くよくよするのはもっての外だが、今回はしょうがなかった…だけでは次も同じ結果が待ち受けているだろう。
記録はいつか途切れるし、またここからしっかり出直せばいい。築いてきた部分は確実に積み上げていくしかない。


・忘れかけていた味わい

8月のリコーグループカップ(連覇)を経て、9月の総合県予選は実業団県予選と同様、Nittoとの再戦。全国大会での反省点を生かし、声も出ていて動きも良かった…第1セット中盤までは。ところが超長いラリーをこちらのミスで落として11−3とされてから徐々に動きが悪くなり、セット先取も第2セットは全国大会同様のリズムとなり失ってしまった。
第3セット18−17の厳しい状況ながら、相手オーバーネット、針生のサーブで崩しNitto中央から強打はアウト、針生サービスエースで何とか振り切った。
春とは違う圧倒的なところを見せるはずが、まさかのフルセットとは…流れを逃すミスを犯したり、リスクを伴う速攻の使い所が難しい。

10月初週の徳洲会カップは6チーム中の最下位。ほぼ惨敗という結果に終わってしまった。これに危機感を発したか、3週目のZAOカップではサンデンHDにフルセット勝ち、JT東京に2セットともデュースで敗れたが、日本無線にはフルセット勝ち、横河電機にもフルセット勝ち。
大会は全10試合のうち7試合がフルセット、他の3試合もデュースを含む大熱戦という状況の中、優勝を果たした。
こういう準公式レベルを含めて、実力上位チームが集まる大会での優勝となるのは、4年前の赤城カップ以来だろうか…ようやくベストメンバーを組めたというのもあるが、皆で何とかこの苦境を打開しようという意識が勝利に結びついた。ホームでの声援が力になったのは言うまでもない。
公式戦ではないけど久しぶりの“優勝”…という響きはいいものだ。これくらいのパフォーマンスがどこででも見せられれば…

そして5週目は昨年から始まったV9チャンプリーグの入替戦出場チーム決定戦が三重県津市で行われた。昨年は3チーム出場のリーグ3位だったが、今年は5チーム出場のリンク戦となった。リンク戦の場合、全勝でも2位になる可能性があるため、無駄なミスが命取りとなる。
RI東北は最近敗退を喫したパナソニックES津(しかも地元)、NTN岡山との組み合わせとなり、厳しい対戦になったが、見事2試合ともストレート勝ち。他が1敗以上しているので、文句なしの1位通過を果たした。
もし2試合目で負けていたら、全チームが1勝1敗となり、セット率や得点率が絡むところだった。実際、パナソニックES津が造幣局に勝ったものの、ともに1勝1敗で得点率で上回った造幣局が2位となった。

実力もモチベーションも上昇、この勢いを持続しながら全国大会へ乗り込む。