かなり 実録 バレー部物語

・実力と結果の狭間で

全日本総合は大阪市で開催された。来年度から男女同時開催など9人制発展への一環として、実力が近接したチーム同士の対戦を回避するため、今まで4つだったシードが8シードまで拡大される。順当なら少なくとも3回戦までにシードチームと対戦することになるので、実力を伴わないと上位には入れないだろう。
RI東北としては現役復帰組が調子を上げてきており、上位との対戦でも面白い展開に持っていけるかもしれない。

予選Gは鹿児島代表のFEST 2ndというクラブチームとの対戦となり、第1セットは大苦戦。サーブカットが乱れ、アタックミスを連発、まさかの12−19と追い詰められた。
しかしここから佐藤強打、2度のラリーを永井のA、佐藤強打で奪うと、FESTセッターのバックトスミス、佐々木時間差17−19、急接近を見せる。そして佐々木時間差、FESTレフト強打が2本ともアウトとなり20タイ、ついに7点差を追いついた。
相手先行を凌ぐと、永井のAとダイレクトで23−22と逆転、最後はFESTのつなぎがオーバータイムス、24−22で先取。

第2セットは相手の気落ちもあってか、ダブルスコアのストレート勝ちを収めた。この試合は第4試合という遅い時間帯になったため、コート取りをせずに遅めの入館。普段と違うルーティーンワークであり、いつも以上に出だしに気を付けていたはずで、早めにリズムを掴みたかったのだが…
もう初戦出足の悪さは慢性疾患というか悪癖と言ってもいい。“気をつけていきましょう”くらいの注意喚起レベルでは、この先も同じような現象が起きるので厄介だ。
「フルセットは覚悟」と門脇、それでも勝てたのは実力が上がってきた証拠。後半はミスもなく相手にプレッシャーを掛け続けた。

他の予選では第2シードのおかやまが敗れ、敗者復活戦でリコーが第6シード権を失った群雄会にフルセット勝ちという金星を上げた。これでシード勢2枠が空くことになったが、抽選でRI東北はその空白のゾーンに滑り込み、3回戦までシードとは対戦しないというクジ運としては絶好の位置をゲットした。
ここ最近はこういう好位置でも勝ち上がれなかったのだが、今回はどうか。

決勝T1回戦は気高クラブ(鳥取)と対戦。やはりどうもその日の初戦は不調なのか、スムーズに事が運ばない。第1セットは18−12としながら21−17まで迫られてしまった。セカンドサーブのカットミスが多くて流れに乗り切れなかったのだが、まずはストレート勝ち。
2回戦は松山クラブ(愛媛)と対戦、この試合では全選手を使い切って快勝。今までは替えようにも替えるメンバーがいなかった。サブメンバーがいるというだけでもかなり違う。「ようやく普通のチームになったかなと…」

中部徳洲会病院戦、佐々木の強打。=大阪市中央体育館
3回戦はMessenger(千葉)との対戦。第1セットを16点に抑えて先取すると、第2セットは安重が体調不良となり遠藤がスタメン、20−14とマッチポイントにしながら、ここから猛追を受ける。
佐々木強打がブロックされ、佐々木時間差もブロック、佐々木見逃しでサービスエース、佐藤強打もブロックされ20−19。まだ1回タイムアウトが残っており、何とか立て直して相手強打をブロック、辛くも逃げ切った。
サービスエースを決められブロックされまくると、精神的にガックリくるところだが、いや、よく凌いだ。まあでも3回戦まで勝ち抜き久しぶりの準々決勝進出、試合毎に力強さは増してきている。2年前の全日本実業団でベスト8に入ったが、何か4〜5年くらいの遠い昔に感じる。そう思うほど、ここ1、2年は厳しかった。

もちろん勝負はここで終わったわけではない。翌日の準々決勝は第1シードの中部徳洲会病院との対戦。澤が「何か変なスイッチ入ってくんねーかなー」と言っていたが、それくらいじゃないと勝てないような実力差がまだあるかもしれない。離されたら追い付くことは難しい。この試合はどこまで持ちこたえられるか。
その第1セット、徳洲会のサーブと強打で、あっという間に2−8。強打がブロックにワンタッチされ決まらず、今まで通用していたものが通用しなくなる…蛇に睨まれた蛙というか、金縛りにあうというか、何もできないまま終わってしまい、11点しか取れなかった。

そして第2セットも3−8から8−14、もはやこれまでと思われた。しかし何がきっかけでこうなるのか分からない。石川の軽打と強打を皮切りに、安重セカンドでサービスエースを奪うと石川強打で12−14。
安重サービスエース、ラリーから佐々木軽打で14タイ、徳洲会時間差、佐々木強打ブロックされ、熊谷弾く徳洲会サービスエース14−17とされながら、針生強打、工藤に替えてピンサ佐藤でサービスエース、梅津のサービスエースで19タイと食らいつく。
デュースに入って徳洲会ライト強打、永井Aで21タイ、佐藤ダブリ、石川軽打22タイ、ラリーから徳洲会ライト強打、熊谷の強打レシーブが相手エンドライン際にダイレクトで落ち23タイ。
石川セカンドで崩したが永井ダイレクトアウト、佐々木時間差24タイ、徳洲会時間差、徳洲会ライトフェイント24−26。

……相手の油断も多少あっただろうが、まさか追いついてデュースにもつれ込むとは…上位同士の対戦では奇跡的なプレーが流れを呼び込み、勝利につながることがある。万事休すの場面で熊谷のレシーブがそのまま相手コートに落ちた時は、まさにそんな予感だったが…相手が一枚上手だった。
「センターラインが効いた」と門脇、永井の速攻、佐々木の時間差は大きな武器となった。今までは苦しい場面で速攻がなかなか使えなかったが、ここは工藤のトスワークによるものも大きいだろう。
ただ、デュースになってからもダブリあり、ダイレクトミスありでは勝ちに繋がらない。その原因をしっかり認識して、次は完璧に仕留めなければならない。
「やはり2セット目の展開を最初からできるということなんだろうけども、今まで取り組んできたことは負けはしたけど間違っていない」。3週間後の全国大会で集大成を見せられるか。


・ここぞのせめぎ合い

櫻田記念は函館市で開催(今年から韓国チームは諸事情で不参加となる)された。今回は陸路で現地入り、2016年に北海道新幹線が新函館北斗駅まで開業し、初乗車の部員も多いことだろう。宮城から見ればメリットは大きいと思われる。
数日前に大雪があり、函館市内でもこの時期にこれほどの大雪は滅多にないらしい。12月ということで、函館界隈はきらびやかなクリスマス色に覆われていた。

まずは予選リーグ。V9チャンプ勢に全日本実業団で敗れたチームが相手なので、強い気持ちで臨む必要がある。その第1戦は横河電機と。これを落とせば決勝トーナメント進出に早くも赤信号が灯る、初戦から重要な一戦だ。
心配なその日の初試合の第1セット、前半は何とか食いついていく。だがファーストサーブが入らず徐々に離され、後半のサーブカットミスが響いて落としてしまう。
第2セット、2−5から7タイと持ち直し、佐々木の時間差が連続で決まって12−10、お見合いや横河レフトの強打で12−14、佐藤強打、永井Aで14タイ、激しい攻防が繰り広げられる。
佐々木時間差20−18で先にRI東北がセットポイント、永井A拾われ横河レフト強打連続20タイ、石川強打を横河ブロック、永井Aフェイント21タイ、工藤に替えてピンサ佐藤も横河レフト強打、永井Aで22タイ、横河フォローミス、横河中央から強打アウト、24−22。

何とか拾った第2セットだったが、粘りはここまで。第2セット同様に前半走られたが、もう追いつく気力はなく、11−17から4失点でジ・エンド、フルセット負けを喫した。
2セット目は見事な粘りだった。こういう抜きつ抜かれつの展開を制することができる実力はあるのだが…負けは負け。またしても圧倒的にサーブカットのデキが良くなかった。永井・佐々木のセンターラインが機能しても、上がらなければ使えない。サーブも何故かセカンドの方が崩していたが、それじゃ相手に脅威は与えられない。

第2戦はJFE西日本との試合。この組で実力最上位の相手に勝たなければいけない状況に追い込まれたが、予想に反して?奮闘。第1セット前半は逃げるRI東北に追うJFE西日本、佐藤の強打で13−10としたが、JFEはラリーで中央から強打を決め、16−17と逆転。
それでも佐々木時間差、JFEライト強打をブロック、JFE中央から強打がアウトで20−18、最後は佐々木の時間差がブロックアウトを誘い21−19で先取した。

第2セット、8−10から12−17とされても怯まず、ラリーから石川強打、石川に替えてピンチブロッカー菊地はJFEライト強打をブロック、JFEタッチネットで15−17、安重に替えてピンサ佐藤で崩し、佐藤ダイレクト17−18、1点差まで来た。
しかし、針生2段トスドリブル17−20、ブロック吸い込みを鎌田フォローもホールディング18−21、重要な場面でのミスが響き、セットタイに持ち込まれる。

第3セットも佐々木の強打とJFEのAをブロックして10−13と粘っていたが、JFEの硬軟織り交ぜた攻撃に翻弄され始め、JFEサービスエースで10−16、自軍のミスも連発して11−21、あっけない幕切れとなった。
1試合目がフルセット負けだったので、この試合でストレート勝ちなら決勝トーナメント進出の望みも大きくなる状況で第1セットを先取、更に第2セットも互角に展開して、もしやと思わせたが…あと少しの粘り及ばず。
1、2セットは相手サーブがあまり入らなかったが、第3セットで本来の威力が発揮されると対応は難しい。しかし強豪相手に競ったことは自信にしていいだろう。

第3戦はパナソニックエコソリューションズ津と実業団以来の再戦。ここまで2試合フルセットの激闘はベテラン勢にとってかなりの負担であり、既に順位トーナメントへ回ることが決定しているため、その辺も考慮して控え中心のメンバー構成で臨むことに。レフトは石川が務めることになったが…何とこれもフルセット。
第1セットは10−6から10−12にされたが、17−20から佐々木強打、鎌田強打、佐々木強打、石川サービスエース21−20、一気に徳俵から逆転。津レフト強打、佐々木強打、菊地Cフェイントで23−21、奪い取る。
逆に第2セットは19−18とリードしながら津の時間差とレフト強打で逆転され、津のダブリから津レフト強打、石川リバウンドをブロックされて20−22、勝負は第3セットへ。
5−4から5−9にされ、11−10と盛り返す。目まぐるしい展開が中盤からシーソーに変わり、がっぷり四つとなる。津のネットプレーミスの気落ちを見逃さず、梅津サービスエースで18−15、津時間差、鎌田強打、ラリーから津Aがアウト、ラリーから津レフト強打がマーカー外、21−16。

第3セットでポイントゲッターの佐々木が交替、入った佐藤がレフト、レフトの石川がHCに回った。佐々木は足がつり気味のために大事をとったので明日は大丈夫だろう。
石川も今日はライト→レフト→ハーフセンと八面六臂の活躍。「(パナ津戦は)レフトって直前まで聞かされていなかった」と苦笑いしていたが、それでもやりこなすところが凄い。
トーナメントの抽選会はかなりお待たせすることになり、門脇は関係者からは「あんたら(長い時間試合して)バレー好きだねぇ」と言われてしまったが、バレー部として恐らく全国で3試合連続フルセットは初めてだと思われる。
しかも雪の影響もあるのか観光客の使用で目一杯なのか、ホテルまでタクシーで帰ろうとしたが全く予約が取れず、1時間後と言われてしまった。幸いに歩いて帰れない距離ではなかったので、徒歩で帰る(20分強)ことになった。
今はスマホにGPSもあるし、迷うことはないが…足元に気を付けても途中滑ったり捻挫しそうになった。果たして今日のダメージがどこまで回復するか。

◇  ◇  ◇

リコーが大会初参加を果たしていたが、お互いリーグ3位ということもあり、順位トーナメント参戦となってしまった。3位同士は初戦での対戦が回避されるが、突破すれば2回戦での対決となる。
初戦は北見市役所と対戦、2セットとも7点で一蹴した。1セットを簡単に取ると、もう1セットは接戦になることが多いのだが、この試合は完全に流れを掌握した。
残念ながらリコーは造幣局に敗れグループ企業対決にはならず。その造幣局はV9チャンプリーグ入替戦出場チーム決定戦でも対戦した相手。決定戦ではフルセットにもつれ込んだが、他の試合同様に苦しい場面で如何に耐えるかが勝負どころ。
第1セットはスタートダッシュの勢いをそのまま維持して4−0から13−8、最後まで流れを渡さなかった。そして第2セット、今度は追う展開に。前半で逆転に成功するも、3失点、4失点であっという間に11−14。
工藤に替えてピンサ佐藤で崩し造幣局セッタータッチネット、後方から梅津の思いがけない?軽打などが決まってすかさず追いつき、佐々木の強打とサーブで逆転、堂々とした戦いぶりを見せた。

昨日とは打って変わってストレートで勝ち進み、反対コートはフルセットが続いたため、1試合分ほど休める時間があったのはよかったが、最終戦は昨日から6試合目となり、回復具合はいかほどか。
そして最終戦はサンデンHDとの対決…この順位トーナメントになぜサンデンが…と思いたくなるが、ここまできたら勝って終わりたいのは皆同じ気持ち。気力を振り絞れ!
第1セット、東北はセンターラインを多用するもののサンデンの攻撃を食い止められず、ミスもあり3−7とリードを許す。
熊谷のサービスエースなど5連続得点で12−10とすれば、サンデンも負けじと4連続得点で15−16とし、サンデンのミスが続いて18−16と有利になるも、サンデン時間差、工藤トスドリブルで18タイ。粘ったが佐藤ネットプレーミス、サンデン中央から強打で19−21。

サンデンは勝ち上がる度に充実したプレーを披露するようになってきたのに対し、こちらは逆にプレーにズレが生じるようになり、セットを取り切れず。体力の無さは皆自覚していたと思うが、存分なプレーを発揮できなくなっていた。
第2セットはわずか11点。奇しくも横河電機やJFE西日本に負けたときの点数と同じとは…
技術的に引き離される要因は色々あるが、やはり大きいのはサーブカットミス、今回はこれに尽きると言ってもいいだろう。復帰組の懸命な再起に頭が下がるが、チーム完成度としてはまだまだ。しかし限界を超えてのプレーは他の選手への刺激になったことは間違いない。

セットを取り切れない、あと一歩及ばない点は今後の課題だが、春先に比べれば遥かに充実した内容だったはず。選手たちも十分に戦える自信と何が足りないのかの自覚もしただろうし、勝利へ向かっての意欲が増したと感じられる。
「周りからもいいチームになってきたと言われる状態には持ってきたので、また頑張っていきましょう」。今年度は現役復帰という、ある意味劇薬が投与された感じだが、見事な処方で確かに回復に向かっている。これからどうなっていくか不安であり楽しみであるが、少なくとも来年度は今年度に実力を上乗せして、更なる栄光を勝ち取らなければならない。
望みは高く!