かなり 実録 バレー部物語

・継続は力なり

11月第1週、5チームが参加してZAOカップが開催された。総当りで3チームが3勝1敗で並んだが、セット率の差でRI東北の3連覇となった。
勢いのあるときは相手を寄せ付けない強さを発揮したものの、最終戦のサンデンHD戦は全国大会で見せたような崩れで、自ら勝利を逃した展開となりフルセット負けを喫してしまった。
ただ昨年もこれをきっかけの一つとして強化を進め、全国8強まで達したので、調子を上げていければ…

((( Idle Talk )))
セット率による順位が確定したことについて、サンデンスタッフと以前に似たような状況があったことを話したが、それは2014年の櫻田記念での出来事。
予選リーグでRI東北はサンデンに完敗したものの、富士通にストレート勝ちして混沌に。それまで予選1位を走っていたサンデンが北陸電力に1セット取られたがために、予選3位に落ちて決勝トーナメントに上がれないという目にあった。
今回も印刷局小田原に1セット取られていたため、たとえRI東北にストレート勝ちしても1位にはなれない状況だった。「そう、だからリーグ戦は怖いって思った」と澤実行委員長。ここ最近は余計なセットや点数を取られるのはRI東北の方なので、本番でどうなるか。

◇  ◇  ◇

11月29日〜12月2日に全日本総合が大阪市で開催された。大会グレードアップの一環として、本年度より男女共催となる。会場もほぼ丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)での開催、予選グループ戦女子が大阪府立体育会館、男子決勝トーナメント1〜3回戦の一部が港スポーツセンター。ちなみに府立体育館もネーミングライツで愛称がエディオンアリーナ大阪となっている。

この男女共催の感覚、2001年まで開催された都市対抗に似ている。都市対抗は全日本総合に統合という名目での廃止だったので、時を経て大阪・男女共催となるのも、何かつながりを感じる。
都市対抗は府立体育館一極集中開催でとても華やかであったが、弊害としてその一番は試合日程。普通の回し方ではこなしきれないので、開会式を16時に行い、17時半から1回戦2試合分を行うというハードスケジュールだった。(都市対抗はトーナメント戦のみ)
翌日のシードチームの初戦が第9試合。もう日が暮れてからの初戦なんて、調整が大変。今大会も3回戦が第9試合まであるので、勝ち残るチームにとっては厳しい日程になるだろう。

なお、開会式では男女合わせて110チームが集合し、今年から9人制応援団長として、6人制Vリーグの堺ブレイザーズ応援団長でもある「なおき」さんが就任し、盛大なエールをいただいた。今後、9人制が更に活気付くことを願う。

さて予選G。今大会は朝のコート取りができないため、エントランス前は和やか。怪我や混乱を防ぐという意味では良い対応だろう。でもコート取る取らないに関わらず、早く着いてしまった。「もう染み付いた習性ですね(笑)」と工藤。
THK甲府との対戦は無難にストレート勝ち。実は大会前の練習試合で永井が故障、佐藤をセンターに戻す布陣。永井はマネージャーとして参加したが、空いたFRには今野が入った。
「(昨年入部の)清藤もうまくなっているし、今野…も成長してるね」と江口、マスターズプレーヤーの域に達している今野を讃えていた。

決勝Tの1回戦はパナソニックエコソリューションズ新潟との対戦。第2セット前半にサーブ順で揉める展開もあったがストレート勝ち。
「いくらこちらに正当性があったとしても、記録は間違いないと言われたら引き下がるしかない。これが終盤で1点を争う大事な局面だったらどうなっていたことか…」と江口は険しい表情。結局、一人飛ばしたとしてこちらが再度同じ選手がサーブを打ったため、整合性が取れなくなり今度は新潟がサーブ順の間違いを指摘されてしまった。ミスは明白ということ。
他の試合でも中断しており、可哀想になるくらい副審が何度も主審と記録を往復していたのが印象的だった。5分くらい止まっていたであろうか、後の審判ミーティングでは厳しく指摘されることだろう。

横河電機戦、勝利に向けて。=丸善インテックアリーナ大阪
2回戦は第5シードの横河電機との対戦。第1セット前半、2回の3連続得点で10−6とリードするが、横河も4連続得点で追いつく。
石川強打、横河レフト強打、渡辺強打、横河レフト強打、横河ライト強打をブロック、横河はC、ライト強打、清藤2段トスドリブルで13−15と逆転。
佐々木強打、横河FRリバウンドをブロック吸い込み、佐々木時間差、横河中央から強打でシーソーとなったが、ここから横河レフト強打アウト、佐々木時間差、梅津のサーブで崩し横河レフト強打をブロック18−17、横河タイムアウトも流れ変わらず横河つなぎミス、佐藤Aからの横河返球はマーカー外、石川強打で6連続得点の21−17。

第2セット中盤までは互角の戦い、横河はサービスエースで抜けると10−13から渡辺強打アウト、横河レフト強打、横河レフト強打、渡辺強打アウトで10−17と離されてしまう。最早この差は埋められず、勝負は第3セットへ。

横河中央からプッシュ、佐々木時間差、渡辺サービスエース、横河強打を今野ブロック3−1、これで勢いに乗った。これ以降、一度も相手に追いつかれず、石川軽打を横河ブロックオーバーネット、横河ライト強打アウト、清藤サービスエース11−7、佐藤A、横河ライト強打はタッチネット、安重サービスエースで16−10と寄せ付けない。
終盤、横河に3点連取されるが、まだタイムアウトを残す余裕があり、気を取り直して石川フェイント21−16。

シードレベルのチームに勝ったのは、2014年櫻田記念の富士通戦以来だろう。横河戦第2セットは…結果からすればレフト渡辺の独り相撲。
そこを重々承知したかのように、3セット目序盤で汚名返上のサービスエース、流れを引き戻し、続く今野のブロックが効いた。ここから横河が流れを変えるべく両サイドに回し、いつものように止められなくなりそうだったが、限界近いプレーにはミスが伴うもの。先に相手がスパイクアウト、そこに清藤が追撃の芽を摘むサービスエースと理想的な展開となった。
昨年復帰の工藤も、いなければここまで安定したコンビはできなかっただろうし、永井のピンチヒッター的な今野もフル出場して貢献してくれているし、渡辺もプレッシャーの大きいレフトで頑張ってくれている。
少しベテラン勢に比重がかかっているが、経験をうまく生かしている。持ち味を出し切っているからこその勝利だ。

3回戦の川崎重工戦も快勝し、2年連続準々決勝へ駒を進めた。終了が19時17分…実は棄権したチームがいて1試合分早まってこの時間。中部徳洲会は終了が21時だったらしい。
「結構、からだに来てると思うので、明日に残さないようにできるだけのことはしっかりやらなければ」と江口、更なる前進なるか。

シードチームはかなり苦戦したように見受けられる。初戦で見ても住友電工はJR九州にフルセット勝ち、JFE西日本は三菱電機紅菱会にあわやのところまで追い詰められたし、サンデンHDと西京倶楽部は敗退、JT東京、Nittoはフルセット勝ちと、余裕の出だしは富士通、住電伊丹、中部徳洲会くらい。
試合開始が遅いことが関係しているのかもしれないが、シードとして仕方のないことなのか…

◇  ◇  ◇

住友電工伊丹との準々決勝、いきなりの1−4で劣勢に立たされる。しかし渡辺強打、佐藤サービスエースで5−6にすると、ここからシーソーで何とか持ちこたえる。
伊丹が2点取れば東北も2点奪う中盤の攻防から、佐々木時間差、ラリーから伊丹ライト強打アウトで18−17と逆転。セットポイントまでいったが伊丹も粘りデュースへ。
伊丹レフト強打で逆にセットポイントを取られると、再度レフトに強打決められ21−23。

第2セット序盤は乱打戦。石川強打、伊丹中央からフェイントをブロック、渡辺強打3−1とすれば、伊丹ライト強打、佐藤つなぎミス、清藤弾く伊丹サービスエース、伊丹ライト強打で5−7。
今野ブロックで15タイ、佐々木強打、今野強打、佐藤Aで19−17としながら、ブロックタッチネット、佐藤B、伊丹ライト強打、安重2段トスドリブルで20タイにされてしまう。

他のコートは既に終了しており、俄然注目される中、渡辺強打、今野ブロックからのネットプレーはドリブル判定、横河フォローミス、安重後方から打って返したがネット超えず22タイ。ラリーから横河時間差、ラリーは横河つなぎミス23タイ。
横河A、佐々木時間差24タイ、東北ブロックからネットプレーフォローがまたもドリブル、渡辺強打25タイ、横河レフト強打、石川強打26タイ。
横河A、佐藤B拾われ横河レフト強打26−28、両セットとも逆転してあと一歩というところだったが、勝利を手にすることはできなかった。

実業団での悔しさを少しは晴らせたか、全力を尽くしたと思うので、負けた中にも充実感があっただろうか。決定力の差と言ってしまえばそれまでだが、ウチはつないでつないで1点を取りに行くスタイルであり、そこの精度の甘さが出てしまった。
相手はいつもよりサーブの入りが悪かったようだが、2セットともデュースなんてあまりないことだし、自信にしていい。あとはそこを勝ち切れるか…だ。


・激闘の果てに

12月22日、23日、櫻田記念が和歌山市で開催された。予選リーグでJFE西日本、JT東京、造幣局と同じブロック、V9チャンプリーグ所属チームと全日本実業団で敗れた相手。先の全日本総合からわずか3週間ということで、その奮戦からまだ癒えてない状態でどこまで全力を出し切れるか。
初戦はJFE西日本、試合をアップ代わりに使うなよ…ってため息が出るくらい動きが悪い。第1セット出だしでせっかく連続サービスエースが出たのに3連続タッチネットとは…
わずか13点で落とすと、第2セットも調子が上がらずサーブカットミスで時間差がほとんど使えず、2段トスさえつなげない状態でまたも13点でストレート負け。
救いがあるとすれば、予選リーグは成績上位からの順に対戦していくことか。とにかく次で負ければほぼ決勝トーナメントへの道は閉ざされる。ほぼと言うのは第2試合で造幣局がJT東京にストレート勝ちしたので、造幣局に勝てば1勝でも勝ち上がる可能性が出たため。
でも点数勝負になると分が悪いので、やっぱり2勝しないと難しい。

JT東京戦、今野のブロック。=武道・体育センター和歌山ビッグウエーブ
しっかり切り替えて臨めるか、2戦目はJT東京と。JTライト強打をブロック、JTのAフェイントを今野ブロック、佐々木サービスエース、JTライト強打アウト4−0で波に乗ると、5〜6点、8〜9点、10〜11点、12〜13点と連続で奪い、相手ミスも続いて16−7。
最後はJT時間差を今野ブロック21−12。
後がないJTは一気の攻めを見せ、2−10から4−15、こちらのスキを逃さない。それでも7点連取で12−16と粘りを見せるが、前半の失点が大きすぎ、シーソーで逃げ切られ15−21。

勝負の第3セット、JTの4連続得点で4−5と逆転されるが、石川強打、渡辺強打、JTのFR強打ネット、石川強打で10−8と持ち直し、3失点にもめげず佐々木時間差、今野に替えてピンサ鎌田はJT2段トスドリブル、レシーブから渡辺ツーアタック、ラリーから渡辺強打で4点取り返し14−11。
この差を必死に守り抜き、佐々木時間差21−17でフルセット勝ち。サーブであまり崩されなかったのが勝因か。
最終戦は勝った方が決勝トーナメント進出という分かりやすい構図となった。「去年の(決勝Tに行けなかった)借りを返したい。メインの体育館でやらないと」と鎌田、「ここまで来たら絶対負けたくない」と渡辺、その思い実るか。

造幣局との一戦、第1セットで先制パンチ、佐々木のサーブで崩し渡辺強打、佐藤A、佐々木サービスエース、佐々木時間差、造幣局オーバータイムスで6−0。
こうなれば余裕を持って展開でき、相手を12点に押さえて先取。しかしそう簡単に2セット目も進まないのが今のRI東北。6−8と劣勢になりかけで今野が足を負傷してブロックの要を失ってしまう。
渡辺フェイント、渡辺サービスエース、造幣局中央から強打をブロック、佐藤Aで13−10としながら、造幣局の連続強打と東北の連続ミスで13−14と流れは全く読めない。
しかし造幣局がドリブルすると、わずかな気落ちを逃さず鎌田のサーブがうなり、連続サービスエースを含めて4点連取! それでも相手は20−17から2点を奪い、最後まで諦めない。
造幣局はファーストサーブをミス、セカンドもダブルファースト気味で勝負をかけるが、わずかにラインクロス、RI東北のストレート勝ちとなった。

まさかのラインクロスという結末。線審の反応はなかったが、主審がしっかり見てくれていた。だが流石は造幣局、勝負師だねぇ。2点失ったのはカットミスだったし、普通のセカンドでAカット(セッターがほぼ動かないほどのサーブカットのこと)されたら、勝利の目はないと踏んでの行動。
ただ、ほんの少しだけ気負った分、歩幅が大きかった。東北の堅い守りが与えたプレッシャーとも言える。

今野は捻挫、足の甲から着地した?らしい。ブロックのキーマンがいなくなってどうなるかと思ったが、何とか踏ん張った。
しかし試合終了後、問題ないような物言い。「そんな痛くないし、腫れてない。明日は大丈夫じゃないですか?」
ホント? さっきまで一人で歩けず、バケツに足突っ込んでいたのに? このあっけなさに渡辺も驚き、「せっかく肩を貸したのに、返してくれ!(笑)」と叫んでいた。いったいどんな足の構造をしているんだ…

これで2勝1敗、リーグ2位で4年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした。実業団では芳しい成績ではなかったため、今大会に選抜されなくても仕方がない状況だったが、どうにか推薦に報いる結果が出せたと言える。
宮城からはNittoが初出場しているが、「レベルが違う」と圧倒されていた。それでもリーグで1勝しているので、これをまた次につなげていくことだろう。
で、決勝T組み合わせ抽選は…………やはり、というか、またか、というか…横河電機に決まった。相手も何でだよと思ったことだろう。でも何度も当たるなんて上位チーム同士なら当たり前のこと。

◇  ◇  ◇

翌日、朝は全日本総合と違いコート割り当てがないので、いつものような賑わい。この喧騒感も時にはいい。
横河電機とは全日本総合からの再戦。今度は相手も気合の入れようが違う。もう一度勝って返り討ちにできるか。今野は昨日の発言通りにピンピンして先発だ。

第1セット1−4から佐々木時間差、梅津サービスエース、渡辺強打、梅津サービスエース、横河ライト強打アウト6−4で逆転。シーソーから渡辺強打、石川サービスエース11−7とするが、ここから膠着状態となる。
横河は徐々に調子を取り戻し、強打とサービスエースが決まり、14−15と逆転。工藤に替えてピンサ佐藤で反撃を狙うがダブリ、渡辺強打、横河FR軽打、渡辺リバウンド拾えず、佐藤Aを横河ブロックで16−19と離されてしまう。最後は佐々木2段トスドリブル、17−21。

反撃したい第2セット、3タイから渡辺強打を横河ブロックオーバーネット、石川連続サービスエース、横河時間差アウト、石川のサーブで崩し佐藤ダイレクトで抜け出す。
ところが一転、横河ライト強打、渡辺強打ネット、佐々木弾く横河サービスエース、横河時間差で8−7、その差は1点に。中盤、横河は4点連取で11−13とするが、石川強打、横河中央から返球がネット15−16、佐々木時間差、佐藤セカンドでサービスエース18タイと追いついた。
横河のミスで先にセットポイントはRI東北だったが、横河ライト強打20タイ。渡辺強打、熊谷に替えてピンサ安重は横河レフト強打21タイ、東北フォローミス、熊谷・梅津間へ横河サービスエース21−23。

惜しかったと言うより、もったいなかった。2セットとも上々の滑り出しだったが、追い上げられ、膠着し、先にミスして逆転されるというパターン。
2セット目終盤のフォローミスは全員でお見合いというか、足が一歩出ずにコートにポトリと落ちてしまった。
“実力はあってもベスト4に行けないチームとの差”とは、決定力もあるが、こういうミスの仕方も大きい。
男子は中部徳洲会が優勝。女子はパナソニックESブルーベルズが優勝したが、最後は35−33という壮絶な試合。デュースになってから、お互いミスではなく攻め抜いて点数を取るところが凄い。

◇  ◇  ◇

全日本実業団での屈辱の敗戦から立ち直り、全日本総合でベスト8、そしてその実力の真価が問われる本大会で、4年ぶりに決勝トーナメント進出を果たすことができた。
トーナメントでは全日本総合で勝利した横河電機に雪辱されてしまったが、最後まで諦めることなく奮戦、リーグ戦では実力上位のJT東京相手に攻め抜き、全日本実業団で敗れた造幣局には粘り勝ちと、全員一丸で勝利を手に入れた。
怪我人が出たり、ここぞの場面で点を取り切れず、勝利を逃すところは今後の課題だが、年間2回以上のベスト8入り(2013年度以来)することができ、上昇気流で更なる飛躍が期待できる。

「終わってみて、やはり日本一という目標に向かってやってきてよかったと思う。年齢を重ねてきてるけど、また来年、ステップアップしていきたいと思っている」と江口。上昇志向があれば年齢に関係なく成長できるということを示してくれた。
1点の重みを強く感じて来年へ、コート蹴立てて燃えていくぞ、RI東北!