かなり 実録 バレー部物語

・限界突破

11月28日から全日本総合が大阪市で開催された。全日本実業団でトップリーグ所属以外の最上位チームとなったことで、RI東北はシードになる。2年連続全日本実業団最上位が宮城のチームというのも不思議な感覚。
昨年のNittoと同様に第10シード、予選グループ戦あり、3回戦で第7シードと対戦…という認識だったが、台風の影響でトップリーグが中止となり、そこでのシードポイントが加算されないために、まさかのシード順逆転現象が起きた。
RI東北は代表者会議での抽選で第7シードとなり、予選グループ戦もなし。出だしの悪いチームにとって、予選なしがどう影響するか…少しでも不安を払拭するため、会場での事前練習では半コートずつ割り当てられたサンデンHDとミニゲームを行った。「意外とね、こういう合同練習とかするチームと当たったりして」なんて、マネージャーの鈴木がつぶやく…

((( Idle Talk )))
開会式では恒例の「なおき」さんによる9人制へのエール。と、なぜか壇上に今年入部した新人の本田もいる…列の先頭は主将の鎌田のはずだが、いつの間にか入れ替わっており、共にエールを送ってくれる選手を探していたところで目が合ったらしい。
これは恐らく鎌田の策略だろうが、だとしても99チームの中から選ばれたわけだから名誉なこと。そしてツッコまれながらも共に大声でエールを送った。各チームの方々、笑顔(爆笑?)で対応いただきありがとうございます!

決勝トーナメント抽選会、対戦相手は、まさかというかやっぱりというか、サンデンHDが1回戦の小山に入った。その対戦相手も日本製鉄であり、2年前の総合で横河電機を破ってベスト8入りした強豪。どちらが上がってきても楽な展開はないだろう。
「スタートについては全員が意識して欲しい。試合が始まってから全力というのではなく、いかに準備ができるか。あとは『我慢』。ブロックとか足を使って諦めずに行くとか、そこが試合の終盤に効いてくる。その我慢だけは負けないように」と江口。

その2回戦、日本製鉄をフルセットで下したサンデンHDが相手。ここ最近はカップ戦のような準公式で勝っているものの、公式戦では勝ててない。苦しい場面は必ずあるので、そこをどう凌ぐか。
第1セット、4タイから永井ダブリ、永井Bをサンデンブロック、佐々木軽打ネット、佐々木時間差、サンデンB、サンデンレフト強打で5−9と抜けられると、サンデンは中央から強打、佐藤弾くサービスエース、トスフェイントで7−13、更に引き離される。
永井B、サンデンライト強打をブロックして反撃するが、サンデンペースを崩せず13−21。

第2セットも3−5→6−9の劣勢だったが、サンデンのミスに乗じて10タイとすると、ピンサ鎌田から永井のAで13−12と逆転。離せそうで離せず今野C、渡辺軽打ブロック吸い込み18−16としても、サンデンは両サイドの強打で18タイと追いすがる。
しかしここでサンデンライト強打をブロック、永井サービスエース20−18、最後はサンデンのレフトがタッチネットで3点連取の21−18、フルセットへ。
第3セット、またも6−9とリードされ厳しい状況。だが渡辺強打、ピンサ鎌田からサンデンライト強打アウトになると流れが変わり始める。渡辺強打、サンデン時間差を連続ブロック、鎌田エンドライン際にサービスエースで6点連取。
このまま行くかと思われたが、サンデンは時間差、サービスエース、中央からプッシュで14−15と粘られる。両者詰めきれないところで佐藤フェイント、熊谷のサーブで崩し佐々木時間差、サンデンライト強打をブロック20−17、サンデン中央から強打連続、 永井ネットプレーミス20タイ。
プレッシャーがかかる中、佐々木時間差、サンデン中央から強打がアウトになり22−20、何とか逃げ切った。

何度も負けを覚悟したような展開。第1セットは完全に相手の流れ。ファーストサーブは入らないし、サーブカットも乱れてコンビが使い切れない。あれほどスタートが重要と江口が言っていた甲斐もなく、全く噛み合わないまま先取されてしまった。
第2セット、流れを変えるべくFRに今野選手を入れてブロック強化、バックは熊谷が入ってサーブカットの安定化を図ったが3−5とされ、ストレート負けの雰囲気が漂い始めた。
6−8から永井の2段トスが大きすぎてアウトになる寸前、隣からボールが入ってきてノーカウントになり、まだ運は味方していると思われたが、直後の相手セカンドサーブを梅津が弾いてしまい、ここまでか…と思ったところから反撃が開始されるのだから、何が起こるか分からない。
第3セットも他のチームからは「ここはもう6番(佐々木)しかねぇよな」という声が聞こえ、果たして佐々木の時間差で21点、第2第3セットとも最後は相手ミスという…

終始ほぼサンデンペースの中でも勝った。こういう試合って見たことがない。「まだ1試合しかしていないのに疲労度が半端ない」と苦笑の永井、そりゃあこういう試合では…
隣のコートは第1、第2、第3試合とフルセット、第4、第5も接戦。進行が遅れに遅れ、横河電機とJT東京の第7試合は港スポーツセンターから丸善インテックアリーナに移動して試合することに決定した。
こちらのコートも第3、第4、第5、第6試合がフルセットだったが、移動しても試合開始にそれほど差がないこと、いくら数分とはいえ外はもう暗く体も冷えてしまう、移動も意外と面倒なことから、移動反対の立場を事務局に伝え、そのまま移動せずに試合をすることになった。

パナソニック津戦、渡辺の強打。=大阪市立港スポーツセンター
3回戦はトップリーグ勢のパナソニック津(第10シード)と対戦。第1セット、津オーバータイムス、梅津サービスエース、佐々木時間差で4−2とリードするが、津は中央からフェイント、渡辺強打をブロック、ライト軽打で9−10と逆転する。
激しい攻防から永井の連続サービスエースで18−17としながら、津はFRとレフトの軽打で先にセットポイント。ここは佐々木時間差でデュースに持ち込む。
津レフトフェイント、津ダブリ、永井Aで22−21、津FR強打、佐藤の足元へ津サービスエース、渡辺強打は津タッチネット23タイ、鎌田に替えてFR今野も津ライト強打で鎌田を戻す。
佐々木時間差24タイ、津レフト強打、永井Bで25タイ、佐々木強打は津ブロックからネットプレーがドリブル判定、ラリーから石川がツーアタックと見せかけてのトスで佐藤のCが決まり、27−25。

第2セット、3点取られれば2点取り戻し、2点取られれば3点奪うような前半は少し荒れた展開を見せる。中盤も永井ダイレクト、鎌田フェイント、津レフト強打をブロックして12−10としたが、津ライト強打、カット乱れ津に連続でダイレクトを許し12−13とされてしまう。
ピンサ熊谷がエンドラインギリギリにサービスエースを決めてまた逆転、しかし17−15から津の時間差、渡辺強打タッチネット、工藤トスドリブル、津が中央から強打…ここで痛恨の4失点、17−19。
それでも今日は何かが違う。佐藤と鎌田の強打ですかさず19タイにすると、津ライト強打がアウト、佐々木時間差で4点取り返し21−19、またも接戦をモノにしてベスト8入りを決めた。

この試合もRI東北のリズムではなかった。それにしても第1セットの最後、石川がFR後方から打つと見せかけてのトスアップは見事。こちらも絶対打つと見間違えるくらいギリギリまで待った効果は抜群で、当然ノーマーク。そこから更に佐藤へCクイックっていうのも素晴らしい。
第2セットはお互い連続得点を奪い合う激しい展開で、全く優劣が分からない。両サイドは懸命ながらも少し決定力を欠いていた。「いやもう足がつってたんですけど、ピンサで交替していたのでもう交替できないし」と渡辺、終盤の状態はかなり厳しかったようだ。

こういうギリギリの戦いになれば相手も余裕がなくミスも出る。サンデンも津も普段なら決まりそうなスパイクが、最終盤でアウトになった。RI東北はしっかり『我慢』できているということだろう。
津にとって不運だったのが、トップリーグが中止になったこと。そこでの数試合は全て強豪との戦いであり、とてつもなく大きな糧になったはず。経験値が上がった津と対戦していたら、更なる苦戦を強いられていたかも。
この次の櫻田記念での組み合わせは決まっていて、またそこで対戦する予定だが、激戦になるのは間違いなさそうだ…

試合終了は20時過ぎ。隣のコートではウチの後に予定されていた日本無線vs明治大阪戦が前倒しで行われているが、これもフルセットになるので終了は21時頃か…これで翌朝の試合っていうのはキツイね。

◇  ◇  ◇

全日本実業団に続く準々決勝でのJFE西日本戦。前回は粘ったもののストレート負けを喫した。特に2セット目は18−15とリードしていながら、5連続失点で勝機を逸した。さあリベンジとなるか。
佐々木時間差、梅津のサーブで崩し鎌田ライトから強打、梅津サービスエース5−2で絶好の出だし。一度は逆転されるが、佐藤強打、JFEライト強打をブロック、JFEライト強打アウト、石川サービスエースで13−8、この流れを逃さず、鎌田強打、JFEコンビミス16−11、佐々木強打、JFE中央から強打アウト18−12、渡辺強打、永井Aで20−13。
しかし好事魔多しというか…ドリブルと強打アウトで弱気になったところを突かれ、JFEダイレクト、ラリーに持ち込んでもJFE中央から強打を決められ、清藤弾くサービスエースで何と20−19と1点差にされてしまう。
カット乱れて同点かと思われたが、ここは佐々木が決め切って21−19、冷や汗ながらのセット先取。

第2セットは梅津の連続サービスエースで行けるか?と思われたが、JFEは先のセット終盤で本来の状態を取り戻しており、4得点で3−6とし、更に4得点で4−10とされ、もう完全に相手ペースになってしまった。
こうなると立ち直った第2シード相手に為す術なしというか、9−12からJFEのライト強打、A、ライト強打、サービスエース…8点連取され、10−21の一方的な展開となってしまった。

第3セット、奮闘するが4失点で2−6とされると、なかなか挽回できない。JFE時間差、JFEレフト強打連続で7−13と差は開く。石川サービスエースや渡辺フェイントで打開を図るが、細かいミスや相手サーブの威力が増してきており、対処に苦慮。
佐藤強打、JFEのAを永井ブロック14−19とするのが精一杯、最後はJFEレフト強打が決まって15−21。

前回に比べれば1セット奪ったということで前進はしたか…第2セット以降はちょっとガス欠感があった。前日までRI東北の流れではなかったのに勝てたのは、リズムを分断するような凡ミスがなかったから。よく負けパターンとしてダブリ、2段トスドリブル、オーバーネットなどが挙げられるが、サンデン戦もパナソニック戦もミスはダブリくらいだった。
しかしJFE戦ではお見合いがあったり、2段トスドリブル、オーバーネット、負けにつながる要素が盛り込まれていた。自分の体が言うことを聞かない状況だったか…最後はもう『我慢』し切れなかったということだろう。

澤は「決まらなくても何とかしようとする(渡辺)稔に涙が出そうになった」と言っていた。打っても打っても決まらない、それでも軽打、リバウンド、ワンタッチ、インナークロス、持てる技術を総動員して奮闘する姿に心打たれたようだ。
何とか怪我なく完走できたが、本人は昨日の奮闘も含め、仕方ないという表情に悔しさが滲んでいた。昨年の総合から櫻田記念、実業団、そして今回の総合と4大会連続ベスト8っていうのは素晴らしいこと。
ただチームとしてはその上を狙っているので、素直に喜べないところはあるだろうが、ここは是が非でもチーム一丸で突破しなければならない。


・蹉跌、尾を引いて

12月21日、22日に櫻田記念が高崎市で開催された。初戦は全日本総合3回戦でも対戦したパナソニック津との再戦。前回は勝ったとはいえ、終盤までリードされてからの逆転勝ちという薄氷勝利。気を引き締めて連勝と行きたいところ。
第1セット、前回同様またも連続得点の奪い合い。8タイのところでボールの衝撃により渡辺のコンタクトが外れ、タイムアウト東北。しかし渡辺は洗面所から戻れず、2度目のタイムアウト。それでも戻れなかったため、本人不在の状態で本田と交替した。

佐々木時間差、渡辺は戻ってきたが交替せずに続行、津ライト強打アンテナ、鎌田フェイント、津レフト強打アウトで12−8、佐藤フェイントがブロックされ12−10となった時点で渡辺が入る。
シーソーの展開から津の3点連取で15−16と逆転される。これでリズムに乗った津はサービスエースで16−18、最後は津レフト強打連続、永井Bがブロックされ17−21。

第2セットはいきなりの0−4も、中盤で津の連続ミスなどで4得点し10−11と盛り返す。津レフト強打、佐々木強打を津がブロックすれば、永井Aフェイント、津時間差を佐藤がブロックし13−14と譲らない。
永井B、津の2段トスミス、津ライト強打ネットで17−16、しかし津レフト強打は連続してブロックアウトとなり、またもリードを許す。津タッチネット、津A、渡辺強打19タイ、津中央から強打、津FR強打に佐々木がブロックフォローしきれず惜しくも19−21、ストレートでの敗退となった。

センターラインがうまく機能せず、両サイドも決定力を失ってしまう…全日本総合でもその流れはあった。前回はサーブで崩したり相手ミスがあって凌ぎ切ったが、今回はサーブが決まらないし相手も要所でミスをしてくれない。その分、上回られてしまった。
渡辺の途中離脱で終盤にタイムアウトが取れなくなってしまったのも痛かったが…本田は思いも寄らない展開で全国デビューを果たした。いや、全日本総合の開会式で、もうデビューしている?って言えるか…
他の試合を挟まずに連戦となるが、切り替えができていればいいが…

2戦目は中部徳洲会病院との対戦。これはもう引きずっていると言うしかない。熊谷を入れて守りを固めたが、チームとしてほぼ何もできず、第1セットは9−21。決勝トーナメントに行くには、徳洲会にストレート勝ち、しかもある程度点数を離してという極めて厳しい条件だったが、そこは抜きにして何が何でも相手を倒すという気迫を見せてほしかった。
相手ミスが多くなった2セット目は踏ん張った。しかし所々でタッチネットしたり2段トスドリブルだったり選手同士がぶつかったりと、良い流れは作れず、終盤の5連続失点で16−21。
これは…モチベーションが低い状態で、もしかすると3連敗も有り得る状況になった。もはや予選が3位になっても4位になってもあまり関係ないことだが、やはり負けていい試合などなく、やる以上は勝ちにつなげなくてはいけない。

3戦目は四国電力と対戦。4−1から8−2と展開、粘られたが15−13から6連続得点で第1セットを21−13で先取。第2セットも5−0から15−4と圧倒、21−10でストレート勝ちした。
今まで決まったら中央に集まっていたが、この試合から後ろに走り出すようになった。とにかく何か変えなきゃっていう思いがあったのだろう、 一定の効果はあった。ただし付け焼き刃なので「あ、走るんだった」と、思い出したように走り出すシーンがあったり、ぎこちないため、全員一丸感にはほど遠い。

◇  ◇  ◇

リーグ3位で順位トーナメントへ。体力的にはキツイだろうが、なかなか取れなかったその1点、もぎ取るプレーができるか。
初戦は三菱電機紅菱会と対戦。4失点を喫し3−6と逃げられそうになったが、ここから中盤までをシーソーで乗り切ると、鎌田強打、三菱オーバータイムス、佐藤フェイントで14−15、鎌田強打、永井Aで16タイ、佐藤強打、佐々木時間差でついに逆転、18−17。
先にセットポイントを掴むが、三菱時間差20タイ、鎌田軽打が拾われ三菱ライト強打、三菱時間差20−22。

第2セットは試合になっていなかった。2−8から5−17まで開いてはどうしようもない。結局ダブルスコアで敗れた。「練習でもしていなかった」今野をセンターに起用しても打開できず…
第1セット20タイでの鎌田の軽打は、いつもここで気張るとフカシてしまうことが頭をよぎったか…無難にいってしまった。
過去に5回の順位トーナメント戦があるが、一度も勝ち切ったことはない。色々要因はあるものの、高いモチベーションを維持して戦い続けることが苦手なチームカラーである、と言えるのではないか。
更に最近はベテランが多いRI東北の弱点というか、先の展開を見通して気持ちが入らなかったり、ミスを引きずるところもあるし、また全日本総合の激闘から3週間では体調が戻らないのもあるだろう。

「皆さんお疲れさまでした。これがウチの課題ということで、これをどうつなげていくか。ここまで応援してくれた家族はじめ、周りの皆さんに感謝し、また頑張っていきましょう」と、部長の庄司からの檄。
「一年を通しては頑張ったと思うし、落ち込むことなくまたやっていこう」と江口。栄光目指して、また新たな目標を設定して突き進んでいく。



しかし行く手を阻む、まさかの出来事が世界規模で起きようとは、この時点では知る由もない…