ふいに闇から手が伸びるように黒い何かがユイを捕らえた。
「きゃあっ!な、なに!」
「ユイちゃん!」
とっさにユイの手をつかんだハルナもろともすっぽりと闇におおわれてしまった。
そのまま消えてしまう。
「ユイ!!」
「ハルナちゃん!!」
しかし、返事はなかった。
起き上がると、ハルナはユイが隣に倒れているのに気がついた。
「ユイちゃん、しっかり。」
「ハルナ、いったい・・?」
「私達、みんなと引き離されてしまったみたい。」
二人はさっきとは別の空間にいた。
暗闇ではないので周りが奇妙な壁に囲われた空間であることがわかるが、
一緒にいたはずのIR達の姿はどこにも見当たらない。
「IR!ワンちゃん!」
ユイが叫ぶが、まるで無音室にいるように声が響かない。
「ワンちゃーん!!・・」
トントン、と何かがユイの肩を叩いた。
「ワンちゃん!?」
ユイが振り向く。と、
「ユ、ユイちゃん!あぶないっ!」
「きゃーっ、なによこれ!」
何もない背後の空間が、意志を持ったように腕の形に立体化して、ユイを抱え込んだ。
「離してよ〜!」
「じっとして、ユイちゃん!コレクターイニシャライズゥー!!」
バシバシっとユイの後ろの空間に星型が飛び、腕がすっと消える。
しかし、今度はハルナの足元の空間がぐらっとゆれ、ハルナを跳ね飛ばした。
「きゃぁー!!」
「ハルナ!」
ユイがハルナに駆け寄る。
それを合図に、目覚めたかのようにあたりの空間がざわめきはじめた。
「いったいなんなの?!」
「きっとこの空間全体がバグルスなのよ。私達はバグルスの中にいるんだわ。」
「えーっ!そんなぁ」
「あぶない!とんで、ユイちゃん!」
「え、!?ひゃっ!」
足元から伸びた空間の触手からとっさに浮かんで身をかわす。
「コレクターイニシャラーイズ!」
ユイが今居た自分の足元に向かってイニシャライズをかけるが、
いったん空間は縮んで元に戻るものの、周りから波がよせてくるようにまたバグルス化していく。
「きりがない・・バグルスの中心がここにいないから、すぐに元に戻ってしまうんだわ。」
「じゃあ中心はどこにいるの?」
「多分、どこか別のところからバグルスを感染させているのよ。この空間の中からはイニシャライズしきれない。」
「そんなあー!!」
その間にも空間がぐにゃりと歪んで、次々に空気の触手が襲ってくる。
それを身軽にかわしながら、
「コレクターイニシャライズ!!コレクターイニシャラーイズ!!」
ユイは何度もイニシャライズをかけた。
「ユイちゃん?」
「だからといって、なにもしない訳にもいかないもの!」
そうね、あきらめてはいけないわね。
ハルナはうん、とうなずいた。
「イニシャラーイズ!」
「イニシャライズゥー!」
辺り一帯が星型で覆われた。
一気に空間が静まり返る・・が、すぐに空間がどよめき、立体化して攻撃してくる。
「イニシャライズゥー!」
やはり収まるのは一瞬だ。
しかし、ハルナは空間がバグルス化していく方向に規則性があることに気がついた。
どこか一点からバグルスが全体に送られているんだわ。
それがこの空間の中心、バグルス化が始まる原点のはず。
そこをイニシャライズすればバグルス化は止まる!
「イニシャラーイズ!」
ユイがワンドを振り回している。
一瞬だけ周りを囲む壁が普通に戻り、そしてすぐにバグルスが波打って全体に送られる。
ハルナは今度はそのバグルス化の原点のようなポイントを見逃さなかった。
「ユイちゃん、あそこからバグルスが送られてくるわ!一個所に集中して狙うのよ。」
「わかった、コレクター」
「ダブル」
「イニシャラーイズ!」
「イニシャライズゥー!」
黄色とピンクの星が絡み合ってバグルス化の原点を狙い撃ちした。
空間の歪みが正常化し、周りにも波及していく。
そして今度はさっきまでのように空間がすぐにバグルス化していくことはなかった。
「やっぱりあそこからバグルスが感染していたのね・・・。」
すかさずハルナは身を反転させ、そのポイントから一番離れた遠い壁に向かってイニシャライズをかけた。
「イニシャライズゥー!」
どんっ!!
振動が伝わり、壁に別の空間につながる穴が開いた。
「やったぁ!!」
「きっとまたすぐにこの空間はバグルスに感染するわ。いまのうちに、はやくあそこからでましょう。」
「うん!」
穴の外からユイを呼ぶみんなの声が聞こえてきた。
さっきの空間につながっているのだ。
「ユイ、どこだ?」
「あ、みんなー!ワンちゃーん!」
ユイが穴に向かって駆け出したその時、バグルス化の原点のポイントにどこからか再びバグルスが送られた。
すぐに全体に広がって行く。
「いけない、ユイちゃん、はやく!」
ハルナの背後から雪崩れるように空間が崩れ出した。
「ハルナ!!」
ユイがハルナの方に戻ろうとした時、壁にあいた穴まで空間がバグルス化し、穴が閉じかけた。
「ユイちゃん、穴が閉じるわ!イニシャライズゥー!」
「ハルナ、後ろ!!」
「きゃぁ!!」
音を立てて空間の雪崩が全体に広がった。