「話題の作曲家, ディーリアスの本格的なオペラの初登場だ。土地に執着し対立する農夫の子供たち, サーリとヴレンチェンの清らかな恋は, 毒薬といった小道具がないだけに, 本物の「ロメオとジュリエット」よりもリアルな感動にあふれている。だがディーリアスはどこまでも幻想的で, 特に第六場の幕切れはほとんどたえ難いほどの美しさだ。全篇大きな愛の二重唱の中に, 村の市のにぎわいや農夫の争いが点描されるという構成も心憎く, オーケストラが実に雄弁にドラマの雰囲気を描きつくす。これほど天国的なオペラも珍しく, 自然への愛, 若者たちへの愛が, ディーリアスの心情をとおしてうたい上げられ, きき手もまたたえがたい感動にさいなまれる。」
(出谷啓 音楽之友社刊 週間FM誌より)
「いつの世にも”ロメオとジュリエットの悲劇”は絶えることがなさそうだ。ディーリアスの「村のロメオとジュリエット」は, ”醜い争いを続ける親たちのかげにひそかに芽生え育って行く少年と少女の恋。スイスの一農村にくりひろげられる悲しくも美しい物語” (岩波文庫ケラー作「村のロメオとユリア」の帯より) をオペラ化したもので, その音楽は可憐な少年少女の悲恋のように静かな美しさにあふれている。一幅の名画「楽園への道」 (間奏曲) を経て二人が入水したあとの余韻も深い。ロイヤル合唱協会の指揮者メレディス・デイヴィスの暖かいまとめ方もよい。」
(三浦淳史 音楽之友社刊 週間FM誌より)
ちなみに, 二人の筆者ともディーリアンとして有名である。