イート*マニア
I love food and drink and delica and cafe and... and,and,and...ALL FOODS and CAFES!

食い物を嫌いな人間なんてそうそういない。いたとしたら、拒食症患者か、もしくはダイエット中の人か、
食事にトラウマのある人間くらい。無論、人によってアレルギーでとか、どうしても食べれないとか、
そういう好き嫌いはあるだろうけど、「食べる」ことと「食い物」全般を嫌いな人はいない、
そう私は信じている。だって私はとりわけそれが好きだから。だからおやつのひとつ、
今日の昼食、どんなに貧相な料理でもテヌキでも、それは重大事なのだ。





 2002/02/02(Sat)  ライチ襲来! 禁酒者のためのライトカクテル at homearound

さて、またしてもライチである。
そんなにライチが好きなのか?!と言われれば、まったくそのとおりで異論はないが、 つい最近、世にも素晴らしいライチ製品が発売されていたので、それについて。
ああ、これもアジアブームのお陰なのだね、アジアンフード万歳!!


さておき。
一時期華原朋美が煩いほどに宣伝していたJTの「桃の天然水」をご存知だろうか。
あの時はラリってた華原が嫌いだったのでまったく手をつけなかったのだが、最近 コンビニでふと見つけたその新商品を見て、私は「ほ、欲しい・・・」と痛切に思ってしまったのである。
そう、その名も「ライチの天然水」。
そのまんまなネーミングは相変わらずだが、「桃」から「ライチ」になっただけで、素晴らしさが 断然違うような気がする。例えて言うならば平凡だけれど可愛くて甘いお洋服から、ざっといっきにあっさりと、 だが上質なアジアン的ノーブルさを湛えたさりげない大人の服に切り替わったかのような(褒めすぎ)。 心なしか、色調もライチのあの微妙に沈んだ赤色をイラストに起用しているせいか、すっきりと美しいパッケージ デザインに進化したかのようである。
外見はさておき、私がこの「ライチの天然水」に感嘆の念を惜しまないのは、そのイメージ・ルックスだけでは なく、その根本主体となる、味そのものなのである。

ライチの味というのは、決して濃くはない。
言うなればそれは甘く香しい水のようなものであって、やたら味を濃くして風味を誤魔化してみたり、などといった 小手先の味の作り方では失敗してしまう味なのだ。
だが、驚くことにこの製品は違う。最初、口に含んだときに、まさにあのひやりとした甘く香るライチの味が 舌と口腔に触って、私はびっくりして成分を確かめたくらいだ。果汁はたったの1%、ということはそれはほぼ すべてが人口的に作られた作為的な味である。・・・にもかかわらず、それは本物のライチそのもののように、 まさに今ライチを口にしているように、そんな風に私の舌を鮮やかに騙そうとする。とろりとした甘さ、もつれる ようでいてすっきりとした香り・・・そんなもののひとつひとつが完璧に、いや本物以上に完璧な状態で再現されているので ある。
たとえ100%のライチ果汁のジュースがあったところで、遥かにこれよりはライチの風味は損なわれてしまうだろう、 そのくらいにこの人口飲料はライチそのものを再現することに成功していたのである。
私はもとから日本の味覚研究者達は精密な舌をしていると思っていたが、今回ほどにそれを感じたことはなかった。 人工的に味を似せた飲料を嫌う私だが、今回こそはただただ、彼等に賛同と感嘆を示すのみである。

そんな素晴らしい飲料の存在を知り、私はそれを目にする度に買い求めるようになったのだが、 あまりにライチの味としての完成度が高いので、ただそのまま飲むだけでは勿体無いような気がしてきた。
これは単なる飲料ではなく、技術と味覚の粋を結集して作られた、最高のノンアルコールリキュールである、そう思ったからである。 さあ、それではリキュールならばリキュールらしく、その味に尊敬を込めて、カクテルをひとつ作ってみようか。

用意するのはほんの少し。
とても微妙な味を楽しみたいので、他の飲料とはカクテルしない。
まずはペリエ。普通のソーダ水でもいいのだが、ソーダというのは実は製品のグレードによって味ががらりと違う。 せっかくなら、少々値は張るがペリエがいいだろう。一番小さな瓶のものを買えば、大きなタンブラーに2杯分用意できる。
まずは大きなタンブラーにあるだけの氷を放り込む。多ければ多いほどいいが、上にほんの少し余裕を残して欲しい。 それからライチの天然水を6分目くらいまで。冷えた氷がカシッ、と割れた音など聞くと、ついそのまま飲みたく なってしまうが、ここはまだ我慢、我慢。
ちょうど今は冬なので、しゃきしゃきしたリンゴを入れてみよう。1.5センチくらいの四角にカットしたリンゴを せいぜい5、6個ぽんぽん投げ入れる。このときリンゴはシャキシャキ感を楽しむものでもあるので、できるだけ 新しいぼけていないものが望ましい。
それから、彩りとほんのりとした風味付けのためにスペアミントを。これは必ず生のものを。ドライハーブは味が 出過ぎるので適切ではないのです。たったひとつぽつんと、カフェデザードの上に乗っているかのように置くのも 悪くはないのだけれど、生ハーブの味を馴染ませるためにはお上品すぎる。ガンガン入れてください。
リンゴと同じ位の量を入れたって構わない。寧ろ私はそうしてます。
ライチの天然水、リンゴ、スペアミント、たっぷりの氷が出揃ったところで、最終兵器ペリエの登場。 これが締めだと思って、思う存分たっぷりと注ぎいれてください。ミントが少し顔を出すくらいが見た目としては かわいいかも。ペリエはまた注ぎなおせばいいので。
さて、そうしてペリエの瓶を置いた瞬間、あなたの目にはなんともいえないくらいに爽やかで甘い香りのする ノンアルコールカクテルが存在している訳です。味の濃さに顔を顰めることもなく、かといって他に食べ物が あったりしなければ物足りないなんてこともない、ささやかで、でも贅沢な独立したドリンク。
私はだいたいこれを夜の夜中に作ります。静かな夜にひとりで何か少しだけしたいとき、とか、或いは 誰かもう一人がいて、さりげないものでさりげなく、でも手を抜かずに喉を潤したいとき。
決して「すごく美味しい!」というほど強烈なものではないですが、爽やかな水のような、でももっと 甘く香る飲み物をふと欲しくなったとき、私はそれをふと思い浮かべるのです。

褒めすぎ、といわれるかもしれませんが、でも、こんな素晴らしく微妙で絶妙なライチを開発してくださった方々への 賛辞を込めて。私はこの飲料をこよなく愛しているのです。

 2001/09/17(Mon)  迎撃準備はいいか!『ばくだん』おにぎり at 池袋

私はそれを見つけたとき、遂にこれを見つけてしまった、そう思った。そうしてそれを食そうというとき、 私がそれに敗北することのないよう、味噌汁と切干大根の煮物、それから味の濃いもう一品を用意し、膝を正した。 なんたって相手は大物なのだ。

この日は客先での早い解散で、疲れた私は料理をする気も起きずデパートの惣菜売り場をうろうろしていました。大変魅力的なお惣菜が立ち並び、 実に目移り。さあ、なににしようかなあとふらふらと彷徨っていたとき、突如として目に飛び込んできたもの。
それは、
「ばくだん」。

以前東海寺のりおさんのエッセイで「こういったすごいオニギリがある。立派である」というようなことが 書いてあり、いたく興味を誘われていた私、その大きさに「マジですか・・・」と唖然としながら、だが「ここでこれを 買わずしてなんの高那津の名があろうか!(最初からねえよ)」と決意し、その購入に至ったのであります。
この「ばくだん」というおにぎり、たしかにおにぎりと言っていいのですが、そんな可愛らしい言葉で表していいのか どうかという大きさで、大人の握りこぶしを掌を合わせるように握り合わせたくらいもある。
本で読んだときも「ほほう」と思ったものだが、実際見てみると「・・・これひとつ作るのに、どのくらいの米が・・・」 という大きさ。それを海苔がしっとりとなるように包み、表面に昆布の佃煮、桜漬、沢庵、シャケのほぐしたもので 彩りってある。というか、海苔の上から貼り付けてある。「うーむ、確かにこの大きさ、漬物が数種必要である」と 改めて納得し、本来ならラップをとらずに食べた方が崩れなくていいのだが、中を見るために敢えてラップを剥がしてトライ。

中身は焼きタラコ(2つも!2つも!いやもう嬉しいなあ)、シャケ、あともう一種入っていたようだが、タラコの 喜びで忘れてしまった、というカンジで具沢山のおにぎりで、「うーむ、これぞおにぎり界の帝王ではあるまいか」と 思いつつ食い進む。そんなにきつく握りこんでいるわけではなく、米の形がきちんとわかるのに、思ったより崩れない。 多分ここにおにぎり握り術の奥義があるに違いない。是非知りたい。
途中で潰えてしまわぬよう、合いの手として予めマツモと麩の味噌汁を用意しておいたので、喉につかえることなく がんがん食い進んでいったのだが、それにしてもなくなりそうでなくならない。
横目でテレビ放映中のコナンを観賞しつつ、おにぎりにかぶりつき、味噌汁でほっとし、またおにぎりを食う。
考えてみれば、こんなにがんがん食えるというのは、米も具も握り具合も大変よろしいからで、腹は段々重たくなって くるものの、舌は次の米を求めて止まない。こんなにもでかくて、米が沢山だというのに、これは素晴らしい。
やはりおにぎりひとつとっても手を抜くのはよろしくない。こういうものこそ逆に、企まぬきちんとした作り方によって 作らないと、味のごまかしが一切利かないためアラがわかってしまうのかもしれない。

とにかく、感服感服。そのデカさ、インパクト、そして日本人の米心をがっちりと満たしてくれるこのおにぎりに 私は敬意を表したい。高いんだけど。

 2001/09/15(Sat)  そのコーヒー at 下北沢

去年から始まったカフェブーム(ちょうど1年くらい経とうか)がいい方向で落ち着き、 そろそろニューオープンの文字に躍らされるでもなく、ゆっくりとその店のメニューを 検分できるようになった。

夏というのは、とかく味も見た目も涼しげなお茶に傾きがちで、アイスコーヒーというものを あまり評価していない私には尚更コーヒーというのはここのところ疎遠だった。
だが、その中でもフレンチやエスプレッソだけは、ほっとしたい時、最後にひとあじ締めたい時には 必ずといっていいほど頼む。

その日は秋口に入り始めの、涼しすぎず、だが暑くもなく、空は暗くもないが晴れすぎてもいない、 まさに絶妙の日だった。
そんな日で、下北で時間を潰す必要のあった私は、既に新しく開店した店のテラス部分で、 チャイなぞ飲みつつジャン・フィリップ・トゥーサンの文庫本(集英社)を読む、などという まさに季節的に絶好なことをしてきたばかりだった。
それでも時間までは間があり、小さな買い物をいくつかして、その後、本当に美味しいコーヒーを 用事の前に一杯だけ飲みたくて、そのカフェに入った。

ここは何度か来ている。私の気に入っている店のうちのひとつで、その穏やかで静かで、そして自然な 雰囲気と、のびのびと本を読んでもいい、そんな雰囲気が、私は大好きだった。

ここは2フロアあり、1階は2階より開放的で活動的であり、2階はひっそりと心地よく静かだった。 いつもは私は1階にいるのが常なのだが、案内してくれた店員さんが「お煙草お吸いになりますか?」と 訊くので、いいえと答えると、その日は2階に案内された。

2階は1階よりゆったりとスペースがとられ、テーブルが二つ、それから・・・ここの丁度はほぼ白で統一されて いるのだが、たったひとつだけ、真っ赤な赤いソファがある。いつもは人気があるその席も、半端な時間故か 誰もおらず、私はちょっと驚きながら恐る恐る、そのソファに腰を下ろした。
腰を下ろしてすぐに、店員さんが注文をとりにあがってきた。私は二種類あるここのコーヒーの、ローストの 強い方を頼むと、読みかけのジャン・フィリップ・トゥーサンを取り出す。ソファは赤く柔らかく広く、そして その前にははっきりと白い正方形のローテーブルがある。私は多少行儀が悪くとも斜めに腰掛け、足をだらりと 伸ばしながら、その本を捲る。トゥーサンのなにもない、だがなにかがある世界が、白く自然な空間で展開されてゆく。
コーヒーが来た。白いC/Sに入っている。このC/S、大人しいのに頗る趣味がよく、後で調べたら、『アラビア』のものだった。 それに、淵がはっきりと判るほどに黒に近い、苦味のあるコーヒー特有の美しく黒い飲み物が入っている。 店員さんがローテーブルに静かにおいてくれたそれを、私はソファから身を起こし、少し屈んで(本当に低いテーブルなのだ) 手元に引き寄せる。カップを近づけ、その香りを嗅ぎ入れる。

匂いたつような、香りたつような。
苦味が強く、普通ならば沈んでしまったり頼りなくほのかに香りを示すだけのように思える味の豆は、 確かに生きているものの力強い香気をはっきりと漂わせ、鼻腔を刺激した。
目が覚めるかのような鮮やかで力強い、だが浅くきついというのではない、骨の太い香り。たった一杯のコーヒーから そんな言葉が弾け出てくるかのように、そのコーヒーはひどく存在感があった。
この部屋が白く、そして穏やかなのは、このコーヒーの存在をより際立てるためではないか、そう思うくらいに コーヒーはしっかりと、たしかなものを私に感じさせる。

――このコーヒーだ、
私はそう思う。
――このコーヒーこそ、今私が最も素晴らしいと思うコーヒーだ。


器は大きくなくて、ともすればすぐに飲み終わってしまいそうなコーヒーを、私はゆっくりと、ゆっくりと香りを吸い込みながら 飲んでゆく。手元にはまだジャン・フィリップ・トゥーサンが開かれている。ジャン・フィリップ・トゥーサンの本を、私は 乱雑には読まない。この本を読んでいい雰囲気と時間が整っているときでなければ、勿体無くて読まない。
今私がいるこの空間は、とてもそれに合った。白くてシンプルな丁度、床はまだナチュラルな色をした板木だ。静か過ぎず、 ムーディーすぎもしないジャズの流れるコンポは、本の背表紙と並んで壁の作り棚の中に収められている。横にある大きな窓からは、 そろそろ夜へ差しかかろうとする、藍色の風景が広がっている。私はそんな空間の中の、ただひとつ、赤いソファにだらしなく 座って、とっておきの本を淡々と読みつづける。

ふと、棚の中の本が気になって、持っていた文庫本をテーブルに伏せ、そこに向かった。その棚の中の本は、他の本棚ほど 私の興味をひかず、私はくるりと向きを替えてすぐ後ろの自分の席に戻ろうとした。

本の表紙は、まだぴかぴかと真新しく白くて、極力装飾を排除したそのデザインは、下のローテーブルに溶け込んでいるかのように よく合った。その隣に、感じのよいC/Sに入った香り高く黒いコーヒーが置かれ、柔らかく広い、たったひとつの色彩である赤いソファが フローリングの上で私を待っている。

見惚れてしまった。ずっとそこでその風景をじっと見ていたいくらいだった。
そんな空間で、最上だと思えるコーヒーを片手にとっておきの本を違和感なく読めることができるだなんて、 なんと贅沢なものなのだろう?それはなんと美しい時間なのだろうか。
私は惚れ惚れした。その空間に、そしてそのコーヒーに。
それこそ「その」、たったひとつだけ選んだコーヒーというやつに相応しいものではないだろうか?

 2001/08/23(Thu)  その判定は?『でび』ラーメン at 渋谷

現在、渋谷道玄坂で最も有名なラーメン屋を挙げろと言われたら、間違いなく私は 「でび」を挙げる。
味がすごいのか?いや、それよりなにより、その店は比較的静かな道玄坂にあって、 長期間に渡って店外に行列を作りつづけていた、いわゆる評判の店だからである。 (どうやらTV番組の企画から誕生した店というのが理由らしい)

無論、道玄坂は昼飯処と考え、かつ行列嫌いの私は入ることすら考えなかったのだが、 先日どうしてもラーメンを食べたい日があって、まったく行列していなかったのに つられて、つい入ってしまったものである。

店内はL字カウンター+長テーブルひとつの小さめな店で、確かにこの小ささにあの客なら 行列は必至かもという規模。試しに「でびらーめん」700円とやらを頼んでみる。
麦茶を出してくれるグラスが、厚手のひねった変形グラスで、可愛いかどうかはともかく これでサーブするというのに少し驚く。

でびらーめん登場。一見した感想としては、「700円にしては少ないなあ」ということ。 丼は標準的なラーメン用のものだが、サイズが小さめかもしれない。女の子サイズなのだろうか。
目新しいのは具。大根の煮たものが具になっているのは驚いた。あとは万能ねぎの切ったものが かなり多く添えられ、更にフライオニオンのチップ(?)のようなものが中央に掛けられている。 スープは・・・とんこつ醤油なのかなあ、多分。ラーメン語りはできないので割愛。
まあ具の食感は面白そう。で、スープは・・・とひとくち啜ると。
・・・うーん?????いや、だしも効いてるしあっさりまろやかだし、いいと思うんだけど・・・
????なんだろ、この「ラーメン食ったぞ!」感のしない、ニュートラルな味は?

そう、私はラーメンを大して食わない代わりに、食うときは「ラーメンだ!俺がラーメンって奴だ!よぅく覚えとけ!」 的なラーメン色の強いものを好む。目下はいち源の札幌みそとんこつラーメン(がっちり濃いうえに麺が力強い。 漢のラーメンだ!と決めた) というがっつりさを何より愛していたりする。

ここのスープ、どこぞの達人の指導のもと行われたらしく、確かにだしは単一ではない複雑さとまろやかさが ある。出来のいいスープだろう。・・・が・・・。

まあ、ラーメンはスープだけじゃない、麺もだよと思いつつ、麺をみると、これが珍しくまったくちぢれのない まっすぐなもの。中国の麺なのかと思えば、味や固さは日本ラーメンのもので、中太の麺が歯応えよく茹でられている その絶妙さ加減には「おおっ」と思わせるものがある。パスタのアルデンテを思い出す麺加減。

それからトッピングの万能ネギとフライドオニオン、スープを飲むたびにきちんとアクセントになり、考えられた配分。 黒胡椒がミルで用意されていたので、荒く挽いてみると、更にアクセントが絡み合い、なかなかの味。

総合的にあのスープあっての麺、麺あってのスープ、スープに対する具、ということで、バランスはとれていると 言えるだろう。

・・・が・・・。

なんだろう・・・ニュートラルなラーメンっていうのは、どうにも「ラーメン食いにいくぞ!」「ラーメン食ったぜ!」という 爽快感に欠けてしまうのである。そんな日はいち源「札幌みそとんこつラーメン」の方が、遥かに「おお!俺はまさに がっつりとラーメンというものを食しているのだ!まさに今!」という臨場感と感動を得られるのである。
そんな人間は来るなといわれればそれまでなのだが・・・ニュートラルすぎてゲージの上がらない、優しい味のラーメンというのは ふと思いついて「そういえば行こうか」とは思っても、「おお、○○のラーメンが俺を呼んでるぜ!」という熱さはない。 女の子が軽いランチ感覚で「おいしいんだよねー」と軽く食べられるようでは、カテゴリー「ラーメン」から外れているのではないか。 いや俺はラーメンを語れる人間でもラーメン道なぞ畏れ多い人間であるがしかし。一般的にねホラ。やっぱりラーメンだからさ。
ラーメンにはどこか漢らしくあって欲しい。そのためには「味がいい」だけでは気勢に欠ける。
「でび」のラーメンは、「ラーメン」ではなく、女の子のランチパスタの変形なのしれませぬ。

つうか、途中からなんだか問題がずれてるような気がしなくもないんだが・・・まあそこはホラ、ラーメンだから。つか庶民舌なんで。

 2001/05/13(Sun)  夜中のライチ。 at Home Around

それはいかにも初夏らしい天気のいい日で。
外に出ようかと思ってはいたものの、結局昼間は家にいて、夕方の、少し空が青みを増したという その頃にやっと外に出た。

どこか電車に乗って食べるところを探しても良かったが、それは気疲れするような勿体ないような気がして、 平素あまりやらないのだけれど、最寄駅の周辺にある商店街の、以前から少しだけ気になっていた中華料理店に 足を運んでみる。

そこは商店街の賑やかな通りをさっと入ったところにあり、華やかなメニューの写真パネルが店自体の装飾となり、 通る度につい目が行ってしまう、店自体にそんな賑やかさがあるのだった。

席にはすぐ通されたので、嬉々として私はメニューを開く。単なる街の中華屋に毛が生えたくらいかなと思っていた のだが、一品で頼むものが殆どで、その種類は相当数である。しかも定番メニューに加え、季節のメニューすら数種ある。 季節のメニューで最も美味しそうで珍しかった「冬瓜と海老団子炒め」を頼む。あと、ビーフン入りスープ、ライス、海鮮春巻き、 海老餃子。飲茶が可能なところなのでお茶も置いてあり、プーアル茶を頼む。

飲茶ができるだけあり、一人用の蓋と茶漉しのついた陶製のカップがやってきた。 中国らしい目が痛いほどに鮮やかな模様の入ったそれは、使い込まれているうちに、色が剥げたり掠れたりして、 新しすぎない店の壁と同調してうまくぼやけている。

冬瓜の料理はすぐにやってきた。
白い食べ物だからか、調味料の色のない料理で、白い冬瓜と、鮮やかな海老の色が(この日は海老団子がきれていたらしい) 夜の店内にも綺麗な食べ物であった。食べてみると、鶏スープをベースとした塩味の食べ物だったが、味付けが絶妙で、 とろりとした透明なたれを白飯についかけて食べるほどだった。外見があっさりしている割に味は複雑に美味く、一気に食べてしまう。連れと「美味しい」を連発しながらすぐに食べ終えてしまった。

その夜出された料理はどれも美味しく、何故もっとこの店に早く入らなかったのか、後悔したくらいだった。 冬瓜がやはり一番であったが、どれもこれも、それぞれに美味しく、もっと食べれないのが悔しいくらいだった。
すっかり満腹になったので、そろそろ帰ろうか、とその瞬間に、ふとメニューが目に入る。


ライチ。


その言葉を見た途端、私の頭に冷たく冷えた、そう、多分外側は少し冷えも緩んでとろりとした感触をしているだろう、 だが、中に向かうにつれて天然の果実とは思えないくらいに冷たくなり、歯に冷気を返すのだ、その感触を私はつい想像した。 それは人の熱気と、さっきまで食べていた料理による熱で、少し暑くなったかな、と思った私には例えようもなく魅力的だった。

早速私はそれを注文する。
予想どおりに、氷の中に転がされて出てきたそれは、皮から触るだけで指の芯に冷たさを感じるくらい冷えていて、 私は熱気によってぬるくなる前に急いでそれを剥く。
とろりと、冷たい感触がして、白く半透明な食べ物が現れる。
急いで口に含んで噛む。とろり、という甘さと、口の中のパーツすべてにかつっ、と響くような、歯ごたえある冷たさがそこにあって、更に噛むとしゃりしゃりと快い音がした。

冷たいとろりとした甘さは、冷涼な味を口内いっぱいに広げ、口内だけがまるでどこか別世界のように感じられた。 それは日常ではなく、そこから遥か離れたどこかの空間に、口の中だけが接続しているかのようで。
夢中で私はその冷たいものを噛み、香味を口内に広げ続けた。


ご馳走様、と勘定を払って外へ出ると、初夏の暑くもなく、寒くもない、ちょうど涼しい風が、腕を掠め、顔を撫でた。
口の中は、そこだけがまだ優雅なとろりとした甘さと、冷涼な香味を強く残している。

私は息を吐く。
夜の心地よく冷えた大気に、その甘さは、不思議なほどに馴染んだ。
それを失いたくはなくて、しばらくは何も口に入れずにいよう、そう思った。
 2001/04/17(Tue)  それはどうだろう、自称『パスタ屋』さん at 渋谷

引越し後、金が大変ないのと、いきなり仕事で店の開いてる時間に帰れ なくなったのとで、平日一人での外食は久々だった。

最近「パスタ食いたいね」「心当たりある?」「んー…」とかいうようなやりとりを 友人としていたため、久々の一人の外食は、渋谷のパスタ屋リサーチにしよう、 てなわけで、目についたところに入ってみた。

そこは地下にある店で、ガラス張りの店内のレジあたりで電話しているおやじが スーツ姿に長髪を後ろで一本にまとめている、というどこかで見たような格好だったので、 とっさに「ヤバイ」とか思ったものの、店員に発見されてしまったので中へ。
ケーキとかは割と美味しそうだったので、その日のパスタである春キャベツとベーコン(なんか長い別名でしたが)の クリームソースパスタと、ドルチェにパンナコッタとエスプレッソを頼んでみる。 人の入りはそこそこ。パスタの値段が1300円と高めだったので「うーん、当たるか、さもなくば外れるかだなあ」 とか思う。マスターらしきそのおやじ、割とうろちょろしてる。落ち着けないので昼間に買ったブコウスキー特集を読む。

パスタ登場。1300円で良心的な店ならば「うをを、こんなにもたくさん!」という量のものか、「は、なんか見たことも ない食材が!」みたいな驚きがあるのだが、ここは「…は?単なるフツーの(しかも量少なめ)キャベツとベーコンの パスタじゃねえか」という呆気ないものが登場。麺は少し細め。値段の割に貧弱な印象。
ただ、粉チーズがおろし金でおろしたもので、好きなだけおろしたての粉チーズがかけれるのは唯一のここの良心かも。 「ま、味はいいかもな」と口に入れる。フツー。全然フツー。今思い出しても書けないくらいフツー。 唯一覚えてるのは、その長ったらしい名前のベーコンの塊がちと塩辛かったことくらい。あとフツー。ホントフツー。

「うっわー、やられたよー」と思う。
マスターのやたらべたべた他の客に馴れ馴れしい口調といい、 いかにも「昔はクラブ(しかも昔なのでVIPとかを有難がったりする世代の)のオーナーしてたんだけど ちょっとそのときパスタの評判良かったんで、クラブやめてパスタ屋にしてみたんだけど、どう?」的な店なのだ。 入る前に感じた第六感は正しかったということか…つうかよくまああれで1300円も…。
ドルチェはまあまあ。そこそこだったのだけど、なんかそこいらへんでぐーんと評価落ちました。だって看板にまがりなりにも「パスタ専門店」って書いてるんだよ?

会計のとき、そのクラブオーナー崩れのオーナーがタメ口で「ポイントカードあげるね。5ポイントためるとパスタ半額になるよ」 とか言ってきたのだが、表面上は「ありがとうございますー」とにこやかに答えつつも、 「てめえ、俺が見た目35歳パリッとした高級そうなスーツに身を包んだいかにもキャリアな人間だったら同じ口調で話したか?」 と僻みっぽく思い、また「いや、650円でも食わねえよあのパスタは、悪いけど」とかつい思ってしまったのであった。

…つーかさあ、折角渋谷に店構えてるんだから、もーちょっと店のスタンスも味もスタイリッシュになったって いいんじゃない、ってゆうかオーナーが(爆)。私にしては珍しく減点。こういう時代遅れならまだしも、なんか履き違えた店って一番困るのだ。
 2001/02/14(Wed)  おやじの真髄!立ち呑み屋潜入記! at 渋谷

やはりおやじ好きと称するならば(称してたっけか、いまいち記憶が)、 真のおやじの姿、しかと見極めねばならぬ。 此亦修行也(嘘)。
というわけで、上司に誘われ「今度こそ!」と行ってきました立ち呑み屋!

決行は定時後、速やかに行われた。
渋谷の小さな店が立ち並ぶところ、見落としそうな小さな地下への入り口を降りる。 味も素っ気もない狭いコンクリの階段の、その下には・・・
オオ!なんたることぞ、このような店があろうとは!
田町で立ち呑みの店は見たことがあるが、それはほぼ屋外になっているもので、もっと明るくカジュアルな 感じさえしたのだが、この店は!

店内は思ったより広く、20畳ほどはあろうかという長方形のスペース。その中央部分が厨房兼会計所になっており、 そこを取り囲むように細いカウンターが巡らされている。それはまんま部屋自体を縮小して枠取りしたかの ように四角く繋っており、壁に申し訳なさ程度に荷物置き用のテーブルが張り付いてるといった具合。
何より画期的(というように若造の私には感じられた)であるのは、前もって一定額を客がカウンターに 出しておくこと。頼んだものの値段分、そこから店主が差し引いてゆくのだ。確かにこれは明朗会計、足が 出ることもない。うーむ、なんて合理的な。これだと会計で「ええ、嘘?!」ってこともない訳だ。私はひたすら感心しているのみであった。
上司は「他では見たことのない真のおやじが見られる」というので、密かに期待していたのだが、割と普通の 人ばかりであった。が、よく考えればここは渋谷。貧乏人の来ない街である。そらそうだ。 かえって東京の庶民的な町で暮らしてたときに見たおやじの方がとんでもなく荒みまくっており、「ふ・・・ まだまだこの程度じゃあ・・・」と心の中で思う高那津。別に威張るこっちゃないんだがそこは。

とにかくおやじ飲みなため、最初からコップで冷や。ぬるい日本酒がなみなみと注がれる。
つまむものは先輩と上司に任せる。にしても、妻帯者の上司2名はいいとして、30前の独身の先輩(男)と 一応20代独身の私が2月14日の仕事終わりにこんなところで酒飲んでていいもんだろうか。 もう少しやることは・・・あったら飲んでねえか。
マヨネーズで味付けしたスパゲティサラダ(間違ってもパスタサラダじゃない)、 こんがりしたハムカツ(ハムを揚げただけのもの。でも旨い!)、 あなご天、細く切ったイカの天麩羅(いずれも衣が白くてふやふやしてる) ハムとチーズの盛り合わせ(ハムのうちの1種類が旨かった)を4人でつつきつつ、 私は2杯目からついつい濁り酒に。「ちー、この酒飲みは」と言われたが、 あったら頼まずにはいられない私なのであった。昔から好きなのだ。
全員3杯の酒を1時間足らずで 消費。しかも空きっ腹にあまり食い物を入れずに飲んでたので、かなり私は酔ってしまった。
それにしても多分全員均等割りしても2000円掛かってないんじゃないかなあ・・・ うーむ、凄い、というか、意外に旨かったのが驚きな立ち呑み屋でした。 まあ流石に個人的に来る気にはなれないけど。
 2001/02/08(Thu)  魚魚魚!魚尽くし攻撃バー at 淡島/ま

「そ」の次は「ま」で、二つあわせると「ソーマ(神の酒)」かい、と突っ込みたくなるような ラインナップであるが、私も思わず突っ込んでしまった。偶然なのか、本当に系列店なのか。 場所的に「そ」と近い地区にあるのでひょっとすると系列店なのかもしれない。

実はこのバー、毎朝毎晩その前を通る。オープンする前の工事中も通ったりした。 というわけで、見た目には馴染み深いのだが、足を踏み入れたことのない店なのであった。 看板にユニークな魚の絵が描かれているとおり、魚料理を主体とするダイニング・バーらしい。 メニューを見ても、魚を刺身にしたり焼いたり煮付けたり・・・とにかく魚魚といった感じである。

店内は1Fと、その脇を階段で上がり、2F。あまり広くはない。
1Fのカウンターに案内される。店の内装やカウンターの奥行きといい、兄ちゃんが悉くTシャツ着ている のといい、どうにも「そ」に似ている。ということはチャージ代ありか、と覚悟。
焼き魚が食べたくて入ったのだが、東京で魚を食べるということの難しさを知る。ここは多分普通より高いせいだから 余計感じるのだが。そういう地区なんだよなあ、そもそも。
諦めて焼き魚は銀鱈(\850!!)、いくらのおにぎり(\280)、ぬた(\400)、グラスビール(\450)を頼む。

ビールが来て、やはりお通しが。
魚専門のバーと銘打つだけあり、お通しもそれなり。
ひとつは白身魚のすり身で作った海老団子。一口大よりは大きく、関西風なのか、薄いだし醤油で煮付けてある。 味は少し塩味をきつめにしてあるが、驚いたのは、竹の子(いわゆる細い竹の子)のぶつ切りが練り合わせて あったこと。これは楽しい食感だった。
それから美味しい!と思ったのがもう1種のお通し。マグロの細切れに、長ネギと白ゴマをを加え、うっすら赤味噌で 和えてある。となりに焼き海苔があって「これで包んでください」と言われたが、勿体なくて、そのまま食べてしまった。 ネギだけではなく、オクラの種部分のような食感がしたのだが・・・?気のせいなのだろうか。これは本当に美味しかった。

「夜の片隅で」を読みつつ、しばらくそれらを突っついていると、なんかもうそれだけで充分、という気になってしまい、 あまり食べる気がしなくなったなあ・・・と思ったところにぬた登場。
一人前じゃないので、ぬたも量が多い。が、何より「あれ?」と思ったのは、わけぎになにかブロック状のものが2種類 混ざっていること。食べてみるとイカとメカジキあたり(魚には無知なのだ、失礼!)らしい。お通しで既に魚魚気分を 味わった人間としては、ぬたくらいあっさりわけぎだけにして欲しいところ。少し辛子が強めで、ぬたとしては甘味も強め。
苦労してたらば、今度はいくらのおにぎりがやって来る。
私はいくらのおにぎりが大好きで、かつてミニストップで見かけた以外、ほぼ商品化されていないのを残念に思ったくらいだ。 他にもここはジャコだのバリエーションに富んでいて、またおにぎりがホントにでかい。しかも自分で海苔を被せるらしく、 私はにやりとしながらほかほかのおにぎりに海苔を被せ、しばらく放っておく。おにぎりの海苔は、パリパリするものより、 蒸気を吸ってしっとりした方が今の私の好みに合うのだ。いわゆる母親の作ってくれたおにぎりの感触なのだなあ。
だが、でかいので「多いなあ、食いきれるかなー」と、またもや前日のような心配をしていたら、真打、焼き魚登場。
見た目、実に美味しそう。表面にだけ薄く味噌ダレを伸ばしたのだろう、そこだけにしっかりと焼き色がついて、白い身を 引き立てている。手前には甘い大根おろしにオクラのピクルスが添えられ、脇にシャリシャリした大根の甘酢漬けが添えられている。このカット方法がまた爽やかだ。なるほど、このさっぱりさは焼き魚に合う。
銀鱈、オススメだけあって、ちゃんと脂が乗っており、冷たく冷やした大根おろしと、ほかほかの鱈を合わせると、本当に 美味しい。大根おろしがなければ脂の乗った切り身は辛かったかもしれないが、脂が大根おろしのさっぱりさにうまく 溶かされ、食が進む。上の味噌ダレも本当に焼き色をつけた程度のもので、魚の味そのものには影響していないので、 本当に銀鱈の味が食べれる。他の2品そっちのけでそればかりぱくぱく食べてしまった。
と、気づくと、いくらのおにぎりと、魚の和えられたぬたが残っている。おにぎりは残したくないので食べたが、 ぬたの魚はなあ・・・もうこれ以上魚はいいよ、という感じなので、わけぎだけ食べ、ビールを飲む。

家に帰り、電話で母にその話をしたら、「あたしも魚は(食事のうちの)一品だけでいい」と言う。 そのとおり、その一品が美味しいからこそ「美味しい食事」になるのであって、専門店を目指したからって ぬたにまで魚を入れちゃあいけない。普通は酒を飲みつつ頼むので気にならないのだろうが・・・でもやはり、ぬたに 入っているのはどうかと思うのよ、「ま」・・・。魚は本当に美味しかったのだけど。
 2001/02/07(Wed)  頼むよ、おやっちゃん!菜館 at 松見坂

さて、この帰り道にある店。とても小さな店なのだが、人が絶えぬ店で、 ひそかに気になっていたのだ。昨日はここが休みだったので、早速今日入ってみるのだ!

と、意を決して入る。ほんとに狭い店で、8人用のカウンターもほんとにギリギリ。辛うじて 奥に4人がけの座卓が2つ入った座敷があるのみ。
客層を見ると、ここ近所の人や、学生、常連さん。ホントに中華屋、ってカンジだ。
天津丼(\700)と、気になっていた水餃子(\500)を頼む。隣の兄ちゃんが食ってた皿の大きさを見るに 「食いきれないかも・・・」と気弱になるが、もう来ないかもしれないので、後悔のない選択を、と それにした。 それからぼーっと本を読みつつ来るのを待っていると・・・。
のどにつんと刺激がして、つい咳き込む。なにか匂いの強い調味料でも開封したのだろうか? 気のせいか、と思いつつ、喉がどうにも咳き込みたがる。我慢していると、店のあちこちで 遠慮がちな咳がちらほらと・・・あれれれ?ひょっとして、煙い・・・?
どうやら狭い店で、換気扇ひとつなのになにかを炒めすぎてしまったらしい。5分ほど、皆交替で 咳き込んだ。おやっちゃーん、頼むぜオイ、と思ってカウンターのおやっちゃんを見ると平気な顔。 うーむ、ひょっとしていつものこと?はあ、流石は中華屋、なんかチガウ。

天津丼!・・・というの、実は得意ではないのだが、頭の中では違うものを想定してしまったらしく、 間違って頼んでしまった。
大きな皿いっぱいに、たまご色のきれいな皮が広がり、とろりとした濃い飴色のタレが皮膜のように 玉子をコーティングしている。タレが濁っておらず、下が透けているのがまた美味しそう。 上品とはかけ離れた店だというのに、その皿の上だけ、非常に高貴な感じがする。これはホントにうまいかも しれない、と思わせるのは、流石実力者、といった感じか。

食べてみる。皮はぼってりもせず、さりとて薄すぎもせず、タレに馴染んで切り分けやすい。 口に入れると・・・私が天津丼を苦手だとするのは、そのタレの甘いところなのであったが・・・確かにタレには 甘さがある、が、それがまったくしつこさを与えず、最小限に抑えられ、代わりにいつもは甘さで死んでいる 他の味の要素がはっきりと出てきているのだ。それがまた、少しだけ味をつけられた玉子と馴染むのだ。
高那津、むしゃむしゃ食べる。得意でなかったのは、やはり味が合わなかったせいなのだ。 まったくしつこさがなく、がんがん食べれてしまう。やはりここは第一印象のとおり、本当に美味しいのだ。

がつがつ天津丼を食べる私の許に、水餃子が届く。
ふと、我に返る。は、で、でかい・・・・・・。
中華屋としてはさして大きいわけではないが、決して小さくはない椀の中に、びっちりと(一部先が飛び出て) 7個分の水餃子が詰まっているのである。そのひとつひとつも、小さくはない。皮の厚い餃子が大変窮屈そうに 椀に詰まっているのを見るのは、空腹ならば武者震いするところであるが、既に私は天津丼をかなりのところ平らげて しまっていし、その量は、かなり胃を侵食しているのである。

「・・・ふ、こうなるってわかってたじゃないの高那津・・・。しっかり食うのよ、ファイト!」

私は8割程平らげていた天津丼を後ろに寄せ、その水餃子に取り組む。
まず、下順部として酢、醤油、ラー油を取り皿にたっぷりと。それから餃子のスープを飲んでみる。多分 餃子からの味がほんのり。ネギが少し乗っていて、香味づけらしい。
餃子をひとつ掴む。でかい。半分に割って食べる。身は繋ぎの少ない肉がほぼ、の身で、半分に割っても中身が崩れない。 そのまま食べてみる。肉のしつこさはなく、あっさりとほぼ味がついていない、素の味の餃子だ。 タレに浸して食べてみる。が、どういうわけか、たっぷりと取った筈の調味料があまりきいていない。 私の舌が塩味不足で、味を感じないようになってるのだろうか? 一生懸命タレをつけて食べてみるが、なかなかタレの味がしない。あれ、なんでー?
腹がそろそろレッドライトを点滅させているけど、一生懸命食べてみる。が、ラー油の味はするものの、なかなか 醤油や酢の味がしない。なんでだよ、なんでだよう。

結局謎に突き動かされ、大容量の水餃子7個、天津丼を平らげたことになった。 平らげてから気づいたのだけれど、あのでかいのを7個平らげられたのは、餃子にしつこい味がついてなかったせいなのね。 なるほどー、それであんなに味がなかったのかしらん、と妙に納得。

とはいえ、本当に腹が食いすぎで苦しい。ここのところ久々の感覚。
やはり中華屋、侮るなかれ。思えば1200円でよくぞまあ食ったものよ。ご馳走さんでした。
 2001/02/06(Tue)  印象的ゴマ配置 at 目黒/そ

引越しして行動範囲内が変わる前に、気になった店に入ってみよう、ということで 足を踏み入れてみたいわゆる「無国籍風ダイニングバー」。
どの駅からも半端な距離にあるため、おそらくチャリかバスじゃないと来れない。 一人だったが、「ごはんセット」があったので、食事のため、ということで 入ってみる。

店内の内装は、和をベースに、アジアをミックスしたような感じ。
カジュアルだが、木で構成された店内は照明も絞られ、総じて落ち着いた雰囲気。
一人だったのでカウンター席に。カウンターの向こうでは兄ちゃんが料理しているが、 そのカウンターの奥行きがかなりあるため、まったく気にならない。

お通し。
どうやら後で料金の段になって気づいたが、ここはチャージ料がかかるらしい。おそらくは500円程度。 なので、お通しもよろしい。別に要らなかったけどな・・・。
お通しは2種。渋い和食器に蓮根と鶏腿肉のうす味の煮付け、それからじゃがいもにトマトベースの挽肉あんが かかったものが出される。蓮根と鶏腿肉の煮付け、本当に味が薄く、素材の色もほぼ自然のまま。上には少し 炒りゴマが掛けてあり、ぼんやりとした味に香味をプラスしているのがよい。

この日頼んだのは肉豆腐(\600)のごはんセット(\300)。飲み物は何故か温かい緑茶(\400)があり、それを頼んだ。 暖かい緑茶は茶碗2杯分、予め淹れておいたのを片口に入れてある。かわいい。そして胃の調子が悪く、 寒い冬には本当に有難いソフトドリンク。和風アレンジ要素を意識してだろうか。目黒の土地柄も関係するのだろうか?

緑茶を飲みつつ「H」なんぞを読んでると、ごはんセットと肉豆腐が届く。 まず、量が思ったよりある。肉豆腐の入っている土鍋が意外にデカいのだ。直径15センチはあった。 それに大きめの茶碗にご飯、味噌汁がついてくる。さっきのお通しも残ってる。
肉豆腐の鍋の色がキナリで、蛍焼きっぽい皿が敷いてあったりして面白い。七味唐辛子がちゃんと青い陶器の七味入れに入って 竹の匙で掬うようになっている。流石チャージ料をとる店は細かいところに気をつけている。こういうのがあると 七味入れるのも楽しいのだ。
肉豆腐は濃い甘の味付け。なんだけど、長ねぎの青い部分が、ほぼ生の状態でかなり上にのっけられていたので、 その辛味を少し浸して一緒に食べる。量が多いので単調になりかねないが、このねぎの量の加減で割と変化を つけれるので、これも配慮なのかもしれない。 味噌汁はごく普通の豆腐とネギのもの。普通すぎて忘れた・・・。

で、私がこの日、一番「おっ!」と思ったのは。

ご飯。ご飯なのである。別に玄米だとか麦だとかそういうものでもなく、変わりご飯ってわけでもない。 なんの変哲もない白米を茶碗によそっているだけなのだが。
大振りの茶碗に、無造作によそられたご飯の上、ふと目を惹くように白い炒りゴマがぱらぱらと掛けられているのだ。
私は感動した。白米にゴマだなんて、別に大したことじゃあない。が、敢えてそのひと工夫、ほんの少し白米に香るゴマの味、 それを「ほんのちょっと」やってしまったりするとは。うぬぬぬぬ、しかも黒ゴマではなく、白い炒りゴマ。 味が沈む方ではなく、香り高いアクセントとして使用される方を、ごはんセットの白米に掛けてみせるとは。

なんで自分でもこんなに感動してるか知らないが、・・・とにかくその日、私はそこに感動してしまったのである。 白炒りゴマ好きなんスよ俺・・・。
・・・・・・やるじゃねえか、「そ」。チャージ料が相当余計だけどよ(爆)。
 2001/02/05(Mon)  アフタヌーンな昼食 <移転>

どうにも一昨日からスコーンづいていて、今日は昼にパスタを食べたかったのだが、 パスタ専門店ではなく紅茶専門店の方のランチを。そしてスコーンを頼んでみた。
パスタ(\800〜)にパン(\80)で、ここはランチにその日の紅茶がついてくる。
紅茶はキームンで、スコーンを食べるのには勿体無いが、どうしてもここのスコーンを 試したくなり、とにかく頼んでみる。\300也。

頼んだパスタはボロネーゼ。ここはともすれば紅茶好きの女性が集まる店なので、いわゆる そういった方の舌に合うお味。「今日は猛烈にトマトソースが食いたいぜ!」なんて日に ここでメシを食おうとしてはいけない。向かいのパスタ屋に行ってくれ。
ここはパンにも拘りのある店らしく、おそらくはいい小麦を使うことを誇りに作っているのだろう、 しっかりと小麦の味のするパンだ。焼き色が濃いので一見固いごすごすしたパンのように見えるが、じつはかなり もっちり感の強いもの。皮が固いのもあるが身がしっかりし過ぎててちょっと千切るのに手間取る。 固いごすごすパンの方が楽だなあ・・・水さえあれば(爆)。

さて、食後のキームンもやってきて、腹もまだ空きがあり、ナイスナイス。
ここのセットの紅茶は、なんとティーバッグ(上質の)ではあるものの、きちんとカップ2杯分がポットで供される。 ご丁寧に砂時計までついてきて、紅茶初心者でもOK、という配慮。さすがセミナーを開く専門店である。
スコーンは中くらいより少し小さめのものが2つ。紅茶の葉が練りこんであるようだ。 小さな容器に生クリームとブルーベリージャムがたっぷり添えられて出てくる。食べやすいようにそれぞれ包丁が入れて あるのが嬉しい。さて、食べてみる。
ここはパンでも書いたように、小麦粉に自信があるらしい。というわけで、かなり粉の味わいの強いスコーンとなっており、 食感も細かくほっくりしたものになっている。粉味を弱めるために生クリームを均一に伸ばし、滑らかな水分を与える。 その上にたっぷりとジャムを。ここのスコーンはジャムをケチってはいけない。スコーン自体の焼き味を強調せず、あくまで 上のジャムを含め全体的に楽しむためのスコーン。これはこれで珍しい。
私としてはもっと焼き味等の強い味のスコーンが好きなのだけれど、これは後味に食べてる最中には気づかなかった 粉自体の味が甘く残り、それが特徴的。上質の粉を使っていると、こういうこともあるのだなあ。

それにしてもクロテッドクリームで出すとこってなかなか当たらないものだ。
まあ今日のスコーンは明らかに生クリーム用のスコーンだったけれど。
 2001/01/31(Wed)  ハンバーグ総論 at 東京

そういえばふと食べたくなる味、というのがあって、どうしてか私の場合、 必ずといっていいほどその殆どがハンバーグなのである。
ハンバーグなんてどこも同じじゃないか、と仰る方もおられるだろうが、これがまた、 食べ歩いてみると、なかなか各店において個性があったり、またいかにも出来合いの 店を出たら忘れそうな味だったりと様々。 昨日またしても夕食にハンバーグなんぞを食べてしまったので、今回はハンバーグについて。

*懐古調ハンバーグ  渋谷
この店ははあの「恋歌横丁」の一角にある洋食屋。カフェでもあるらしいんだけど…?
内装の古い垢抜けなさが、いかにも「洋食屋!」というカンジで、懐かしい空間に入ってしまった、 というような気分にさせられるところからまずスタート。
ハンバーグセットは880円。小さなボールに入ったレタスにフレンチドレッシングをかけたものがまず あらわれ、それからコンソメスープ、の順。
メインは鉄板に乗ってライスと共に登場。鉄板に乗っているハンバーグは平たいものではなく、 みっちり詰まってそうな丸々とした形状のもの。やや小さめだが、この詰まり様だとこれで充分かもしれない。 付け合せは炒めたモヤシ、ミックスベジタブル。ハンバーグのソースはいかにも洋食屋らしいデミグラスソースがベース のもので、たっぷり掛かっているので付け合せにも使えるのがいい。
ハンバーグは弾力型とクレーター型(今命名した)があるが、こっちは弾力型。固すぎず、かといって崩れもせず、 それをソースにつけて食べると、いかにも洋食屋で食事をしている気分になる。ソースも美味しい。流石は渋谷一等地で 店を構えているだけあります。嬉しいですな。

*偽荒くれ者風ハンバーグ  下北沢
下北沢の貧乏学生・フリーターにはとかく好評、カウボーイ風ステーキハウス。
メインはステーキだが、ハンバーグセットだけが奇妙に650円と安いのがとっても嬉しい。
まずは小さなガラス鉢にキャベツ千切り、コーンにフレンチドレッシングの小サラダが登場。
ほぼ間を空けず、ジュウジュウ焼けた鉄板登場。いつ見てもここの鉄板は麗しくジュウジュウ焼けててステーキハウス的に OK!食欲ボルテージが上がる。ここは平たく肉の隙間を作ってあるクレーター型の、割と崩れやすい方のハンバーグ。デミグラスがベースのソースだが、 洋食屋的な凝った味ではなく、あっさりと大味に作っているところがそのクレーター加減に丁度良く馴染み、日本のアメリカン! 的な味。重くはないのでいくらでも食えるようなカンジ。ハンバーグ、大もあるのだ…でかいのだ…一度食ってみようかしらん。 余談だが、通い始めの頃、ここのライスが地球上のものとも思えない不思議な炊き加減というか食感で、悪食な私はいたく感動し、ここに通い詰めることを決意したのだが、今は普通のライスになってしまった。あのどうやって炊いたのか予想もつかない不思議な食物が貴重で良かったのに…惜しいことしやがって…大衆に迎合したな(←当り前だっつの)。残念極まりない。
この付け合せはコーンだが、これもよく焼けてて舌火傷しそうなところがいい。なんかここはあまりに最初現れた時の鉄板のジュウジュウさ加減が凄いので、冷める前にと一生懸命食べたりしてしまう。一生懸命食べた後には、ボロボロのホーローの小さなカップでアメリカンコーヒーが出されて、「ふー、今日も軽快に一生懸命食べちまったぜ」とどっかり椅子に腰掛け、ついコーヒーを味わってしまいたい気分にさせられる。
まったく金がかかっていないのに、なんかステキな気分にさせられてしまうのは、「安いところで気取らないけどちょっとうまいハンバーグを食ったぜ」と思わせてくれるからに違いない。米かわっちゃっても、やっぱ好き。

*おやじさんありがとう!俺の一番ハンバーグ  下北沢
下北沢に多い小さな洋食屋のひとつ。なんだけど、ここの一番ステキなところは、この店主のおやじさんが とにかく働きモンなこと!小さなキッチンでいっきにいくつもの鍋の具合を見たりその隙に盛り付けたり。 店員さんも若くてくるくるよく働く。高那津は怠け者な分、働き者な人が大好きなので、明るくくるくる働く店員さんと 手が2本だとは到底思えないくらい働くおやじのいる店は、それだけで美味である。
だからってわけじゃなく、ここは本当に庶民的にうまい。「美味しい」んじゃなくて、まさに「うまい」んである。
まず、ここのステキなところ。煮てワカメが溶けてしまったくらいの味噌汁が必ずつく。外食に慣れると、これがホントに ホッとする味なのだ。それからライス。どんぶりで出る。もう庶民感情バリバリだ(ナニそれ)。
ハンバーグは直前まですぐそこのキッチンでおやじさんがジュウジュウ焼いているので、そのまま洋皿に盛り付けられる。 洋皿には既にこんもりとキャベツ千切りとトマトのスライスががサウザンアイランドドレッシングをかけられ、スパゲッティが 山盛りで待機しており、そこにおやじさんができたばかりのハンバーグをよいっと乗っけてソースをかけるのだ。 無論、焼いた時の肉汁もきちんと使用!泣かせるぜ、おやじさん!
ここのソースが、私は本当に好き。デミグラスベースのソースも無論凄く食べたくなるくらい好きなのだが、ここは違う。 味が(おそらく)チキンをベースにトマトの旨みを生かしたようなコクを抜いた軽いソースで、それが大きくてぼろぼろ崩れるクレーター型のハンバーグに本当に合う。そのうえ、半熟の(嫌いな方、失礼)目玉焼きがひとつ乗っかっていて、そのとろりとした黄身の味と共に食したりするのも、庶民派ハンバーグならでは。
スパゲッティはバターと塩のみで味付けられてるので、このオレンジ色のソースをつけて食べるのがホントに楽しい。
上質とかなんとか、もうそんなのはどうでもいいのだ。働きモンのおやじさんが確信込めて作った、味噌汁にも合う、重くなくて がつがつ食べちゃうハンバーグ。もう、大好きだ。私のナンバーワンなのだ!ありがとうおやじさん、また行くよ!
 2000/12/20(Wed)  なくなったふわふわ卵と新参者おさかなマリネの関係 at 渋谷

さて。
おひるごはんの話をしよう。私はとっさにとある限定された食感、味の限定されたものだけを ひたすらに食べたくなるという習癖があるのだが、それは無論お昼休み前15分くらいから起こったりする。 起こらない日もあるが、起こった日は、そのことを延々考え、それを食べれそうな店に足を運ぶのだ。

ある日、私は卵が食べたくなったとする。あまり甘くとか辛くとか味がつきすぎていない、卵本来の味のする ふ〜わふわっ、としたたまごいろのほかほかしたやつ。例えていうならそれこそ「ふ〜んわりして、ほっかほかの」 という、『王様のたまごやき』のような卵料理。何にも代えがたい食感であり、色である。食べたい。

こういうとき、自分の行く店のリストをまず頭の中から検索する。私のDBでは近所でそれが可能な店が一軒。 イートインもできる田園調布本店のお惣菜・お弁当屋さんである。ここの550円チキンオムライス丼のたまごは まさにチキンライスの上に、うす黄色い雲のようにふわふわと乗っかって手を伸ばさずにはいられない。 やわらかさといい、味付けの適度な薄さといい、口の中での感触といい、大変喜ばしいたまごやきなのだ。 だから、ふわふわたまごやき=田園調布ぴえーるのオムライス丼!という保証が私にはあったのである。

とある日、やはり私はそこに入った。そして習慣のようにオムライス丼を頼み、イートインのスペースに向かった。 ら。
前は単に注文したのを暖めてくれて、味噌汁をカップ一杯、あとは漬物を自由に、というスタイルだったのが、 漬物の他に味噌汁が自由にお替わりできるようになり、更に魚のマリネが!  わーい、と魚好きなのに魚とめっきり縁がなくなった私はそれを意地汚く取りにゆく。魚が割と重めの味なのを 野菜とあっさり薄味ドレッシングで軽く味をつけ、レモンで仕上げているのが大変美味しい。2回目までとりに いってしまうくらいおいしかった。味噌汁も入れてくれるカップが小さく物足りなかったので、お替わりは本当に嬉しい。
さて、私は本題のオムライス丼のふたを開けた。・・・が・・・?
あれれ? 何かが違う。
あ、前はなかったケチャップが赤々とたまごいろの上にのせてある。
あれ? なんでいきなりケチャップなんて・・・そして私は気づいた。
・・・あれ、このたまご、ふわふわしてない・・・。
以前は覆い尽くさんばかりにふわふわふわふわと容器の上を占領していたふわふわたまごが、いきなり 普通のオムライスの皮みたいになって「どうだ!肉厚たまご焼きなんだぜ!」とどっしり主張している。 その変わり果てたたまご色の物体には、かつてのふわふわさの面影はどこにもない。 私はショックを受けた。たまごがふわふわしてない・・・ふわふわたまごじゃない・・・どうしよう・・・。

そもそもこの店に通うようになったきっかけ自体がふわふわたまごのお陰なのである。 お惣菜は多々あるが、たまごがあんなにふわっとしているものはそのお弁当しかなかったのだ。そのたまごが。
マリネが自由に無料でついてくるのは嬉しい。美味しかった。味噌汁だって好きだ。でも。
私が最も必要とし、愛していたあのふわふわたまごは・・・?

なにか私にはあのふわふわたまごの存在とは引き換えに、そのマリネと味噌汁がやってきたようにしか思えないのだ。 そんなの単なる思い込み、っていったところで、わたしがあのたまごを愛していた以上、私にとっては変わりないのだ。 定番メニューの作り方を変えるからには、お店だってまたふわふわたまごには戻してくれないだろう。ということは、 私は次にまたふわふわたまごを食べたくなった場合、いったいぜんたいどこに行けばいいの?

愚かと笑うことなかれ。
都心でふわふわたまご料理を探すことくらい、随分と骨を折ることもないのだ。
 2000/12/某日(Thu)  責任とってくれフィナンシェ at 渋谷/Ma Meison

なんの責任とれか、というと、それを食べるまで平気で食ってた適当なフィナンシェが食えなくなってしまった 責任である。というか、そのくらい凄いのである、このフィナンシェ。

実はここ、渋谷で近辺で本好きの人だったらそれを売ってる喫茶店くらいは目にしただろう、という ような店で売っているもの。とある渋谷の大型書店の一階に併設された喫茶店のものなのだ(バレバレ)。
ここは茶はともかく(ひでっ、気合入れてるのに!)その菓子が実は結構秀逸かという店で、 やたら高いこだわりの茶葉より、菓子を買って帰った方が幸福度は上、という店。
そしてそこのフィナンシェバラ売り1個120円、これがまた、もう偉いくらいにうまい。

実を言うと、私はこれを食べてフィナンシェという焼き菓子に目覚めたのだが、他のフィナンシェを数点 食べてみても、ここのは絶品だと思う。
形は平均的な薄型の長方形。だが、その色の美しさときたら! まったく均一に綺麗なキツネ色に焼いてあるのだ。
端がぴんと固く焼けているのも素晴らしい。口に含んで噛むときに、さくっと歯ごたえを返してくるのが堪らない。 そして口の中に、バターと、それから、卵の味がしっかりするのである。バターを強調する焼き菓子は多いものの、 卵の味がしっかりとするものというのもなかなかない。卵アレルギーの方には戦慄ものだろうが、「王様のオムレツ」以来、卵好き な私(またしても単純)としては、ほんとうに「美味しい!」と思わずにはいられないのである。甘さもしつこくなく、それが卵の風味を より生かしているような気すらする。質のいい味だと思う。
とにかく私の中で、目下絶品のフィナンシェ、それがMa Meisonのフィナンシェなんである。

だから、たまに本屋に足を伸ばした折には、必ず買って帰る・・・と言いたいんだけれど、結構詰め合わせ菓子に補充 されちゃってて、バラのフィナンシェはなかったりするのです。まあね・・・いつでも行けるからこそ悔しくないってとこですか。
 2000/12/06(Wed)  これで決まりだ、しかない「らぷる」! at 弘前/しかない

さて。
私は津軽の民である。いや、正確にはであったと言うべきか。
私は故郷を深く愛しているので、度々帰る。が、その度に困るのが、 津軽を代表する、美味い「お土産」の存在なのだ。

津軽というと、リンゴ、すなわちリンゴ製品なのであるが、元のリンゴは 世界一美味(身贔屓だとも言えまい)だというのに、何故か土産品に加工されたものを 食うと、絶対と言っていいほど美味くない。
リンゴ製品土産で唯一例外なのが、津軽は弘前の老舗、「しかない」のりんご煎餅「こあき」であるが、 これは一枚がボリュームに欠け、結構高いので、皆に配るには適さない。
仕方なく、リンゴ名産地にもかかわらず、リンゴには関係ないラグノオ「茅の茶屋餅」を毎度買って帰っているが、 これも津軽リンゴの地からの土産にしては、いささか淋しい。
つうわけで、前置きが長くなったが、私としては、リンゴを使ったうまくてボリュームのあるお菓子を 実は切望していたのである。

そしてそれは見つかったのだ! 
しかも煎餅のみしか作っていなかった名店「しかない」からの品である!
その名も「らぷる」
直径4センチ、厚さ1センチ程の円いもので、茶色い焼き生地の菓子である。
どうやら、その生地が煎餅の生地らしく、それが煎餅本舗「しかない」の意地と拘りを示しているようだ。 「しかない」の生地は、甘味があっさりとしており、この製品もまた、しつこくはない甘味がほっこりしてなかなかだ。
だが、この品、その素晴らしさとは。
菓子の中央部分に、5ミリ角くらいのリンゴ煮がところどころに結構詰まっているのだが、 そのシャリシャリさ加減ときたら! 実にリンゴをしゃきっと煮たときの、あの感触なのだ。
考えても見て欲しい、普通の焼き菓子を食べたと思っていただけなのに、餡ではなく、シャキシャキ いってるリンゴが入っているのだ! 実に素晴らしいじゃないか?!

とにかく私は唸った。流石私の御贔屓店、「しかない」だけある。
甘味、食感、どれをとっても素晴らしい。うむうむ。
しかも、12個入りで1000円だったら、この質ではリーズナブルではないだろうか。

というわけで、私の次回からの津軽土産は決定した。
ああ、素晴らしい「らぷる」。もう一箱買ってくれば良かった・・・
でも唯一の難点は、箱が若干かさばることなのだよなあ・・・
 2000/11/16(Thu)  安らぎのキャラメル・フレーバー at 渋谷/Cafe

どうやら最近キャラメルが好きらしい。
といっても、森永とかグリコとか、そういうキャラメルそのものではなく(アレも好きだが)、 「キャラメル〜」みたいな、キャラメル風味の食べ物である。
火が点いたのはm-floのBLUTUSカフェ特集についてきたCDで、「キャラメルラテの・・・」 というフレーズがあったせいもあるだろうが(なんて単純な)、多分流行りなのだろう。 そういえば「キャラメル〜」と名のつくものが、最近よく見受けられる。

さて、会社付近で昼休みによく立ち寄るカフェがあり、私はそこで夕食がわりの甘いパンひとつと コーヒーを買っていく。
今日はエスプレッソ・アメリカーノを注文した。受け取ろうとしたとき、ふとレジの手前にひっそり 背の高いビンが並んでいるのに気づく。最近のシアトルコーヒー系で大活躍している、フレーバーと 甘味づけのシロップらしい。
少しどきどきしながらビンのラベルを見ると、果たしてキャラメルの文字が。
やっぱりどきどきしながら「入れていいですか?」と訊く。どうやら自由に使っていいらしい。 早速コーヒーに入れる。スプーン一杯くらいが目安らしいが、よくわからない。少し少なかったかもしれない。

会社に戻って、すぐさま飲んでみる。
テイクアウト用の蓋を外した途端、あの甘いキャラメルの香りが。
飲んでみると、更に熱いコーヒー自体と溶け合って、かなりブラボーなお味。
今日は朝から死にそうに疲れていたのだが、それがふっと和らぐ感じ。
シロップだけどエスプレッソ系の液体にたらしたせいか、甘くなりすぎず、心持ち、って感じのさりげなさが とてもいい。
つくづく最近のシアトルコーヒー系には脱帽。とにかくセンスがいいなあと思う。

この調子だと、多分明日も・・・キャラメルシロップ入りエスプレッソ、ってとこだろうなあ。
 2000/11/10(Fri)  牛肉ソバ at 渋谷

・・・つまりこれは何かというと、私が最もよく出入りする中華料理屋のメニューである。
そこは非常に小さいというか狭い店で、入ってすぐにカウンターがあり、奥には4人がけ テーブルが2つしかないというくらい。ホントに席がぎりぎりで入っているような店だ。
私は働く人が好きなので、そこでくるくるとよく働く元気のいい中国人(だと思う)の きさくなおねーさんが大好きである。一時期毎日のように通っていたので、顔と定番メニューを 覚えられたくらいだ。

さて、牛肉ソバ。
中華ソバの上に私の大好きなチンジャオロースらしきものがのっかっており、見た目 「うーむ、ちょっと迫力なカンジだぜ」っつうくらいに力強い。 今日は隣のおじさんも食っていた。どうやらジャパニーズビジネスマンの食欲をもいたく刺激する 品らしい。
スープは薄味。特徴はないが、ごく普通の味がして、ほっとする。
スープのベース味が薄いので、上にしっかりと濃い味付けをした食い物がのっていても まったく問題はない。むしろ丁度いいくらいの味付け。
麺は特筆すべき特殊な麺ではなくいわゆる普通の中華屋にある普通の麺。
まったくまったく普通づくしだが、「うーん、なんだかうまいなあー」という実感を誘う味。

普通の味がする中華ソバの上に、我々の大好きなチンジャオロース。
オシャレな演出とか、本格派とか、そういうのとは全く無縁の、平凡で単純な発想から出たようなメニュー。 それは平凡で単純な胃を持つ人間にとって、平凡で単純な食欲を満たすために、なんと素晴らしく見えることだろう。

だからこそ、つい通ってしまうおじさんたちで、この小さな店は毎日賑わっているのである。
 2000/11/02(Thu)  ミート/レバーペースト at 渋谷コンビニ

初めてそこで目にしたときは、流石に目を疑ったものだ。
だってレバーペーストやらミートペーストだなんて、日本人には知名度なんて なきに等しくて、おそらくは大概の人は聞いたこともない筈。 せいぜい輸入食材店や、パン屋の片隅にあるかないかといった大変マニアックな代物。 それがよりにもよってコンビニの食材品売り場という、なんとも似つかわしくない場所にいるだなんて。
だが、私は昔ドイツを旅行したときにその存在を知り、以来根強いこいつのファンなのだ。

ミートペースト/レバーペーストというのは、肉もしくはレバーの茹でたものに塩味をつけ、 パン等のスプレッドとして使用するためにペースト状にしたもの。
近年塗るチーズなどといったものが発売されているが、それが肉に代わったものと思えば早い。 肉を食べたいときでも時間もない、だが肉的な味わいが欲しいというときに、少し固めのパンに 塗って食すと、大変滑らかで味わいがある。肉というとしつこいイメージがあるが、寧ろ塗るチーズより はるかにあっさりしている。
レバーペーストのほうも、レバーらしい臭みなど全然なく、レバーが嫌いな人間でも気づかずに食べれそう。 はっきり言って美味しい。

ちなみにこれ、ドイツではバター・ジャムより1階級上のパンのお供。
基本的にレバーペーストの方がミートペーストより主流。泊まった宿屋の朝食にこれがついてくると 家族で密かに奪い合いになっていた記憶がある(笑)

日本ではまだ知名度が低いためほぼ同じ会社のものしか見たことはないが、見つけたらトライして みるべき! ただし柔らかい食パンとかだと美味しさが3割減なのでご注意を。固いドイツパンあたりに よく合うのだ。

なにげに外国人居住者が多い、渋谷近辺ならではの珍しいコンビニ商品であった。
 2000/10/26(Thu)  英国労働者風ミルクティー at 仕事中

さて、ご多分に洩れず、私は紅茶が好きだ。
まあ、こんなコンテンツをわざわざ作るくらいなんだから、コーヒーか紅茶のどちらかは 好きに違いないだろうが、どのくらいかというと、会社に自前のティーポット、リーフ2種、ティーバッグ2種を 持ち込んでいるといった具合。

さて、「英国風」ならともかく、どうして「労働者」がつくのかというと、 とある本で「英国の労働者階級の紅茶の飲み方は、大きなマグにたっぷりと熱いミルクティー云々・・・」という くだりを読んだからである。どうですか、そそるじゃあありませんか!

じゃあ、大雑把にマグで、しかも安易に、ということで、牛乳なんて常備できない会社では コーヒー用のミルクだろう、それからリーフは買い置きのウバを出すとして、普段は入れないけど 砂糖なんて入れてみよう。
マグにいっぱいに濃く出したセイロンウバに、コーヒー用のミルクパック2個、その独特の臭みを 消すために角砂糖を一個、と入れる。マグなのでミルクは2個くらい必要だ。じゃないとミルクティーの面白味がない。
砂糖の量だが、私は本来砂糖を入れるのが苦手なのだが、これはミルクがコーヒー用のものなので、砂糖の量が多いくらいで ベスト。
香りはやはりクリープくさいが、「労働者風」と思えばそれもまたなかなかだ。

何より、牛乳を買ったりとか面倒なことをしなくても、職場で気軽にミルクティーが飲める、というのが これの大きな魅力。
寒くなるこれからは、少ししつこいくらいのこのミルクティーも結構オススメかもしれない。
 2000/10/22(Sun)  麗しのランチボックス at 池袋

さて、実はこれ、J-Gardenという、知る人ぞ知るイベントの開場にて 販売されたランチボックス。要は特製お弁当のようなものなのだ。
女性向けのイベントのせいか、アトリエ・ド・ラテという池袋の洋菓子屋さんが 作ってくれている。それだけあって、ランチボックスや飲み物の他にもタルト、モンブラン、エクレア等が 販売されていて、奇妙に優雅であった。

さて、その内容。
ランチボックスは750円。コーヒー・紅茶込みでサンドイッチ、キッシュ(!)、デザートの3点が紙箱に 詰められていて、サランラップとかプラスチック容器の影もないところがいい。
イベンターならおわかりかと思うが、通常イベントの日は朝も食わず、昼もそういやいつ何を食べたか 記憶にないことが多いくらい昼の食事に関しては荒んでいる。しかし、このような箱に詰まっていると いつものイベント色が和らぐような心持ちがして大変よい(爆)。

まずはサンドイッチ。
食パンではなくフランスパンがパン地で、それにキュウリスライス、レタス、チーズ、 ハム、トマトスライス、それからタマゴサラダが挟んである。
まず驚くべきはその生き生きとした色彩!
ああ、いつも会場で売ってるサンドイッチのレタスなんて萎びていたというのに、 このぱりっと先までハリのあるレタスといったら! 他の食材も瑞々しく美しい。 とてもイベント会場でお目にかかれるものだとは思えないくらいだ。 (いつもお世話になってるお弁当屋さん、すんません・・・これでも感謝してます) タマゴサラダや食材のみで味つけてあるお陰か、あっさり薄味。徹夜明けの胃にはさぞかし嬉しいに違いない。
それからキッシュ。食べたかったー、これ。
どうやらカボチャ、鶏肉等が中心になっているキッシュらしく、 ほのかに甘く、しかしちゃんと食べ物の味のあるキッシュで、際の焼き具合も程よい固さ。文句なし!
デザートは直径7センチくらいの丸い容器に入ったチョコレートムース。
上にムース、間にスポンジが挟まり、下はチョコクリームらしい(詳しくないので全く判らんが)。 割と甘かったが、ほろ苦いココアパウダーが表面にかけてあったので、完食。デザート付っていいねえ。
ああ、とにかく・・・温かいコーヒーで締めくくり、ランチはつつがなく終わったのであった。

俺に幸せをありがとう・・・ランチボックス。
 2000/10/19(Thu)  台湾的チープフード:ひげ張丼 at 渋谷(2001/11/19閉店)

昨日の台湾屋台料理の店から割と近くにある、これまた台湾屋台フードの店。 チェーン店なのかはいまいちよく判らない。

ここのウリは魯肉飯というご飯に挽肉煮なんかをのっけたいかにもな一品。 この魯肉とやら、大きめの粒で、しかもとろっと肉自体の脂も旨みになっていて、 ジャンクフード好きの私には丁度いいとろみのある挽肉煮である。 それがご飯の上で・・・ああうっとり。が、会社の先輩は「まずいよ」と一蹴した。 俺が悪食だからか?その人が貧乏舌じゃないからか?!

さておき、昼はそれをメインに丼物がある。どんぶりに魯肉飯、トッピングとして 煮卵、青菜、もやし、牛すね肉の煮込みがのっている。青菜がキレイな色をしてるので、 食欲をそそってくれる。もやし、青菜ともに味をほぼつけずにさらっと炒めてあるので、 味の濃い肉煮込みと良く合う。肉煮込みに生姜の千切りはナイスだ。
セットでソフトドリンクが頼めるが、賢明な方ならば、小スープを頼まれたい。 これほどあっさりとした野菜スープはなかなか ジャンクフード系ではお目にかかれないぞ。人参と大根がふたかけらずつ入ってるだけだが、 ちゃんと大根の味がするスープなのだ。外食ではかなり貴重とみた。

ジャンクフードが割と好きならジャンクフード的満足は得られる、と思うが・・・。
 2000/10/18(Wed)  驚きの牛肉湯麺 at 渋谷

掲示板に出入りさせて戴いてる方が「台湾屋台料理っていいとこあります?」と 仰っていたので、行ってみた会社近所の店にて。

とりあえず一番安いのを食べてみる。450円に小ライス付。安い。
麺はどれにも細麺、太麺があり、太麺はほうとうのように凄いと聞いて いたので、とりあえず細麺。それも2種類あるらしいがよく判らない。
少し待つ。値段に見合ったしょぼいのが出てくるかとおもいきや。

まずはスープ。牛肉からとったもので、色が異様に濃いので、かなりの 不安を抱かせる・・・のに、味はあっさりとしていて、だしがとれている。 かなり塩味もまろやかである(とぼけてるとも言うが)。
麺は黄色っぽい半透明のつるつる麺。細麺とはいってもかなり平べったい 麺である。不揃いな太さなのがいかにもだ。本中華が好きな人(オイ)にはオススメ。
具材は白髪ネギ、高菜、チンゲン菜。香菜が別の皿で自由に入れられるのが 嫌いな人には嬉しい。高菜で塩味をプラスしている。
総合的にはまあまあ。日本の麺とは大分違うというカンジ。
しかし麺一杯で、侮りがたいボリュームと満腹感。しかもランチタイム、多分季節限定 で黒タピオカ入りのミルクティー(安っぽいが意外にしつこくない) までついてきて、「450円でいいんだよな・・・」と確認すること数回。
とんでもないボリュームと、この値段。

わざわざ足を運んでまで食べるかはかなり好みによるが、近くに行ったら 寄ってもいい店ではある。




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