Sarpadian Empires Vol. III

 

 広大な Havenwood の森に住むElfは森と共存し穏やかな生活を送っていた。彼らは森を生活の場とし、広大なHavenwoodのあちこちに村を作って生活を営んでいた。

 HavenwoodのElfは隔絶した村々に住んでいるにも関わらず、その速やかな行き来によって、あたかも一つの共同体であるかのように行動する事ができた。特に外敵にあたって彼らの結束力は強かった。基本的に彼らは異種族に対して排他的で、許しを得ずに森に踏み込む者に容赦なく攻撃を加えた。

 Elfは軍隊を持つことはないが、ひとたび戦になれば狩人や案内人、そして農夫が驚くほど優秀な戦士となって戦った。エルフの数多の城塞は石工や大工によって建てられたものではなく、生きている森それ自体で形作られている。

 仮に大軍でHavenwoodに攻め込んだとして、所々で茨の壁に突き当たり、何度も進路を変更して森の中をさ迷ううちに、どこからともなく飛んでくる矢に当たって数を減らしていくのが関の山だろう。
 特に恐れられていたのがElfの狩人である。その全てが素晴らしい弓の名手である彼らは音も無く森を走り抜け、獲物と不埒な侵入者を射倒した。彼らはしばしば無害だが深い睡眠を引き起こす薬を矢先に付けた。

 

 気候の変動は森で暮らすElfに深刻な被害を与えた。急激な寒冷化で農作物が枯れ、深刻な食糧不足に陥ったのだ。Elfは代替食料を探すうち、キノコに魔法を掛けて食料としていく事を思い付いた。
 狩人達はわずかに残った獲物でその技術を磨いたが、その他のElfはThallidと名づけられた魔法キノコの養殖に従事した。

 そしてある時。大量の植物を栽培する危険が突然Elf達を襲った。

 Elfは食糧不足を深刻に考えるあまり、一度に大量のThallidを栽培しすぎたのだ。Thallidの幾つかの突然変異種が意識を持ち、Elfの手を離れて成長と繁殖を始めた。

 Elf達は差し迫った食糧事情もあり、この問題を重く見ていなかった。ElfにとってそれらのThallidは「不出来な作物」ではあっても、「敵」ではなかったのだ。

 ElfはThallidを栽培するために腐敗物の巨大な積み重ねを集めたが、単なる模倣なのか深慮からか Thallidは同じ事を行なった。もともと過酷な環境下でも栽培できるよう作られたThallidの数はこの方法で次々と繁殖していき、やがてその数はElfを脅かす程となった。

 ThallidはElfの知らぬ間に繁殖し、その亜種を増やしていった。ここに至り、Elfはようやく自分達が恐ろしい敵を生み出してしまった事に気がついた。

 Thallid に本当に知覚力があるのかどうかは学者の間で議論になった。Elfが今まで敵対してきた肉と骨と理由のある侵略者と異なり、Thallidは敵であるElfの強さと自分達の損失について考えなしで攻撃し、死んでいった。

 しかしElfがどんなにThallidを殺しても逆に彼らの増殖を促すだけであった。Elf にとっては寒さにやられ豊かさを失った森も、森や仲間の死体から直接エネルギーを吸収することができるThallid にとっては豊かな森であった。そのため戦闘の後に戦闘を行う前より多くの Thallid がいる事も希ではなかったという。

 ElfはThallidに対して火による攻撃が効果的である事を知っていた。しかしThallidの恐怖とともに森林火災の恐怖も知るElfは最後までその戦術を選ぶ事はなかった。森での戦いに長けたElfは皮肉にも彼らが生み出し、彼ら以上に森での戦いに適応したThallidと戦い、そしてついに滅んでいった。

 

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