Sarpadian Empires Vol. IV

 

 Crimson Peakに住むDwarf達の帝国は採掘される鉱石や、その加工品の交易で繁栄していた。Dwarfは小柄で頑健な容姿に似合わず手先が器用で、採掘した鉱石を利用した良質の武器等の金属工芸品を作り出した。急峻な地形を利用した彼らの街はまさに要塞であった。

 Dwarf同様、SarpadiaのGoblinも武器を多く作った。例えばGoblin Kiteはグライダーの一種でGoblinを乗せて空を飛び上空から攻撃を行った。無防備な空中からの攻撃は大変効果的であったが、このグライダーは墜落率もまた高かった。不幸なGoblinの手によって敵の目の前に(投げられるのでなく)直接運ばれるGoblin Grenade と呼ばれる爆弾は、一匹のGoblinの命と引き換えに多大な戦果をもたらした。船を使う者もいたが、非常に貧しい船員であるGoblinが目的地に到着する頃には、大抵吐き気を催して戦えない状態であった。

 彼らの作り上げたもので特筆すべきはGoblin War Drumsである。War Drumは巨大クリーチャーの頭蓋骨をもちいて作成され、デザイナーは高い品質の頭を常に捜し求めた。Sea Serpentのそれは大変良い音をだす事は皆が認めたところであったが、もっとも高く評価されていた素材はSerra Angelの頭蓋骨であった。

 WarDrumは芸術的な価値も十分にあったが、戦場で絶え間なく打ち鳴らされるGoblin War Drumsはたいへん遠くまで良く響いた。その低音はGoblinの隠密行動を容易にし、味方の戦意を向上させた。それは最も勇敢な敵の心臓にすら恐怖の2文字を刻み付けた。

 しかしGoblin達の一番の武器はその数である。Goblinはその数が敵にとって絶望的な数となるまで敵の目を避けた地下で子を産みつづけたのだ。一般的に彼らの作り上げた武器は品質が悪く、使用に際して多くの犠牲を払うものも多かったが、それでも戦場でそれらが機能したのはGoblinが常に数の優位を保っていた為である。

 Orcのほとんどは数え切れない戦場を渡り歩くが、その勇敢さで有名になる事はない。なぜなら彼らのうち実際に戦うのはそのうちのひとつかみであり、一般的なOrcは常に我が身の安全を優先し、劣勢になると迷わず逃げ出した。逆に一旦戦況が優勢になると怯んだ敵を蹴散らし我先に不幸な戦死者や陥落した街からの略奪に勤しむのが彼らの常であったからだ。

彼らは電撃作戦を大変好んだ。準備できていない敵は大変打ち破り易く、安全に大きな成果が得られる事を知っていたからだ。

 たとえばOrc達の中には真鍮の鉤爪(Brasscraw)をつけて戦う者達がいたが、Sarpadiaのいくつかの Orc の部族によって代々使われ続けた大きなBrasscrawは、知られている限りで最も恐れらていない武器の一つであった。

 Brassclawを振るう者は、己の優れた戦闘能力を自賛し、敵を嘲り、事態がわずかに危険に傾いた途端に速やかに逃げだす口ばかりの戦士であり、無傷で生還する事が千の勝利に勝ると考える点で、典型的なOrcといえた。

 普通「ベテラン」といえば戦場を渡り歩き、戦い、生き残った古強者を指すのに対し、Orcの「ベテラン」は危険の兆候がみえると真っ先に逃げ出すので、結果的に長く多くの戦場を渡り歩いたOrcの事を指す。

 

 

 寒冷化の兆候がSarpadia中で見かけられるようになったある日、GoblinとOrcの混成部隊が大軍でDwarf達の帝国を襲った。

 圧倒的な繁殖力を持つGoblinと狡猾なOrcに対し Dwarfは少数で、野戦になれば敗北は必至であった。そこでDwarfは交易のあった他種族の援軍を待つ作戦をとった。

 戦においてしばしばDwarfは少人数でありながら投石機をもって大軍を圧倒した。またDwarfの将校は疲れ知らずで、前線を行き来して彼らの軍隊を再編成し士気を押し上げ続けた。しかしDwarfの数は彼らの都市を巡る胸壁の全てを守れるほど十分ではなかった。

 Goblinはまばらに防御された胸壁の一角を切り崩し、そこから大挙して都市内部を制圧する作戦をとった。常に打ち鳴らされるWar Drumとその音に紛れて現れるGoblinとOrcの 奇襲部隊が守り手の神経をすり減らし続けた。

 ElfやIcatiaからの援軍がDwarf達の最後の希望であったが、彼らはそれぞれ突然に現れた自分達の敵と戦うのに手いっぱいだった。

 結局Dwarfの帝国は他の4つに先駆けて滅亡してしまう。しかし戦いの趨勢が決まってからもDwarf達は信じられないほど粘り強く戦ったのだ。Dwarfの廃虚に残された幾つかの断片は Dwarfが結局−子供のおもちゃも含めて−すべてのものを鎧や武器にしてしまった事を物語っている。

 

 

 後の世の誰一人として我々が途中で戦いを放棄したなどと言わせてはならぬ

  CrimsonPeakの集団墓地で発見された墓石の断片より

 

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