Sarpadian Empires Vol. V

 

 MerfolkはSarpadia近海に生息する知的水棲種族である。彼らはうなぎのような胴体と肩に棘状の突起をつけた人間の上半身、そしてカメレオンのように自由に体色を変化させる能力をもつ。彼らのVodalia帝国は皇帝の統治のもと厳しい階級制度と白き満月の女神Svyelunへの信仰によって治められていた。

 数世紀前。Vodaliaは軍事国家の色合いを深め、階級制度も軍事的・政治的な技能者を重視したものに変更された。従来の階級制度で高い位置にいた職人達はこの変更に不満をもち、帝国からはるか離れた地に植民地を開拓、移住していった。

 この植民地は"Etlan Shiis"(自由な暖かみを意味するVodalia語。その植民地に近い人間の交易商人からはなまって "Atlantis"と呼ばれた)と名づけられた。 このはるか彼方の植民地からしばしば運ばれてくる知識や機器、およびSarpadia近海の貴重な海洋資源(医療品などに用いられた)はVodalia帝国をおいて他に得られないものであり人間との交易材料となった。

 

 水棲種族である彼らは陸上の活動を苦手とする一方、水中の機動力では他種族の追随を許さなかった。彼らは潮流を読み攻撃と撤退を自在に繰り返す戦術で相手を翻弄した。Merfolk の戦士がひとたび攻勢に転じると、上下左右前後あらゆる方向からの攻撃で他種族の戦士を圧倒した。
 また彼らは遥か北の海で作られたと噂される戦争機械に乗ってしばしば戦闘に臨んだという。
 これは魔法戦においても同様であった。Merfolk の魔法使いの強さは強力な魔法を行使できることでなく、敵の魔法を封じて彼らのペースで戦わせることであった。

 そのようなわけで、水辺に住む Goblin や、深い海溝の深部に住むロブスターのような生物 Homarid のように Vodalia帝国の境界を侵す他種族がいないわけではなかったが、いずれも小競り合い程度であり、Vodalia 帝国は平和と繁栄の日々はいつまでも続くかと思われた。

 しかしやがて訪れた厳しい環境変化がVodaliaに暗い影を落とす。
 海中では陸上よりも早い段階から緩やかに環境の変化が始まっていた。1年毎にゆっくり確実に下がっていく海温は魚や海草の採取量に大きなダメージを与え、交易に支障を与え出した。

 北のTerisiare大陸で大規模な魔法戦争が起こったことを知るVodaliaの宮廷魔術師は、それが海温低下の原因であると結論づけた。しかしMerfolkは他種族に比べかなり早い段階で気候の変動とその原因まで把握しながら、それに対する十分な備えを行わなかった。

 

 もし海温低下の影響が海産物の減少だけであったならば、あるいは問題なかったのかもしれない。MerfolkはElfやEbonHand教団のように他種族を自ら生み出したりはしなかったが、海温低下がもう一つの脅威を引き起こした。Homarid の増殖と侵攻である。

 

 かねてよりの天敵であったHomarid の攻撃と帝国への侵攻が年々激しくなっていく事に誰もが気付いた。
 冷水を好む Homaridは、かつて暗く冷たい海溝の奥からVodalia帝国の境界線を脅かす厄介者に過ぎなかった。Homaridは強かったが、絶対数がMerfolkに劣っていたし戦場となるVodalia帝国の海温は彼らにとって「暑すぎ」たのだ。
 しかし環境変化で海温が下がるにつれてHomaridは数と行動領域を増やしていった。彼ら一匹一匹が屈強な Merfolk に匹敵する冷酷無慈悲な戦士であり、地の利と数の利を失った Merfolkの戦士に勝ち目はなかった。

 Homaridはほとんど魔法を使わないので、Merfolkの魔法使い御自慢の打消呪文の出番は殆ど無かった。さらにHomaridの分厚い殻は攻撃魔法の殆どを無力化し、結局 Homaridに有効な打撃を与える事はできなかった。

 縄張り意識の強いHomaridは海温が低下するのと同じペースでVodalia帝国を侵食し、その倍のペースで増殖を続けた。年々厳しくなる環境とHomaridの攻撃に心労したVodalia 帝国皇帝は崩御、皇后 Galina3世が女王として即位したものの、Merfolk達の動揺とHomaridの攻撃は日々増大する一方であった。
 長きにわたる戦いに民は疲弊し、士気は下がる一方であった。人間の帝国から救援物資が届いたときなどは希望が生まれもしたが、陸上で巻き起こる戦いのため2回目の救援はなかった。

 Homaridの侵攻が帝都まで差し掛かったとき、ついに女王はVodaliaを放棄するという決定的な決断を下したのだ。  こうしてVodaliaはHomaridの手に落ち、生き延びたMerfolk達は北方の植民地 Etlan Shiis を目指した長い逃避行が始まった。しかし皇族など一部のMerfolkは魔法使いに魔法の門を開かせて直接 Etlan Shiisまでたどり着いたのだ。

 ともかく Merfolk達はVodaliaを捨て、HomaridがSarpadia近海の新たなる支配者となった。

 

 

 たくましき兵士達よ Vodalia のために、そして己が名誉のために Homarids に立ち向かえ。君たちの故国が君達の保護を必要とし、そして時が満ちたのだ。今こそ君たちの勇気を輝かせ、鬨の声を発するのだ。Vodaliaに勝利を!!

 

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管理者注:Merfolkに関しては是非iroさんのParace of Starlightを参照してください。和訳記事にMerfolk達のその後が描かれた読み物があります。


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