Music for Kids

 英国では伝承童謡のことを,Mother Goose(マザーグース)よりは,Nursery Rhyme(ナーサリーライム)と呼ぶことが多く,誰でも知っている"Humpty Dumpty"から日本ではあまり知られていない歌まで,その数は膨大なものに上ります。子どもが歌うだけでなく,大人向きの小説,ミステリーや映画のセリフや隠し味にしばしば使われることからも分かるように,マザーグースは英国の長い歴史と伝統が詰まった一つの偉大な文化なのです。マザーグースの歌のほかにも,日本でいえば「みんなの歌」のヒット曲に相当するような,英国の子どもに人気のある定番の歌がたくさんあります。このページのBGMである
"Teddy Bears Picnic"もその中の一曲です。こうした英国版「みんなの歌」も是非楽しんでいただきたいと思います。



*CD番号は私が買ったときのものです。購入される場合は必ずご自分でチェックしてください。


■マザーグースコレクション84

(いずみ書房 GES-10716)

 英国児童書出版社大手のLadybird社は,多くのマザーグースの歌の中からとくに人気のある84編を選んで絵本3冊に収録すると共にそれらの絵本に対応する歌を録音した。Ladybird社の輸入代理元であるいずみ書房が日本で発売しているCDには,Ladybird社の絵本3冊と全84曲の日本語訳および解説が付いている。歌は男声あるいは女声のソロで歌われ,伴奏やアレンジもできるだけシンプルで控えめに抑えられている。84曲を1枚のCDに収録しているため,1曲1曲は非常に短い。鑑賞用CDというよりは,マザーグースの全体像を知るのに好適のCDといえよう。



■ふしぎのくにのマザーグース

(SANRIO SACV-2040, SACV-2041)

 見て読んで聴いて楽しめるマザーグースのCD。SACV-2040は「Jack And Jill」ほかの25曲,SACV-2041は「Hey, Diddle Diddle」ほかの25曲を収録。すべての曲が新しいアレンジで収録され,ポップなサウンドが楽しい。詩人谷川俊太郎の名訳と葉 祥明のカラフルでキュートなイラストを見ながら聴こう!。



■33 Traditional Nursery Rhymes

(Early Learning Centre EL40021)

 英国に何回か行ったことのある人ならば,ちょっとした街なら必ずある"Early Learning Centre (ELC)"の緑色の三角の看板に見覚えがあるに違いない。直訳すれば「早期学習センター」と仰々しくなってしまうが,何のことはない,英国全土にチェーンを展開する大手おもちゃ屋なのである。私たちはこのELCに大変恩義を感じている。というのも希望に胸を膨らませてBathに到着したものの,住む家が一週間たっても十日たっても決まらず,異国での慣れないホテル暮らしで2人の子どものストレスはたまる一方だった。そのとき,子どもの気分を少しでもまぎらわせてやろうと思って買ったのがELCのブロックやジグソーパズルだった。ELCに置いてあるおもちゃはELCが設計・作製したものが多い。ドイツやスイスのようなずっしりとしたハンド・メイドの木のおもちゃはないけれども,粘土遊びのおもちゃや数々の思考ゲームなどの中には,日本では見たことのないオリジナリティー溢れるよいおもちゃが多かった。ELCはCDやミュージック・テープの販売にも力を入れている。このCDはポピュラーなマザーグースを33曲収録したELCだけのオリジナルCD。アレンジはオーソドックスだが,歌手陣の水準が高いので安心して聴ける。



■Children's Favourites

(Early Learning Centre 37524)

 これは英国の子どもに人気のある歌を20曲収録したELCのオリジナルCD。曲によってアレンジの雰囲気や声の編成を変え楽しく聴かせる。このCDも演奏は一級品。私のお薦めの曲は,このページのBGMである,ちょっと悲しそうなピクニックの
"Teddy Bears Picnic"犬の鳴き声がかわいい"How Much Is That Doggy?",警官の笑い方が豪快でおかしい"The Laughing Policeman",長調と短調の間を揺れ動くメロディーが美しい"Nellie The Elephant"など。日本では「ゆかいな牧場」(いちろうさんの まきばで イーアイ イーアイ オー)としてよく知られている曲が"Old Macdonald"という曲で入っており両者を比べてみるとおもしろい。


■Old English Nursery Rhymes

(SAYDISC CD-SDL 419)

 これは18-19世紀の昔のスタイルで52曲のマザーグースを再現したCD。このような試みはほかに知らない。カバーの絵からしてレトロな雰囲気を感じさせる。アレンジも歌い方も当然古風。伴奏陣も当然電子楽器などではなく,リコーダー,バロック・ヴァイオリン,リュート,チター,バス・ヴィオールなどのクラシカルな楽器である。一種の古楽としても楽しめるユニークなアルバムである。すべての収録曲に歌詞・解説つき。



■Teletubbies The Album

(BBC WMXU 0014-2)

 英国だけでなく世界中の子ども(大人?)を魅了している「テレタビーズ」については説明は不要であろう。これはBBCによる「テレタビーズ」の公式CDである。全部で14曲が収められているが,「ちゃんとした」歌が入っているのは,テレタビーズが登場するときの"Teletubbies say "Eh-oh!""や最後にテレタビーズが寝るときの"Lullaby"くらいで残りの曲はほとんどインスツルメンタルである。



■Thundderbirds Are Go

(Kaz Records PLS CD 195)

 これは子どものためというより,私自身の趣味で購入した1枚。子どものとき昔の4本脚のカラーテレビで見た「サンダーバード」が忘れられないという人は結構多いのではないだろうか。「サンダーバード」こそ1960年代の英国の最良のTVドラマの一つであることは間違いない。日本に60年代のウルトラ・シリーズのファンが多いように,英国にも「サンダーバード」の根強いファンが今でもいるらしい。1曲目の主題曲を本当に久しぶりに聴いてわくわくしてしまった。もう一度全部の作品を見たいものだ。