Bath国際音楽祭


Bath International Music Festival
Tickets & Information (Tel) 01225-463362

 バースの文化水準が今日高いのは,18世紀にバースが王侯貴族の社交都市として栄えた歴史に負うところが大きい。上流階級の人々を楽しませるために日夜音楽や劇が上演されていたバースは,当時英国で文化的に最もファッショナブルな都市の一つであった。現在でも,人口8万人の小都市ながら音楽,演劇などの公演がきわめて盛んである。1948年に創設されたバース国際音楽フェステイバルは,毎年5月中旬に約2週間の日程で開催される。バースという英国屈指の風光明媚な街で行われるだけあって,観光がてら?多くの音楽ファンが訪れる。
 1999年には第50回の記念フェスティバルが盛大に催された。古楽から現代音楽に至る多彩なプログラムという伝統を踏襲しつつ,前の年(1998)より25%プログラムが増やされ,World & Folk Musicなどで意欲的なプログラムも登場した。フェスティバル中は連日バース市内の多くの会場で,クラシックからジャズ,ワールドミュージックまで様々なジャンルで,多くのコンサートが企画された。クラシックのコンサートのメイン会場は,Assembly Rooms,Guild Hall,Bath Abbey,Michael Tipett Centre等である。チケットの値段は通常のコンサートで£6〜16で,50回記念のガラコンサートの一番高いチケットでさえ£21。このフェスティバルに限ったことではないが,これで一流の演奏が聴けるのだから羨ましい。
 以下に,"Classical, Early Music & Opera"のジャンルに限って,フェスティバルの日程順にこのフェスティバルがどんなものであるか,(私にとっての)注目コンサートを中心に紹介しよう。私自身が参考にしているのはフェスティバルの公式パンフレットで,私自身が個々のコンサートを聴きに行ったわけではないことをはっきりとお断りしておく。

Opening Night (Fri 21 May 6pm-10pm, Royal Victoria Park)
 フェスティバルはRoyal Crescent近くのRoyal Victoria Parkで幕を開ける。ブラスバンド,ジャグラーなどの大道芸人が前座で雰囲気を盛り上げた後は,フラメンコ・ギタリストのJose Luis Monton,東欧・中欧のフォークソングやジプシー音楽のグループSzapora,南アフリカのグループThe Township Expressなどが登場。


PAUL CROSSLEY, piano (Sat 22 May, Michael Tipett Centre)
  1. Beethoven: Bagatelles Op.126
  2. Ravel: Miroirs
  3. Tippett: Piano Sonata No.4
 日本でもドビュッシーやラベル,また現代音楽のスペシャリストとして名高いクロスリーが初日にいきなり登場。会場がMichael Tipett Centreで,プログラムの最後もTipettのピアノソナタとは,前年(1998)に死去した英国の大作曲家に敬意を表してのことか。


FESTIVAL SERVICE (Sun 23 May, Bath Abbey)
  1. STANFORD: Te Deum in C
  2. Elgar: Give unto the Lord
 これは,お金を取って人を入れるコンサートではなく,Bath Abbeyでフェスティバルを記念して日曜日に行われる礼拝である。コーラスはもちろんBath Abbey直属の合唱団。クリスマス・イヴのキャロルの夕べで聴いたところでは,Bath Abbeyのコーラスは技術的にはそれほど高くないが,Bath Abbeyの雰囲気と残響は素晴らしい。「宗教音楽」を身近に聴く環境があるところが日本との大きな違いである。


THE MONKS & BOYS OF DOWNSIDE ABBEY, THE CHOIR OF WELLS CATHEDRAL (Sun 23 May, Downside Abbey)
  1. Tallis: O Nata lux
  2. Biltheman: In Pace
  3. Sheppard: In manus tuas
  4. Byrd: Ave Verum Corpus
  5. Stanford: Three Motets
 Wellsの大聖堂のコーラスはレベルが高く,2000年にはHYPERIONより,"The English Hymn 1" (CDP12101)をリリースした。タリスからスタンフォードまでの豪華なプログラム。バードの"Ave Verum Corpus",聴いてみたかったなあ。


ORCHESTRA OF THE AGE OF ENGLISHTENMENT, JAMES BOWMAN, counter-tenor (Wed 26 May, Assembly Rooms)
  1. Handel: Trio Sonata in B minor, Op.2 No.1
  2. Teleman: Cantata "Ergeuss Dich zur Salbung"
  3. Bach: Flute Sonata in E minor, BWV 1034
  4. Purcell: The Plaint from "The Fairy Queen"
  5. Handel: Cantata "Mi palpita il cor"
 このグループはニューヨーク・タイムズから高い評価を受けた。オールバロックのプログラムだが,ヘンデルに始まりヘンデルに終わるのが,英国らしいといえばらしい。


ANNER BYLSMA, cello (Fri 28 May, Assembly Rooms)
  1. Beethoven: Variations in G on a theme from Handel's Judas Maccabaeus
  2. Beethoven: Sonata in C, Op.102
  3. Mendelssohn: Variations Concertantes, Op.17
  4. Mendelssohn: Song without words, Op.109
  5. Brahms: Sonata No.1 in E minor, Op.38
 バロックチェロの大御所ビルスマが登場。ところがバロックの曲は1曲も弾かず,古典派とロマン派だけのプログラムである。ヘンデルの主題の変奏曲を1曲目にしたのは英国向けのサービス?ブラームスの第1ソナタ冒頭の主題をビルスマがどんな風に弾くか興味ある。


EMMA KIRKBY, soprano, ANTHONY ROOLEY, lute (Fri 28 May, St. John's Church)

 カークビーとルーリーのゴールデン・コンビによるダウランドをはじめとする英国ルネサンスリュート歌曲の夕べ。京都に来たときもそうだったが,2人は教会でのコンサートにこだわるようだ。HYPERIONの名盤"Time Stands Still"もドーセットのフォード修道院でのライヴ録音だし,彼女の歌に一番ふさわしい場所ということだろう。

50TH FESTIVAL GALA CONCERT (Sat 29 May, Bath Abbey)
ORCHESTRA OF THE AGE OF ENGLISHTENMENT, EMMA KIRKBY, soprano, ANNER BYLSMA, cello
  1. Handel: Concerto Grosso in G, Op.3 No.3
  2. Handel: Arias
  3. Handel: Concerto Grosso in D, Op.6 No.5
  4. Purcel: Pavanne & Chacony in G minor
  5. Vivaldi: Cello Concerto in A minor
 50回記念フェスティバルのガラ・コンサートは,オケにソプラノのカークビーとチェロのビルスマを迎えた古楽ファンなら是非とも行きたくなるプログラム。ヘンデル中心のプログラム構成は,この作曲家の英国における高い人気のゆえだろう。会場がBath Abbeyというのも魅力的。

BARRY DOUGLAS, piano (Mon 31 May, Assembly Rooms)
  1. Berg: Sonata Op.1
  2. Chopin: Ballades Nos.1,3
  3. Shostakovich: Preludes and Fugues No.3 in G, No.4 in E minor, No/24 in D minor
  4. Rachmaninov: Moments Musicaux, Op.16
  5. Rachmaninov: Etudes Tableaux in E minor and D, Op.39
 バリー・ダグラスは96年のフェスティバルで大成功を収めたため,再登場となったらしい。ロマン派と20世紀の曲をミックスした個性的なプログラム。

AUER QUARTET (Tue 1 June, Assembly Rooms)
  1. Haydn: Quartet in Eb. Op.50 No.3
  2. Sibelius: Quartet in D minor Op.56
 アウアー・カルテットはハンガリーの新進カルテットで前年(1998年)に続く登場。日本のコンサートではまずやられないような,ハイドンの「プロシア王」セットからの地味な1曲(「夢」や「蛙」のような有名曲ではない)と,シベリウスのカルテットを組み合わせた通好み?のプログラム。

JOHN WILLIAMS, guitar (Fri 4 June, Forum)

 いわずと知れたクラシック・ギターの巨匠ジョン・ウィリアムズが小曲ばかりを弾くソロ・コンサート。高い人気のためか,パンフレットには「とにかく早く予約すること!」との注意書きがある。

Closing Night (Sun 6 June 10pm-, The Circus)
 フェスティバルの最後を飾るイベントは,バースの代表的建築の一つサーカスにおける"Closing Night"。作曲家でありサクソフォーン奏者であるWill Gregoryの音楽,Annie Beardsleyのプロデュースによる。地元の学校・大学,アマチュアのオケ・ブラバンから全部で200人もののクラリネット,サキソフォーン,トランペット,トロンボーン,チューバ奏者が参加してバースの夜空に管の大合奏を聴かせる。希望者は誰でも参加が可能。ブラバンが盛んな英国らしいフィナーレである。