My Biotope



ベランダにビオトープを
 ここ数年,全国の学校や都会のビルにビオトープ(自然にある生態系のミニチュア)をつくるのが流行っている。学校では,総合学習の一環として,子どもたちに自然の生態系や環境・命の大切さを教えるため,大がかりなビオトープが作られていることが多いと聞く。また,自然に触れ合うことによる精神的な効果から,都会のオフィスでは,ビルの屋上や中庭にビオトープをつくる試みが盛んであるということだ。
 しかし,そんな勉強をするとか,精神に安らぎを求めるといった大それた目的はないけれども,ビオトープは,簡単にできて,しかも子どもたちに大人気間違いないとのこと。幸い私たちの住む島根県(松江市)は自然環境に恵まれ,ちょっと郊外に行くとメダカやハゼ,水草などの動植物が簡単に手に入る。そこでお気楽な私でもできそうなMy Biotopeを我が家の狭いベランダに作ることにした。
 そもそも,私にビオトープをつくることをそそのかしたのは,園芸や魚が大好きで,動植物に関する専門的な知識をもち,しかも島根の川や山に生息する動植物を熟知している友人である。彼女が貸してくれた「家族で楽しむベランダビオトープ」という本を参考にして,夏休みも終わりに近づいたある日,まず,水を入れるパレットや植物を植えるカゴをホームセンターで一緒に買った。
 参考:「家族で楽しむベランダビオトープ」 南 孝彦&虫メガネ研究所 (毎日新聞社) \980  


ビオトープをつくる
1日目
 この「家族で楽しむベランダビオトープ」によると,水を入れる池としては,日光がずっと当たっていても劣化せず,水をいれても変形しないものなら何でもいいそうだ。衣装ケースでも,コンクリートをこねるパレットでもOK。私が選んだのは,幅73cm×奥行45cm×深さ17cmのグリーンの園芸用プラスチック・ケースである。さらに100円均一の店で,目の細かいザルを用意する。水生植物(オオフサモなど)を2種類買う。プラスチック・ケースは水で洗った後で水を入れ,カルキを抜いておく。


2日目
 友人の案内で,子どもたちを連れて家から車で20分ほどのところにある宍道湖から水をひき日本海に流れ出す運河に行き,魚やエビ,貝を網ですくう。魚は黒メダカの稚魚,ハゼ3種類,エビはシマエビ,貝はイシマキガイ(プラケースの池に発生するコケを食べてくれる)である。家に戻り,早速プラ池に放す。植物も日向軽石とゼオライトを土がわりにして植える。こうして,写真のように少しビオトープらしくなった。


3日目
 前日とったハゼの種類を調べるため,2000年にオープンしたばかりの島根県平田市にある宍道湖自然館「ゴビウス」に行く。ゴビウスの「ゴビ」とはハゼのことで,この自然館には島根に生息するハゼ類や他の魚類,エビ類,貝類などがたくさん展示されている。私たちはパスポート会員なので,もう何回も行っている。島根の豊かな自然を知るための絶好の場所だ。しかし,ハゼは何だかどれも似た姿をしているため,素人にはなかなか正確な種類は分からない。そのうえビオトープに入れると,上からしか見えないので,魚が砂の色に同化して(保護色)余計分からないものだ。ゴビウスに行っても,正確な種類は判然としなかった。
 ゴビウスの帰りに,ゴビウスの外の用水路でウキクサを,宍道湖湖畔でアシをみつけて採集する。ついでに宍道湖の砂もスーパーの袋1杯分持ち帰る。これも我が家のビオトープの素材となる。砂をプラ池に入れると,水が澄んできて魚たちも落ち着いたようだ。ただ,前日捕まえたエビは,残念ながら水に合わなかったのか,逃げたり他の魚のエサとなってしまった。こういうことも,自然の摂理を体験できるビオトープには,つきものなのかもしれない。


4日目
 松江の隣,八雲村には友人の家庭菜園がある。そこにはシマドジョウがいると聞いたので友人と一緒に行く。この夏は例年になく雨が少なかったので用水路の水が少なかったが,たも網で泥の中をすくうと,シマドジョウが簡単に10匹ほど捕まる。もちろんもっとたくさん捕まえることもできるが,自分たちのビオトープの大きさを考えると,必要以上に捕まえないことを子どもたちに教えることも必要であろう。
 また,八雲村にある親水公園でハゼをすくい,オオカナダモをとってくる。秋も近づく8月末の川辺は風も涼しかったが,子どもも大人も,時間を忘れてハゼすくいを楽しんだ。ここでとったハゼもまだ種類が分からない。
 後日Mukai's ENCYCLOPEDIA OF GOBYの向井さんに,これら種類の分からないハゼは,シモフリシマハゼ,カワヨシノボリ,ヌマチチブであると教えていただいた。さすがは専門家である。


現在
 4日間で大体ビオトープらしくなったが,それ以後も,友人が実家から水生植物(ミクリ,ゴシキセリなどなど)を持ってきてくれたり,自分でも園芸店で買ってきたり(ウォーターポピー,サクラタデ,シペルスパピルスなど)して,プラ池の中がかなり充実してきた。子どもたちは,朝起きて学校・幼稚園に行く前と帰ってきてから,必ずビオトープを覗き,楽しんでいる。
 金魚や熱帯魚を家庭で飼っている方は多いだろうけれど,ビオトープにはそれと違った楽しみがたくさんある。まず,自然のミニチュアをつくる楽しみ,魚をショップでなく自分でとる楽しみ。「とる」ということは,自然の生態系で生きているものを一部持ってくるわけだから,必要以上とらないことが大切である。
 私たちの住む島根県では,ちょっと車で移動するだけで,上に書いたような動植物が簡単に見つかるが,都会に住んでいる方でも,ショップで魚や植物を買ってきて自分でビオトープをつくれば,きっと楽しい経験ができると思う。皆さんも手軽にできるMy Biotopeを作ってみませんか?



  (左)オオフサモとオオカナダモのかわいい白い花
  (右)いろいろな種類がいるハゼ



  (左)黒メダカ。いつもハゼに狙われている
  (右)プラ池をきれいにしてくれる イシマキガイ