Cotswolds


Panorama view of village centre of Bibury 
INDEX

邸宅・城編
■Kelmscot Manor
■Blenheim Palace
■Warwick Castle


小さな村・町編
■Bourton-on-the-Water
■Bibury
■Broadway
■Upper & Lower Slaughter
■Castle Combe
■Tetbury


Kelmscot Manor


 テキスタイルのデザインで有名なウィリアム・モリスが,彼の夫人と,有名な画家で親友のガブリエル・ロセッティの3人で住んだ館。皮肉にも,この館は夫人と友人ロセッティの不倫の場所となってしまったが…。芸術家である彼らが,Manor Houseとしては決して大きくないが,コッツウォルズの美しい田園地帯に佇むこの優美な館に一目惚れしたのは不思議でない。ただ,海外からの訪問客にはあまりにも少ない開館日と短い開館時間のため,中を見学するためには事前のスケジュール調整が必要だ。しかし,少々無理をしてでもこの館を訪問するのは決して無駄骨折りにはならないだろう。館の内部に置かれている彼らの調度品はどれもセンスに溢れており,世界中の人々に愛し続けられているモリスのデザインは目に新鮮に映る。
 夏の日にこのマナーハウスのガーデンで,美しい景色を見ながらのんびりと食べたランチのことは忘れられない。



Blenheim Palace


 偉大な宰相ウィンストン・チャーチルが誕生した宮殿で,彼の伯父の居城であった。チャーチルの誕生した部屋や産毛も残されている。Blenheim Houseではなく, Blenheim Palaceと呼ばれることから分かるように,非常に壮大な建物であり,丹念に見学するには丸1日必要だ。邸内には外周列車も走っているし,子どものプレイグラウンドもある。大きなメイズもある。またレストランも料理が美味しく,メニューも豊富である。また,ブレナム・パレス・ブランドのお土産も充実している。ロンドンからも近い距離にあり,イギリスを代表する貴族の邸宅として是非一度は見ておきたいところである。チャーチルや第2次世界大戦前後の英国の政治に興味がある人にもおもしろいだろう。チャーチルの名演説の録音も聴くことができる。



Warwick Castle
 Stratford-upon-Avonに程近いこの城(ウォーウィックではなくウォーリックと発音するのが正しい。)は,ばら戦争でKing Makerとして名をはせたリチャード・ネヴィルの居城となったり,シェイクスピアの劇でも有名な悪名高いリチャード三世の所有となったことで知られる。どちらも武力によって権力を握った武将の城だけに,城のつくりは堅牢で難攻不落の趣がある。地下牢やゴースト・タワーもあり,ちょっと気味が悪いが一見の価値がある。私たちが訪れた日は深い霧が立ち込め,城は一層不気味な雰囲気であった。
 しかし,蝋人形で有名なマダム・タッソーの制作会社が経営しているだけあって,貴族の生活やKing Makerの戦い前の様子を蝋人形で再現しており,本家のロンドンのマダム・タッソー館よりむしろ楽しめるくらいである。アトラクションが多いので,子供連れにお薦め。息子もここでプラスチックの鎧兜や剣を買い,身につけて喜んでいた。

  (左)パンフレット
  (中)霧がかかり一層不気味だった城
  (右)中世の騎士になったつもりのかずし


Bourton-on-the-Water
 Bourton-on-the-Waterは,私たちがバースに住み始めてから初めて訪れたコッツウォルズの村である。それだけに,7月の週末ということもあって,村は多くの観光客でちょっと騒がしかったけれども,思い出深い村なのである。バースからだと,M4に乗って17番インターで降り,後はA429をまっすぐ進み,1時間半ほどで村に着く。
 村の名前からも想像できるように,この村は「水」が非常に美しい村である。このことから,「コッツウォルズのヴェニス」という呼び名もあるようだが,イタリアを代表する大都市ヴェニスに比べたら比較にならないほど小さな村であることは言うまでもない。村の真中をゆったりと流れるウインドラッシ川(River Windrush)は,小さい子どもの膝までもないような浅い川で,そこに中央部がやや盛り上がった小さな石橋がかかっている。ゆらゆらと揺れる柳の影が映り,ときには虹色に光る川面を見るもよし,川で遊ぶ親鴨と子鴨を見るもよし。川沿いの芝にこしかけて,"The Bread Basket"というベーカリーで買ったサンドイッチを食べた。川の眺めが最高のご馳走である。是非とも天気のよい日に訪れたいところである。
 村といってもコッツウォルズの中では大きい方のBourton-on-the-Waterには,個性的なミュージアムがいくつかある。その中でも最も有名なのがBBCでも紹介された,貴重なローバーやオースチンのクラシック・カーを展示している"Cotswold Motor Museum & Toy Collection"だろうが,私たちはそれには行かずに"Bourton Model Railway"に行った(子どもの希望を優先した結果です)。OO/HO,Nゲージの鉄道モデルが所狭しと展示してあり,客が自分で動かせるようになっているので汽車好きの子どもは喜ぶだろう。他に自家製造の香水の展示&販売をしている博物館"The Cotswold Perfume"もあり,香水好きの人には一見の価値あり。 子連れの私たちは入らなかったが,川沿いにはおしゃれなレストランやティー・ルームも並んでおり,川沿いの席に座ってのアフタヌーン・ティーなど最高の気分だろう。
  (左)River Windrush,木々,石橋が織り成す美しい水辺の景観
  (右)鉄道模型ファンにはたまらないBourton Model Railway


Bibury
 Biburyは,景観の点でも,味覚(美味しい鱒!)の点でも,私が最も好きなコッツウォルズの村である。バースからだと,M4に乗って17番インターで降り,A429でサイレンスターまで行き,そこからB4225で10キロほど走れば村に着く。バイブリーといえば必ず引き合いに出されるのが,かのウィリアム・モリスによる「イングランドで最も美しい村」という言葉である。本や音楽と同様,村や街にも人による好みが当然あるけれども,「英国で最も古い景観を残している村」と呼ばれるCastle Combe,さらにはモリス自身が住んだKelmscotと並び,バイブリーが一つの典型的なコッツウォルズ的景観を保っているのは確かだ。そのバイブリーの顔ともいうべき古いコテージ群アーリントン・ロウ(Arlington Row)は,ただ通り過ぎるのではなく,是非とも年期の入った屋根や壁,さらには何気なく植えられた美しい花々を丹念に観察してみたい。バースのRoyal Crescentと同様,ただ「保存」しているのではなく現に「住居」として使われているこそ,古くても生き生きとした家並みを誇っているのだろう。
 バイブリーをもう一つ魅力的な村にしているのはコルン川(River Coln)の存在である。Bourton-on-the-Waterのウインドラッシ川のように川の両側が手入れされた芝生になっているわけではなく,自然のままの草地であるため一層田舎の小川という印象が強い。しかし,それだけではなくて,この川は鱒が泳ぐ川として釣り人に有名なところなのである。アーリントン・ロウよりも上流側に歩いていくと,鱒の養殖場として名高いBibury Trout Farmが見えてくる。私は全く釣りはしないが,「美味しい鱒」には大いに興味があった。まさにそこで養殖しているのだから,売っている鱒もとれたてで新鮮そのものである。その日,帰宅後にオーブンでローストしただけの鱒は,英国滞在中に食べた最高の味の一つであったと断言できる。その後バースの魚屋やスーパーで鱒を求めてみたが,これほど新鮮なものには出会えず,再び鱒を買いにわざわざバイブリーに行ったこともあった。短期の旅行で生の鱒を買い込むわけにはいかないが,村のパブやレストランでも新鮮な鱒を食べることができると聞く。バイブリーに来たのなら一度は食べてみたい味である。
  「古いおうちだね!」 「アーリントン・ロウっていうらしいよ。」



  (左)どこから見ても風情のあるBiburyの家
  (右)River Colnの美しい眺め。鱒もたくさん泳いでいるに違いない!


Broadway
 Broadwayはコッツウォルズ北部の村で,自然よりもむしろ街並やショッピングが楽しい,コッツウォルズの中でも異色の村である。これくらい北になると,バースからでもかなり遠く,A429でBourton-on-the-Waterの先のStow-on-the-Woldまで行き,そこからA424,A44と走ってようやく着く。Broadwayの名の通り,歩道も車道(2車線)も広々としており,歩道と車道の間にはたっぷりとした芝のスペースをとってある。そのためか,コッツウォルズの村には珍しくハイ・ストリートの両側にはたくさんのショップが並んでいるのだが,せせこましい感じがせず,非常に広々としており,明るく開放的な雰囲気に溢れている。ショップは多種多様で,お菓子類,デリカテッセンからクラフト,小物,おもちゃ,テディ・ベアまで感じのよい店がたくさんある。どの店も当然壁はすべてコッツウォルド・ストーンで統一されている。私はTisanesというティー関係のものをたくさん揃えている店(実用的ではない?おもしろい形をしたティー・ポットをたくさん置いてある)で,シェイクスピア劇をイメージしたティー・ポットを買った。
 私にとって忘れがたいのは,Broadwayで泊まったThe Broadway Hotelの素晴らしさである。私たちは,バースから日帰りで行けるところならまず泊まらないし,泊まるとしても安いB&Bにするのを常としていたのであるが,このときは張り込んで”ちゃんとした”ホテルに泊まったのである。ホテルといっても,部屋数20のこじんまりとしたホテルである。ホテルに一歩入ると,ホールには太い梁や暖炉があり,エリザベス朝的な雰囲気に溢れている。部屋のベッドや内装も古風でいてセンスがよい。夕食のときは,まずダイニング・ホールの暖炉のそばで食前酒を飲みながらリラックスし,頃合を見てウェイターがダイニング・ルームへと案内してくれる。料理の盛り付けも洗練されており,前菜からデザートまで味もよかった。このホテルには,特別広いというわけではないけれども,手入れの行き届いたきれいな庭があり,りんごの木があったので,子どもたちは木の周りを駆け回って大喜びだった。Broadwayで宿を取る方にはお薦めしたいホテルである。
  (左)The Broadway Hotelの古い建物は美しい花でいっぱい
  (右)商店街の人?による楽しいフォーク・ダンス


Upper & Lower Slaughter
 Upper SlaughterもLower SlaughterもBourton-on-the-Waterの近くに位置する人口約200人のあきれるくらい小さな村である。何しろあの小さなCastle Combeよりさらに小さいのだから。2つの村は,実際は石橋でつながっている一つの村のようなものである。でもLower Slaughterにある小川沿いをそぞろ歩きするのは風情がある。人が少ないのもよかった!Lower Slaughterには"Lower Slaughter Manor"という子どもお断りの立派なマナーハウス・ホテルがあり,ちらっと覗いたところでは,コッツウォルド・ストーンでできた立派な館と,よく手入れされた広々とした庭が見えた。リンボウ先生とはわけが違う私たちがこういう所に泊まれるのはいつの日のことであろうか。


Castle Combe
 Castle Combeは「英国で最も古い景観を残している村」として日本でも有名であり,最近では日本で販売されている英国のガイドブックでもこの村が紹介されていることが多い。村の郵便局で買ったパンフレットの表紙にも誇らしげに"The Prettiest Village in England"という文字が見える。
 コッツウォルズのほぼ南西端に位置するこの村を訪れたのは,99年の新年が明けてすぐのことであった。バースからだと最も近場にあるコッツウォルズの村である。メインストリート(といってもきわめて細くて短いもの)の近くにはパーキングがないので,車での訪問者はB4039を右折してすぐのカーパークに車を停め,村の中心部まで徒歩で丘を下らなければならない。新年早々ということもあってかさすがに人の数も少なかった。
 なだらかに続く道を歩いていると,三叉路の中心に14〜16世紀の間に建てられたといわれる古いThe Market Crossが見えてくる。このあたりも昔は毛織物等の商売で賑わっていたらしいが,今は全く往時の面影はない。Castle Combeは,商業が衰えて昔よりかえってのどかな田舎になった村というのが正しいだろう。The Market Crossの石にこしかけてしばらくゆっくりした。季節が春であればもっとゆっくりしていたに違いない。

  (左)The Market Cross。1月なので寒かった。
  (右)The Street沿いの家並。遠くにThe Market Crossが見える。

 単に"The Street"と呼ばれるメインストリートの両側にはいかにも古そうな,雰囲気のよい家々が並んでいる。こういうところに住んでいる人は(観光客の多さにはうんざりしているかもしれないが)絶対に家を手放したりはしないであろうと想像した。The Streetをさらに南に下ると,左手にThe Old Post Officeという郵便局(兼)雑貨屋(兼)観光案内所(兼)土産物店がある。そこに入ってCastle Combeのパンフレットを記念に買った。
 さらにちょっと歩くとBy Block川と呼ばれる小さい川とPack Bridgeという15世紀の古い石の橋が見えてくる。この橋を渡ると,道と川は平行に走っており,川沿いには17世紀の美しいコテッジが並んでいる。このPack Bridge付近の眺めはCastle Combeで一番絵になるところであろう。実際パンフレットの表紙も,私が持っている陶板に絵付けしたクラフト(このページの最上段参照)もここの景観を使っている。古いものを貴ぶ英国においてさえ,これだけノスタルジックな景観は今や珍しくなってしまったらしい。The Market Crossを西に入ったところには,広大な敷地と古い大きな建物を有する名高いManor House Hotelがある。子供の手が離れてからCastle Combeをいつの日か再び訪れ,このホテルに泊まってゆっくりとくつろぐのが私達夫婦の夢である。


Tetbury
 ロイヤル・ファミリーの別邸がある町として名高いTetburyは,パンフレットの表紙に「コッツウォルズへの入口」とあるように,この地方の南の端に近いところに位置している。バースからの距離は約40キロメートル。車で行くとすると,市街を北に抜け,M4を北側に横断してA46経由で小1時間ほどで着く。Tetburyはそれほど大きくない町といっても人口が五千人ほどいるから,Castle Combeはもちろんのこと,BiburyやBourton-on-the-Waterなどの村に比べると相当大きいという感じがする。確かに雰囲気のよい町ではあるのだが,タウンセンターはちょっと中途半端に大きくて騒がしい(オフシーズンに訪れたにもかかわらず)なと思ったのも事実である。
 Tetburyのシンボルとなっているのは,Long StreetとChurch Streetが交わっているところにでんと建っている"The Market House"である。一階部が多数の柱によって支えられているマーケット・ハウスはコッツウォルズ地方に特徴的なもので,別にTetburyだけに見られるものではないが,ここのマーケット・ハウスは1655年に建てられたにもかかわらず非常に保存状態がよく,今でもアンティーク市に現役で使われている。マーケット・ハウスの古い柱を丹念に見ると,1本1本の形や色に微妙な違いがあり,古い時計や尖塔と共になかなか味のある建物である。Tetburyは非常にアンティークが盛んな町で,とくにLong Street沿いにはアンティーク・ショップがたくさんあるので,アンティーク好きの方には楽しいだろう。私が他に印象に残っている場所として,パンフレットの表紙の写真にも使われている古い家々のある石段("Chipping Steps" )がある。後でパンフレットを読むと,このあたりは中世に建てられた家が多いらしい。
 私はとくにアンティークには関心がないので,Tetburyのアンティーク・ショップには一軒も入らなかった。しかし食意地は張っている方なので,町に着きChurch Street近くのカーパークに車を停めると,寒さを感じていたところにちょうど雰囲気のよさそうな Edge's Shoppe & Tea Roomというティールームを見つけたので,早速店に入ってスコーンとお茶を頼んだ。さらに同じChurch Streetに創業1870年のいかにも古そうな E&J Phillips LTDというベーカリーを見つけ,おいしそうな食パンを買って帰ったところ,期待にたがわぬおいしいパンだった。一つ心残りなのは,すごくたくさんの種類のおいしそうなハムやソーセージ,さらには牛や羊などの肉を並べた,Bathにもないような立派なミートショップTetbury Traditional Meats がやはりChurch Streetにあり,買って帰ろうか迷ったが結局買わなかったことである。後でこの店が大変有名で権威のある肉屋であることを知った。この店には大変おいしそうなスコットランド料理のハギス(私の大好物である)まで置いてあった記憶がある。短期の旅行ではなかなか肉屋で買物をする機会なんかないから,今考えると惜しいことをした。
 (左)たくさんの立派な柱のあるThe Market Houseが遠くに見える
 (右)Chipping Stepsを表紙に据えたTetburyのパンフレット。