コンサートで演奏されたアイルランドの民俗楽器
- アイリッシュ・ハープ
34弦しかなく,見かけは普通のハープより大分小さい。3本の足が付いており,奏者はハープを自分の体の方に傾けて演奏する。半音の上げ下げは弦の上部に付いているレバーで行うので,途中で頻繁に転調する曲を弾くのは大変らしい(速い曲ではほとんど不可能だろう)。ペダルが付いていないので,普通のハープに比べて残響が短く素朴な響きがするが,澄んだ美しい音色である。高音の響きにはどこかしらオルゴールのような懐かしい響きもあるように思えた。アイリッシュ・ハープの美しい形は,アイルランドで公共建築の紋章として使われており,国家を象徴する重要な楽器であるということだ。
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イーリアン・パイプ
イーリアン(Uilleann)とは,ゲール語で「肘」を意味するらしい。スコットランドでおなじみのバグパイプは普通口で息を吹むタイプのものだが,アイルランドのイーリアン・パイプでは,脇の横にぶら下げたふいごを肘で押さえつけて音を出す。両肘を使って2種類のパイプを演奏する時は大変だ(体力勝負!)。口で吹くバグパイプは武器の代わりにもなるということで,その昔アイルランドを支配していたイングランドに没収されてしまい,代わりに発展したのが「肘パイプ」だったということである。その代わり優れたところもあり,スコットランドのバグパイプより広い音域の音を出すことができる。300年の伝統がある楽器ということであるが,アイルランドの苦難の歴史を反映してか,哀愁に満ちた独特の音色が魅力的である。
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ティンホイッスル
細いブリキの縦笛で,アイルランドでは,日本の小学生がリコーダーを習うのと同じように,学校でティンホイッスルを習うということである。値段は非常に安いらしい。南米の笛のような,ちょっとかすれたピッコロのような音色がする。アイリッシュダンス音楽になくてはならない笛。
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アイリッシュ・フルート
バロック時代によく使われたフラウト・トラヴェルソ同様に,現在のフルートの原型ともいうべき形と音色を持ったフルート。本当の木製でもちろん今のフルートのようなキーは付いていないが,装飾音の多いアイリッシュダンス音楽を吹くのには,自分の指の感覚で細かい音を出せるので適しているそうだ。音域が今のフルートより低く,非常に素朴な音色である。
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ボーラン
アイルランドの太鼓。枠も叩くところも木でできており,見た目は寿司桶そっくり。叩く方のバチは木製の棒で,両端が丸く膨らんでいる。もともとは,アイルランドの炭鉱で出たいらない泥炭を運び出すために使われていた道具を,40〜50年ほど前に太鼓として使い始めたらしい。説明はなかったが,演奏前に水(だと思う)を含んだ布で楽器を濡らしていた。たぶん,それで音がよくなるのだろう。皮の太鼓ではないので,乾いた音がし,残響も短い。叩く位置を変えたり,枠を叩くことによって音色に変化を付けることができる。なお,映画「タイタニック」の中でボーランが演奏されている場面があったが,この楽器が40〜50年ほどの歴史しかないことを考えると,時代考証的には明らかな間違いだということであった。
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