英国の薬


 海外に暮らすことが決まって日本で解熱剤,風邪薬, 胃腸薬,栄養剤などの市販薬を買い込んだが,Bathに住むようになってみると,やはりBootsやJ Sainsberyの薬局や,Pharmacyで現地の市販薬を買う必要が出てきた。イギリスのSurgeryの医者はほとんど薬を処方してくれない。これは多分に財政的な問題もあるのだが,その代わりに薬局・薬店では比較的安価に様々な薬が購入できる。しかし,余程英語に堪能な人でないと,薬剤師に自分の病状や欲しい薬について正確に話すのは難しいであろう。私たちは全くもって英語が堪能なわけではないから,なおさらである。自分の症状を説明するのにも,前もって辞書で調べて翻訳しなければならないといったありさまである。そんな私たちの役に立ったのが「英国市販薬ガイド」(一般にOTCガイドと呼ばれており邦訳が手に入る。)である。様々な薬が症状別,効能別に紹介されている。

咳止め薬
 おもしろいのは,日本で「咳」といえば,「声枯れ」「喉痛」「痰がからむ」などの症状があったとしても一種類の「咳止め薬」で事が足りる。しかし英国の場合自分の咳が「胸からの咳」,「いらいらする咳」,「湿った咳」,「乾いた咳」のどれなのかを薬剤師に説明しなければならない。まず,そんなことを考えたことが無い者にとって,自分の「咳」がどれに当たるのか悩んでしまう。さらに日本では,市販薬でも(子供向きでさえ)大抵強力な鎮咳剤であるリン酸ジヒドロコデインを含んでいるが,英国ではこれが入っている薬は特別に薬剤師に頼まなければならない。一般に買える咳止めはレモンシロップのような(いくら飲んでも効かなかった)甘いジュースのような薬や,「バルサン」といって昔ながらの生薬のような匂いのするものである。薬にはうるさい夫によると,子供用の咳止めシロップは,日本のものと違ってすごくまずいものが多いそうだ。実際せっかく買ってもあまりのまずさに子供が全く飲まず,捨てた薬もある。

小児用風邪薬
 子供の風邪薬は,日本のような総合感冒薬というものはあまり見かけない。子供が熱を出してGPにかかると,必ずといっていいほどCalpolを紹介される。いわば鎮痛解熱剤なのだが,イチゴ味で砂糖入りと,砂糖なしがある。これは我が家の常備薬であった。歯痛の時も,なんだかぐずぐずいって機嫌が悪い時も飲ます。パラセタモルという主成分なのだが,大人用にも解熱剤として売っており,12錠で1ポンドぐらい,日本では考えられない安さである。こちらの方は夫が愛用していた。子供の場合,このCalpolを飲ませ続けても効かないようだったら重篤な病気だと判断されるらしい。上の息子はこれを飲ませても熱が下がらず,肺炎と判断され,ついに抗生物質を処方された。一般に子供の風邪はそんな薬を与えずに自然に治すべきだと考えられており,ほとんど抗生物質は処方されない。

塗り薬
 塗り薬については,結構日本でもおなじみの薬が売られている。ただ,あまり副腎皮質ホルモンが配合されているものは売られていないようである。私だけでなく湿潤な国から来た者は,英国の密閉された部屋や,硬水でカルシウム分の多い水でシャワーやお風呂を使うために,肌荒れがひどくなる場合が多い。バスソルトも肌によいというものを使用していたが,あまり質のよいものはなかったように思う。たくさん種類はあるのだが,下の息子の場合肌荒れがひどく,いつもじくじくしていて治る時が無かった。

痔の薬
 日本人にはお風呂好きが多い。そんな私たちが閉口したのはやはりお風呂の問題である.給湯タンクの容量がお風呂一回分なので,家族では毎日誰かがお風呂に入れず,シャワーだけということになる。十分体を暖められない日も多いため,痔の症状を訴える人が多いらしい。これに関しては断然日本のほうが薬がよい。英国にもあることにはあるが,説明するのも厄介だし,日本から持参された方がよいようだ。

鼻炎薬
 それとは逆に鼻炎の薬は充実しているようだ。Sudafedというのは夫が愛用していたものだ。結構即効性があり,眠くならない。英国は街中でも緑が多く,庭造りを趣味としている人が多いため,日本と同じようにアレルギー性鼻炎の人が多いせいかも知れない。  

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