「夢のおうち図画コンクール」感想記


 今年(2002年)10月のしまね県民住宅祭に関連して行われた「夢のおうち図画コンクール」で,せいじの作品「海の中の家」が優秀賞に選ばれたので,展示を見に行き,10月13日の表彰式に出席した。このコンクールの趣旨は,島根県内の幼稚園児・保育園児・小学生を対象に,子どもたちが住んでみたい家を自由に描くというものであった。
 せいじの通っている幼稚園は,こうしたコンクールがある場合に園側が主導して全員に応募させるといった熱心なところではないので,はじめはこのコンクールの存在すら知らなかった。しかし幼稚園での取りまとめ役の知人から「締め切り明日なんだけど出してみない? 参加賞で全員500円の図書券がもらえるから。」という話を聞き,締め切り前日に描かせたのがまさに大当たりという感じ。表彰式で賞状と予定の10倍にアップした額の図書券(たぶん本人は何に使うか理解していない)をもらったせいじは子ども心に大喜び。親バカとして,これを励みに絵を描くことがさらに好きになって夢のある絵をたくさん描いてくれれば嬉しいことだ。
 島根県は全国有数の過疎県で,県庁所在地の松江でさえ人口わずか15万人(英国バースのほぼ2倍)。最近は大分開発が進んできたとはいえ,それでも関東や関西の都市部とは比較にならない田舎である。家の横の側溝に在来種のメダカが泳ぎ,田んぼでは夜になるとカエルがやかましく鳴き,宍道湖では誰でもマハゼ(ゴズ)が釣れる。車でちょっと走ればすぐ海辺や山の中になる。子どもが自然に触れたり,絵を描くための題材を得るには格好の土地柄なのだ。そういう点で島根県の子どもたちは都会の子どもたちよりも環境に恵まれているかもしれない。


  

(左)「花図鑑」 中島千波(求龍堂グラフィックス)\2,816
(中)「クラゲガイドブック」 並河 洋/楚山 勇(TBSブリタニカ)\2,000
(右)「ウミウシガイドブック」 小野篤司(TBSブリタニカ)\2,400


 対象を直接スケッチするおもしろさに熱中する一方で,子どもは自分が見る本の絵や写真を真似したり,それらにインスピレーションを得て絵を描くことが多いようだ。うちの2人の息子たちの場合,今年NHKで放送された「中島千波の日本画講座」をきっかけに,同氏の花の画集「花図鑑」に夢中となり,兄弟で競い合ってひたすら花の絵を描く日が続いた。「花図鑑」は本来もちろん大人が鑑賞するための画集であるが,スケッチの大切さ,おもしろさを教える本として,絵に興味がある子どもに絶好の画集である。子どもには,単に見るというより創作意欲を掻き立ててくれる本らしい。写真集ならば,自然の美の驚異と神秘を教えてくれるものとして,TBSブリタニカの「クラゲガイドブック」と「ウミウシガイドブック」が異色の図鑑として大人,子どもを問わずお薦め。せいじが自作の中にクラゲを描き込んだのも,「クラゲガイドブック」に影響を受けてのことだ。どんなものでも実物を目にできればいちばんよいのだが,実際にはなかなか見る機会のない動植物の図鑑類は,子どもにとって勉強ということ以前に興味津々の宝箱のようである。

2002.10.14