Peak District


Panorama view of Chatsworth

 Heart of EnglandといわれるPeak Districtはイングランドでは唯一の山岳地帯であり,ブリテン島のちょうど真中に位置する。といっても日本の信州のような2000m級の山々が連なっているという感じではない。やはりのどかに牛や羊が草を食んでいるなだらかな山があるのみである。私たちがここを訪れたのは夏の盛りの8月であった。

INDEX

Bakewell

■Chatsworth
■Rutland Arms Hotel


Chatsworth
Chatsworth, Bakewell DE45
Tel: 01246 582204

  車を運転してもなかなかたどり着かない山奥にありながら,美麗で気品のある邸宅と多くの美術工芸品,しかも広大でしかも手入れのよく行き届いた美しい庭園を有するChatsworthは英国でも1,2を争う名邸といわれる。まさに「イングランドの至宝」の名に恥じない。しかしながら,300年以上前にこのような辺鄙な場所に居を構えることを決断したBess of Hardwick (1527-1608)は,どれほど意志強固な女性だったのだろうかと想像してしまう。
 邸内は博物館以上のものである。さりげなくレンブラントの絵が掛けられていたり,すばらしい彫像も所狭しと並べられている。また,大きなキリスト教会でしか見られないような天井画が描かれている。緻密な彫刻が施された壁や柱の数々…。丹念に見学していると何時間あっても足りない。これが個人の邸宅であるとはにわかに信じがたい。本当に昔の英国貴族はすごい暮らしをしていたんだなあと改めて感心してしまう。また,英国でも屈指の膨大な蔵書には圧倒される。隠し扉や絵でかかれたドアもあり,しゃれ心も憎い。
 The Orangery Shopにはデヴォンシャー侯爵夫人自らが選んだという品の良い品々が売られている。お土産にもいいだろう。レストランもある。

  (左)ため息の出るような内装(ドアの向こうの扉は絵)
  (右)庭園には噴水もある


 少し車で移動しなければならないが,広大な牧場の一角(左の写真のように牛がたくさんいる)にFarm Shopもあり,チーズやハム,お酒といった地元で産するものをたくさん販売している。見るだけでも楽しいので,こちらものぞいてみたらいかがでしょう。簡単なティールームもあり,私たちはアイスクリームを食べた。
                                           


Rutland Arms Hotel
The Square, Bakewell, Derbyshire DE45 1BT
Tel: 01629 812812, Fax: 01629 812309

 BakewellはBakewell Puddingで有名な街である。私が知る限りBakewell Pudding の由来はこうである。1860年代のある日,Rutland Arms Hotel(昔はWhite Horseという名のInnだった)のいつも料理を作る女主人がたまたま居ないときに,アシスタントのコックがストロベリータルトを作ろうとして,誤ってタルトの中に卵液を注いで焼いてしまったのがこのPuddingが生まれたきっかけらしい。今でも「The original 'pudding' fireplace and oven still exist within the hotel!」と,このホテルのパンフレットには記されている。実際このホテルに泊まったときに食してみたが,ピザのような大きさのPuddingは素朴な味だった。アツアツをナイフとフォークでホットケーキのように切って食べると,中身がとろけてアーモンドの香りがして美味しい。Bakewell Puddingは,このホテルで食べなくともMatlock StreetのThe Old Original Bakewell Pudding Shopで食べたり買うことができる。やっぱり熱々を食べるのが一番だろう。
 このRutland Arms Hotelは,大女流作家ジェイン・オースティンが1811年に滞在して代表作「Pride and Prejudice(高慢と偏見)」を執筆したホテルとしても有名である。この作品に出てくるLambtonという街は,Bakewellの印象がもとになっているといわれる。実際に執筆に使われた部屋は今もなおスイートルームとして宿泊客に利用されている。私たちはもっと安い部屋に泊まっていたので,ホテルの人に頼んで見せてもらった。女性向の内装にしつらえられた部屋はさほど大きくはなく,あの名作が生まれたと想像するのが難しいぐらいごく普通の部屋だった。
 朝食は他の英国のB&Bと同様English Breakfastであったが,black puddingが出た。これもこのあたりならではのものである。血詰のソーセージであるが,スパイスがよく効いていて,ほとんど生臭さを感じさせなかった。普通のB&Bで出てくるフニャフニャソーセージよりよほど美味しい。

   (左)街の中心に位置するホテルの外観
   (右)オースティンゆかりの部屋



   (左)思ったよりも大きいベイクウェル・プディング
   (右)歩き疲れて美しい公園で一休み