第4回 「サイエンスの幽霊」2001.01.26

 表題は、我が愛するアーティスト、平沢進のアルバムタイトルです。それはおいといて。

 「化学物質」と聞いて、あなたはどんなイメージをお持ちになりますか?「有害」とか「環境汚染」とか思いますかね?

 三省堂発行の「新辞林」によりますと、「化学物質」とは、化学の研究対象となる物質。また,化学的方法によって人工的に合成された物質 と、定義されていますね。すなわちそこには本来、「有害」とか「人工」とかの区別はなかったわけですが、いつしか、「人体や環境に悪影響を与える物質」との意味を付与されて使われるようになったようです。

 そうなってしまった背景には、人間が生産活動をする上で排出した物質や、生活を豊かにするために開発した物質が、実は毒性を持つものだったりした事が次第に明らかになったというのがありそうです。

 で、その話を広げていくと際限がないので、今回のテーマは

人工・化学合成物=有害論は正しいか

 っつことで。 

 テレビ番組や雑誌などで「化学物質」という言葉が頻繁に使われていますが、そういった時に使われる意味としては、もはや「環境や人体に悪影響をおよぼす物質」という事に定着してしまったようです。んで、だいたいそれは「人工による化学合成物質」とほぼ同義に扱われている感があります。

 例えば、「シックハウス症候群」と名付けられた症状があります。これは、「住居が原因で発症したもの」を指し示す言葉です。ペットの毛や、ダニの死骸を吸い込むことによってアレルギーが発症した場合も、これに含まれます。
 しかし、メディアでとりあげられる時には、家屋や家具調度品に使われた接着剤などから溶出した「ホルムアルデヒド」や「トルエン」「キシレン」「パラジクロロベンゼン」←防虫剤で使われてますね を、長期間一定量吸引しつづけたりすることで起こる、と言われることが多いです。
 メディアのいうそれは、正確には「化学物質過敏症」のうち、住宅などの建物の中にいることが原因で発症したもので、花粉症と同様、個体の容量限界を超えてある物質にさらされると、どっとアレルギー症状が出るというものです。

 で、たいていは「化学物質=人工による化学物質」という事になっていて、そうなると反語のように出てくるのが、「天然成分だから安全」「天然だからカラダにいい」「天然だから〜〜にいい」という文言。よく「うさんくさ」系の広告にありますよね。

 しっかーし、皆さんよくご存じのように、天然だからっつって安全とは限らないのでごさいます。天然物がおしなべて安全なら、マンゴー食ってカブれる人はいないし、しょうゆ1升飲んで重態になる人もいない。ソバ食べてアレルギー症状で重篤になる人もいないでしょう。ましてや花粉症をや。
 ほとんどの食品に添加されている「食塩」なんか、ダイオキシンが出る原因にもなってる。下手すりゃ塩ビ製品を燃やすより、醤油を吸ったぞうきん燃やす方がヤバいかもしれない。と、これはちょっと内容ズレしましたが。

 そこで出てくるのが、「どのくらいの量なら安全なのか」っていう定義です。

 塩をたくさん摂取しても、一気に苦しみ悶えて死にはしないですね。でも、フグ毒は微量でも死にいたります。

 んでも、一部の「環境保護」を訴える人々なんかは、「これが危険」「あれが危険」とばかり主張して、「何を」「どんな条件で」「どのくらい」摂取、あるいは周辺に散布などすると「有害」になるのかをきちんと提示しない。なのに、天然の物質に関しては、「天然だから安全」をくりかえす。

 いたずらに「危険だ」ばかりくりかえして、恐怖をあおりたてるようなやりかたには、私は感心しません。特に「天然・自然」をうたうメーカーなどにありがちですが、最近はメディアの情報も結構「トンデモ」なのを流していますから。

人工・化学合成物=有害とは限らない。
天然だからといって安全だというのは誤っている。
完全に無害なものなど存在しない。

 というのが、適当な見解だと私は考えます。

 では、ここでちょいと問題。下の文を読んで、御感想をどーぞ。

一酸化二水素(DihyrodogenMonooxide:DHMO)の規制を!

DHMOは無色、無臭、無味であるが、毎年無数の人々を死に至らしめている。殆どの死亡例は偶然DHMOを吸い込んだことによるが、危険はそれだけではない。DHMOの固体型に長期間さらされると身体組織の激しい損傷を来たす。DHMOを吸入すると多量の発汗、多尿、腹部膨満感、嘔気、嘔吐、電解質異常が出現する可能性がある。DHMO依存症者にとって、禁断症状はすなわち死を意味する。

DHMOは水酸の一種で、酸性雨の主要成分である。地球温暖化の原因となる「温室効果」にも関係している。また重度の熱傷の原因ともなり、地表の侵蝕の原因でもある。多くの金属を腐食させ、自動車の電気系統の異常やブレーキ機能低下を来す。また切除された末期癌組織には必ずこの物質が含まれている。

汚染は生態系に及んでいる。多量のDHMOが米国内の多くの河川、湖沼、貯水池で発見されている。汚染は全地球的で、南極の氷の中にも発見されており、中西部とカリフォルニアだけでも数百万ドルに上る被害をもたらしている。

この危険にも関わらず、DHMOは溶解や冷却の目的で企業利用されており、原子力施設や化学物資製造、消火剤、動物実験に使われている。農薬散布にも使われ、汚染は洗浄後も残る。また、ある種の「ジャンクフード」にも大量に含まれている。

企業は使用済みのDHMOを大量に河川、海洋に投棄しており、それはまだ違法ともされていない。自然生物への影響は限りないが、我々は今のところ何も出来ないでいる。

アメリカ政府はこの物質の製造、頒布に関する規制を「経済的理由から」拒んでいる。海軍などの軍機関はDHMOにかんする研究を巨額の費用を投じて実施している。目的は軍事行動時にDHMOを効果的に利用するためである。多くの軍事施設には、地下に近代的な施設が造られ、後の使用に備えて大量のDHMOが備蓄されている。

 さあ、このDHMOについて、あなたはどう思いますか?

 ああ、すっげーとりとめのないロバ耳になっちまいましたよ。でもこれだけは言いたい。

口先にだまされるな。
事実のみを告げていても、
表現によっては虚偽になる。

 なんだか書いているうちに時間が足りなくなって、昨日はロバ耳にネタをアップできませんでした。奥が深くて、私ごときの頭脳ではなかなか説明が難しく。でも、どーしても書きたいほど、コレについては考えていたので。駄文御容赦。

 明日も吠えるぜ。あ、明日は土曜だからお休みか。週明けまでばいばい。

今回の参考リンク

シックハウス症候群に関する科学技術文献情報

愛知県衛生研究所シックハウス症候群

横浜国立大学大矢研究室生活情報のページ

医学都市伝説一酸化ニ水素汚染の恐怖

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