第7回 「小さくなった石鹸って」2001.02.03

 「昨日まであんなに泡立っていた石鹸なのに、なんで今朝はこんなに泡立たないのーっ!?」

 ちっちゃくなった石鹸って、暴れたくなるくらい泡立ちませんね。
 新品の石鹸を開けると、つい使い古しのソレを「親亀子亀」状態にしてみたりして、なんとか再生をはかってみたり、排水口に落ちたのを、自然に溶けるがままに任せてみたり。
 まさに「身をすり減らして」活躍し続けた最後に、とうとう泡立たなくなった石鹸の末路は、悲しいものがございます。

 ではなぜ「石鹸は小さくなると泡立たない」のでせうか。

 子供のころからこいつは不思議で、「きっと、使い古すと表面が酸化しちゃうか何かして、成分が変化しちゃうのだろう」などと思っていましたが、考えてみれば、昨日まで現役で活躍していたモノが、いきなり泡立たなくなったりもするわけで、これは全ての場合にあてはまる解ではないと考えられます。

 実は今朝、出がけにちょっとした小物(実はハラマキ)を洗おうと石鹸を使ったのですが、昨日の入浴までは現役バリバリだった石鹸が、突然泡立たなくなってしまったのでございます。まさに冒頭の叫びの状態。

 そうなると「調べてみなければ」と思ってしまうのが私の癖。いや、ロバ耳のネタにもなるので一石二鳥なんて思ったりしませんでしたとも。

 確か、所持していたブルーバックスのどれかに、そんなネタが載っていたはず、と思っても、蔵書のすべてを箱から出しているわけではないので、すぐに取り出すこともできません。もしかしたら、涙を飲んで売り払ってしまったあれやこれやの中に混じっていたかもしれません。(ああ!)

 そんなわけで活躍するインターネット。石鹸と打ち込むと、出るわ出るわ怪しいサイトの数々。アトピーが治るだの、合成界面活性剤は毛穴にたまるだの、石鹸は天然だから無毒無害だの。ああ怪しい怪しい。石鹸を盲目的に崇拝している人のページって、なんでこんなに多いんだろう。

 そりゃあ私だって、体を洗うのはボディソープより石鹸派ですよ。あの「キュキュっ」って洗い上がりが好きで。洗顔もフォームより石鹸のほうが「洗ったー!」って感じがして、夏場なんかは特にさっぱりしていて好きですね。それに、キャンプ場みたいに下水道設備が整ってないところでの洗い物は、もちろん食器の汚れをきれいに便チリ(トイレットペーパー)で拭いて、生分解速度の早い洗剤で洗いますよ。めったにキャンプしないけど。
 でも、それとこれとは違うんだけどな。きっと、「合成洗剤は全部危険!」みたいな情報に簡単にだまされちゃってるんだな。そうやって、1か100かみたいに極端へ走り過ぎることこそが危険なのに。

 ともあれそんな狂信的サイトは無視して、なるべく中立的な立場で、学術的にきちんとした裏づけのありそうなサイトを探します。
 しかし、これが予想以上に少ない。ようやく使えそうなサイトに書いてあったことをまとめると以下のようでした。

・石鹸を使い続けるうちに小さくなり、泡立ちが悪くなるのは、
 石鹸の表面積が小さくなって溶けにくくなったため。
 また、石鹸の成分である脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムが、
 水道水中に含まれる金属イオンと結合して、いわゆる「石鹸カス」になり
 性質が変わり泡立ちにくくなったため。

・古い石鹸が泡立ちにくいのは、石鹸そのものに含まれている水分が蒸発し、
 乾燥してしまったので溶けにくくなったため。

 と、まあ、こんなもんでした。

 思い出せば、小学校などではよくミカンネットに石鹸を入れていましたね。あれは最後まで石鹸がよく泡立ってくれましたが、そのヒミツは、小さくなった石鹸の表面を、あのネットが削り取ることによって、ネットの繊維に付着した石鹸の表面積が大きくなり、結果として泡立つようになったのではと思うのです。根拠となる文献はサーチできませんでしたが。間違ってたら教えてください。

 温泉地で石鹸の泡立ちが悪いのは、温泉水に含まれる金属イオンが石鹸の
主成分と結合してしまうから、ということも、前述の説明から展開して明らかに
なりましたね。思わぬ副産物でした。

 さて、小さくなった石鹸はぬるま湯で溶かして風呂場洗いに活用したり、使いさしを集めておいて、ある程度たまったところで電子レンジにかけて、大きい石鹸に再生したりする方法もあるようです。
 ウチのはどうしようかな。やっぱり親亀子亀かな。

今回の参考リンク

影ひなた疑問「石鹸が小さくなると泡があまり出ないのはどうして?」
↑出典からの転載時によるものか? 
分子を細胞とするなど笑えない誤表記もありますが、一応リンク。

Delusive Chemist界面活性剤用語辞典

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