世の中、チョコレート一色でございます。お菓子業界の陰謀にはめられていると思いつつ、普段口にしないような珍しいものや、高価で手が出ないものを試せる絶好の機会でもあります(笑) というわけで、今回はチョコレートのお話。 以前、掲示板のほうへ「以前使っていた製菓用チョコレートが手に入らなーい!」と嘆いていたことがありました。いや、まだ手に入ってはいないのですが。(売っているショップの目星はついたのですが……) お菓子としてのチョコレートには、口当たりをまろやかにするために、ミルクや香料などが加えられていますが、製菓用のチョコレートはまず「加工されることを前提にしている」のですね。つまり「素材」のひとつなわけです。 製菓用チョコレートの中でも、フランス語で「クーベルチュール」とも呼ばれるものがあります。こちらは国際基準として「カカオバター分を35%以上含むもの」とされていますが、日本ではこの規格が採用されていないため、実際に含まれるカカオバター分がもっと少ないものでも、クーベルチュールと呼ぶことがあります。 ちなみに「クーベルチュール」の意味は「覆う」ということ。溶かしてケーキの表面を覆うために使う、高級チョコレートの意味だったわけです。なめらかに覆うためには、脂肪分が多くないといけないから、カカオバターを多く含んでいないとダメなんですね。 また、製菓用チョコレートとは似て非なるものに、ベーキングチョコレートというものもあります。こちらは「カカオマス」という呼び方のほうが一般的で、チョコレートというよりは、チョコレ−ト原料そのものです。なにしろ、カカオ豆をすりつぶしたものを、他になにも混ぜずに固めたものなのですから。ビターチョコとも呼ばれることがありまして、その名のとおり苦みがあります。 このカカオマスに、ミルク、砂糖、それからカカオバターを加えてよくすり混ぜ練り上げ、冷やし固めると、おなじみチョコレートができるわけですね。 「手作りチョコなんて、どーせ買ってきたのを溶かしてまた固めるだけだろ」なんて考えているみなさま。溶かしてまた固めるのもひと苦労らしいですよ。チョコレートを削るのもひと苦労だし、温度管理とかいろいろ必要なんですから。 さて、ここでJTサンから提供されたお題をひとつ。 「なぜチョコレートとガムを一緒に食べるとガムが溶けてしまうのか」 やってみてください。ほらね、でろでろになってしまうでしょ。 ガムのベースになっているのは、植物樹脂と食品用の熱軟化性ゴム(酢酸ビニルなど)、天然ワックス(米ぬかや大豆油)などを混合したものです。(かつてはサポディラという20mほどの巨木の樹液を採集して煮込み、それを固めて作りました。)これには「水をはじき、油とくっつく」という性質があります。ガムに水をかけても溶けないけれど……ここでピンと来た方も多いでしょう。 チョコレートには、前述のとおり、カカオバターをはじめ脂肪分が含まれていますね。この脂肪分とガムベースが混ざりあうと、ガムベースを構成する物質が脂肪とくっついて、構造がばらばらになってしまい、「溶けて」しまうわけです。 というわけで、マヨネーズとガムを一緒に食べても、きっと溶けてしまうでしょうね。あまりやりたくはありませんが(苦笑) ちなみに、「服や靴底にくっついたガムは、冷やすととれる」というのはよく知られた話ですが、これは、ガムを構成する物質が、低温になると結晶構造になって固くなるからなんですね。真冬の板ガムはなかなか噛めないのもこのせい。 で、服の繊維や髪の毛、ペットの体毛にからみついてしまったガムは、マーガリンなどの油脂をもみこんで拭き取ることをくりかえしてやると、キレイにとれるそうです。油との相性もあるらしいので、(たぶん分子構造的になにかあるんでしょう)一種類で溶けなくても、何種類か試すと最終的には取れるでしょうね。 ガムの話がからんで、ようやく「サイエンス」っぽくなりました。(最後は「伊●家の食卓」になってましたが) |
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