第25回 「 唖然 」2001.09.12

 昨夜、残業を終えて帰宅した私にとびこんできたひとつのニュースがあった。

 TVには、アメリカのマンハッタン島にそびえるツインタワー、世界貿易センタービルが炎上している姿が映し出されていた。私が、事情がのみこめないまま呆然と見つめている間にも、黒煙をあげるペンタゴンや、航空機がツインタワーに激突する映像がくりかえし流され、アナウンサーが淡々と原稿を読み上げていた。

 かつて、湾岸戦争の報道を見ていても感じたことが、それはまるでよくできた映画のようだった。炎上し、崩れ落ちるビル、たちこめる煙、涙を流し恐怖におびえながら避難する人々。

 TV画面に映し出されている物事が、本当に起きていることなのか、それともジョークなのか、一瞬判断することをためらうほど、その映像は非現実的だった。まさか、これほどまでに大規模で大胆なテロが行われるとは、誰が予想しただろうか?

 ハイジャックされ、ビルへ激突させられた旅客機には、百数十人の乗客と乗員が搭乗していただろう。世界貿易センタービルには、朝早くから熱心に仕事をしていたビジネスマンや、ビルの清掃や管理業務にたずさわる人々がいただろう。消防士や警官らも含めて、奪われた人命は数千人にも及ぶという。

 この世に人間がいる限り、思想や宗教観の違いから対立する事態は避け得ないのかもしれない。戦争はいけないといいながら、武器がなくならない、争いが絶えないという事実は、厳然として存在する。

 そして、このテロリズムという愚劣な方法。軍人でも、政治家でもない一般の人々をまきこんで殺戮し、恐怖を与えて自らの主義主張を通そうとするこの行為は、けして許されるものではないだろう。

 たとえ彼らのかかげる主張が正しかったとしても、その行為が間違ったものであるならば、その主張は到底受け入れられるものではないだろう。某環境保護団体が、海棲大型哺乳類の一種を救うため、と称して、武器も持たぬ漁船を一方的に攻撃した行為のように。(正直、私はこの某環境保護団体がキライになったので、彼らの主張はかなり偏ったバイアスのかかったものとして受け止めている。だいたい保護を訴えるなら、観察会ばかりやってないで、もっと実際的な調査もやればよいのだ。)

 やりきれない不安を感じながら、今朝もTVをつけると、やはり昨夜のできごとは本当だったのだと思い知らされた。

 これから、この事件がどこまで大きな波紋を呼ぶのか、また大きな戦争が起こり、たくさんの人命が失われるのだろうのか、まだわからない。しかし、決してこのまま涙のうちには終わらないのだろう。

 怒りはさらなる怒りを呼び、憎しみは血を求める。嵐は、生まれたばかりだ。

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