お姫様の憂鬱



 お姫様は困惑していました。
白馬に乗った王子様に、馬から突き落とされてしまったからです。
こんな筈じゃなかった。
お姫様は舌打ちしました。
王子様のことは好きでもなんでもなかったけれど、彼がいつも首から下げているハート型のダイヤモンドと、白馬のルーシーは、大好きだったのに・・。
それなのに、ルーシーったら、チラッと哀れむようにこっちを見ただけで、走り去ってしまうのだもの。
まったく薄情ね。
お姫様は、舌打ちしました。

 お姫様は、小さいころから欲しいものをすべて与えられ、もういらないと、叫びたくなるほどの、愛と物に囲まれて育ちました。
ですから、愛や優しさやお金にどんな意味があるのかも見当がつきませんでした。
おなかをすかせた人を見て、お菓子を食べたら、と、本気で言ってしまうような鬼畜だったのです。
そんなお姫様には、王様も王女様も、手を焼いていました。
何処へでもいいから嫁に行かせたかったのです。
そして白羽の矢が立ったのが、隣町に住む王子様でした。
お金持ちでかっこよくて面白いという訳ではないにしろ、優しいと評判の王子様でした。
その王子様を鬼へ豹変させてしまうほど怒らせてしまったお姫様。
何をやらかしたかというと・・。
まあ、ここでは控えておきます。


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