そこへ、寂しがり屋のモグラがお姫様の足元辺りから顔を出しました。
お姫様はビックリして言いました。
「あなたは誰?」
モグラは言いました。
「私は不幸なモグラです。
少しお話しませんか?」
お姫様は、そのモグラがあまりにもみすぼらしく、陰気に見えたので、
「いいですよ。」
と、言いました。
自分よりあきらかに劣っているものには、お姫様はいつだって優しかったのです。
それに、お姫様も少し寂しかったのです。
「私は、長い間ずっと、土の中に一人で暮らしています。
目が弱くて、外に出るのもままならないのです。
「それは、かわいそうに・・。」
お姫様は口先で相槌を打ちました。
「話をしてくれる友達もいないし、みんなからは煙たがられ、
いつも一人で、ひとりごとを言っているのです。」
「それは、お気の毒」
お姫さまは、下手な役者のように棒読みでそう言いました。
「私は、何も悪いことをしていないのに、いつも寂しい思いをしているのです。
モグラに生まれたばっかりに・・。」
モグラは情感たっぷりに言いました。
「いいかげんにしたらどう!」
お姫さまは叫びました。
「自分が悪いのを人のせいにするのはおよしなさい!
幸せなモグラだっていくらだっているはずだわ。」
そう言って、お姫様はそのモグラの頭を踏んづけて、その場を去りました。
そのモグラと自分が似ていることに気づいたお姫様は、我慢がならなかったのです。
お姫さまは、誰もいない静かな森の美しさを前に、心に風が吹くのを感じました。
せっかく、友達になれたかも知れないのに、また踏んづけてしまった。
結局一人ぼっちね。
モグラも私も・・。
でも、いいわ。
あんな愚痴っぽい人と一緒にいたって、ちっとも楽しそうじゃないもの。
誰かに似た悲しげな目が、魅力的だったけれど・・。
お姫様の悲しげな目から、涙が一粒流れ落ちました。
お姫様は気づかない振りをしました。
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