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吸血鬼の悲しみ 2009.2.3


あなたを吸った
知らずに知らずに

夢中になって
し終わってしまい
首筋から顔をあげれば
ばんやりと悲しい

唇からは
あなたの匂い

最後の一滴が白い絨毯に落ちる

染みを踏んで
もう行くわ

覚醒した瞳に
残像は残らない

吸血鬼の悲しみね



素通り 2009.2.3

通り過ぎてしまった
ずっと探し続けていたあなたを

くぐりぬけてしまった
ずいぶん遠くまで来て気づいたら

引き返せない

なので

さよなら

探してたあなたを素通りした



心のせい 2009.2.3

自分で自分の気持ちに驚く
なんて曖昧で自由な心なの

おかしくて
笑ってしまう

なんて気まぐれで残酷な心なの

飽きれて
殺したくなる

私のせいじゃない

心のせいよ



ルシファー 2009.1.30

寒いね
あなた
凍えてなーい?
どこか痛いと
泣いてなーい?

私のお腹をマクラがわりに
眠っていいんだよ
私の指を口にくわえて
吸っていいんだよ

寒いね
あなた
寂しくなーい?
家に帰れずに
迷ってなーい?

私のハンカチの匂いを嗅いで
部屋まで辿り着いてみて
首輪はつけないでおくから
自主的に従順でいて

寒いね
あなた
死んでなーい?
全ての友は去って
孤独じゃなーい?

最後の最後には
私がいると思って
帰ってきていいんだよ

ボロボロになった羽をもぎ取り
こっちへおいでよ
たとえ無間地獄でも
あなたを見捨てはしないから



鳥 2009.1.30

鳥が気持ち良さそうに飛んでいる

いいな

私も飛びたい
ただ、飛びたい

雲をくぐりぬけ
太陽を素通りして



漂流者 2009.1.30

諦めているのだろうか
それとも
諦めたいのだろうか

夢というものに流離われ
流れていたいのか
流れ落ちたいのか
流れ着きたいのか

どうでもいいというのは
いささか傲慢

どうにかなるという欺瞞



きわどい 2009.1.30

痛みの中で
あなたを呼ぶ

今、目の前にいたら
きっと好き

一瞬が永遠になるくらい
きわどい今なら



りんごの芯 2009.1.30

泣きながらワインを飲んだり
食べながら吐いたり
震えながら笑ったり
してみたくなる

気狂いのふり
気狂いそのもの

どちらにしろ
痛めつけられるものなら
痛めつけてしまいたい

それなのに
なんでだろう

消えない
私がいる

りんごのようにくるくると
剥かれてみすぼらしい姿で



ナルキス 2009.1.21

あなたは私
私はあなた

あなたを思って私は泣くの
私を思って私は悲しい

思い出せない昨夜の夢を
あなたの瞼に探してみたり
愛していたの埋めてしまった
小犬の墓をあさってみたり

私はあなた
あなたは私

私を思って私は笑う
あなたを思って私は嬉しい

生まてはじめて誓った空を
あなたの後ろに探してみたり
憎んでいるのに傍にいたい
ちぎった小指を捧げてみたり

あなたは私
私はあなた

私に映るあなた・・
あなたに沈む私・・



私を呼ぶ声がする 2009.1.21

思い出の中からあなたが呼ぶ
大丈夫だよとそっと髪を撫でる
私は安らかな死人のように目を閉じる

思い出の中からあなたが切り裂く
行くての限のない孤独を暗示して
かわいそうにと刃をたてる
傷口から閃光のように飛び出す光に
私は怯えながらも目を見開き笑う

浮かびあがるあなたは
他人のようにくるりと背を向け
もう、行くよ
と遠のいてゆく

私は自由になる
過去のような明日に
別れを告げて



勝手 2009.1.21

昨夜電話に出れなかったこと
なんで謝るの?

そんなのあなたの自由じゃん
掛けたのは私の勝手じゃん
やめようよ

なんか恋みたいで重い



なくしもの 2009.1.11

去年・・
帽子をなくした
傘をなくした
マフラーをなくした
ピアスをなくした
ネックレスをなくした
携帯をなくした
財布をなくした
鞄をなくした
マスカラをなくした
口紅をなくした
ボールペンをなくした
手紙をなくした
友達をなくした
記憶をなくした

いろんなものをなくしたけれど
あなたはまだここにいる



恋の匂い 2009.1.11

朝起きたら
恋が死んだ匂いがした
クッションをどかして
毛布をはいでも
死骸がどこにも見つからない

それなのにとてもくさい

恋が死んだ匂いがして



銀河 2009.1.9

大地がゆれ
空が砕け落ちても

繋いだ手を離さないで
走りましょう
ふたり
行けるところまで



ちょうどいい他人 2009.1.9

慣れ親しみたくはない
あなたとは

いつも伸ばした指先が
皮膚に触れるか触れないかのところで
ひやひやしていたい

そうじゃなきゃ
私は常軌を逸してしまう
もしくは
急激に冷めてしまう

だから
あなたとは他人



あなたになる 2009.1.9

気を許さないというのは
とても疲れる
いつも背筋をぴんと伸ばして
きりんのように首を長くして
肩がこる

気を許すというのも
案外いらつく
ふがいない自分を見せつけられて
肉食獣のように
殺意を覚える

ふと意識を失って
時々私はあなたになる



いま 2009.1.9

いま、来てよ

それが出来ないなら

さいしょから来ないでよ



指輪 2009.1.5

誓いの指輪をあげましょう
誰にも渡してはなりません
その指輪を外す時
それはあなたが死ぬとき

誓いの指輪を奪いましょう
友のため愛のため渡しなさい
妻との約束だと嘆いて
けれど最後には捧げて

誓いの指輪をなくしたと
悲痛に顔を歪め謝りなさい
跪きもう一度誓いなさい

誓いの指輪はここよと
顎をしゃくるように見せるから
追いかけて逃さずに掴みなさい

与え奪うもの

奪い与えるもの

指輪はここよ

ほら、探してごらん



なんだろう 2009.1.5

世界一強い男も
世界一賢い男も
世界一金持ちの男も
女の人の胸に甘え
組み敷かれ
もっと欲しいと腰を浮かせ
懇願するのだと思うと
笑える

笑えるけどなんか悲しい

男ってなんだろう



女優 2009.1.5

長い年月
女は男に浮気され虐げられ
いつも泣いていたように
言われているけれど
本当にそうなのかしら?

悲しいふりを
嫉妬するふりを
していただけではないのかしら?

女を本当に傷つけられるのは
その女自身しかいないのではないかしら・・

男が満悦するから
悲劇的な素振りで
魅せていただけではないかしら?



眠る男 2009.1.5

すやすやすや
眠る男

赤ちゃんのようだけど
しっかり大人の男で
混乱する

この人は誰なんだ?
わたしのなんなんだ?

可愛いけど・・

それで、いいのだろうか。



クルクル 2009.1.5

忙しいから、
あなたと楽しもう
そう思って付き合っていたけれど
今は暇だから考える

あなたとのあれこれを・・
あれとそれとこれを・・

シッポを追いかけてクルクルまわり
考え過ぎてバターになって
食べきれないで捨てるまで



おめでとう 2009.1.5

あけましておめでとうを
あなたに言う

あなたにも
あなたにも
あなたにも
言う

過去に
今に
未来に
言う



得意 2009.1.5

ただでさえせつない恋を
もっとせつなくしてしまうのが

どうしてわたしはこんなに
得意なのかしら



運命 2009.1.5

あなたが私を好きなのが
不思議
わたしがあなたを好きなのが
不思議
ふたりが出会ったのが
不思議
いま、こうしていることも

全部が不思議で
本当は・・
なにひとつちっとも不思議じゃない

つまんないね

これって運命ってやつみたい
どっかで聞いたことあるような
運命ってやつみたい



距離 2009.1.5

会いたいのに
会えないと
安心するのは

なぜだろう?


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