かなり 実録 バレー部物語

・絆を紡いで半世紀

今年はバレー部創部50周年、そして全日本実業団は宮城県で開催される。昨年、全国大会2年ぶりのベスト8(全日本総合)進出、全日本総合に限れば5年ぶりであり、流れ的には良くなってきた。
しかし、監督に復帰した門脇が厚木事業所への異動が決まるという緊急事態。当の本人は「そろそろ転勤という可能性が前からあって、監督やっても1〜2年ってところだったので、引き受けるのもなかなか踏ん切りがつかなかったんですけどね…」と、想定の範囲内だったようだ。
1シーズンでの退任は残念なところだが、せっかく上昇気流に乗りかけた状態を失速させてはいけない…となれば、もうほとんど選択肢はないだろう。門脇の強引な説得?とバレー部への想いもある…江口が2期目6年ぶりの監督に就任した。
ちなみに門脇はリコー厚木バレー部のスタッフという可能性もあったが、空席だったRI東北の総監督に戻る形となった。

遠藤は契約任期満了にて引退、リコー沼津から帰任した鈴木はRI東北での現役続行を表明。「故障中で申し訳ないんですが、何とかお役に立てるよう頑張ります」
更にコーチの渡辺が現役復帰となった。こちらは「何か休んでいるうちに怪我が良くなっちゃって」…完全回復ではないにしろ、戦力として大いに期待できる。

実業団県予選はNittoにストレート勝ち。2チームのエントリーしかなく開催地は2枠あるため、敗れたNittoも出場する。昨年復帰した工藤はオフシーズン中にかなり減量し、動きにキレが増していた。
「去年はろくにトレーニングもしないまま出たので、全然動けなかった」と、しっかり反省点を克服している。いや、それであれだけ動けていたのも凄いことだが…自分への情けなさ、チームへの迷惑…相当な思いがあったのだろう。

また、かつて“スタメン出場すると優勝できない”と、からかわれた今野も復帰、経験値豊富なプレーで戦力に厚みが増す。今野、鈴木、吉田と190cm台が3人揃い、見栄えはより派手になった。
赤城カップでは3位に入り、全国大会へ向け着実にステップアップしている。

◇  ◇  ◇

7月7日、実業団全国大会前に壮行会も兼ねた、バレー部創部50周年記念祝賀会が催された。

バレー部部長挨拶

バレー部の歴史を築いてきた方々から、記憶を懐かしみながら「あの時」を語っていただいた。
角谷・初代監督:「若い人たちをクラブ活動で欲求不満を解消させるみたいな話もあって、それでおまえが監督やれと(笑)…私が会社を辞めたあと、どんどん強くなって凄いなーと思ってました。今日、若い人の顔を見れて興奮気味です」

白幡・初代部長:「サッカーのベガルタ仙台の社長を引き受けた時、なぜ私なのかお聞きしたところ、一つは会社の経営の経験があること、二つ目は宮城県と仙台市にゆかりのある人、三つ目はスポーツに土地勘のある人…と言われました。これもバレーボールをやってたおかげかなと思っています。
ベガルタ在籍でこういう集まりがあった時は、私は一回も乾杯の発声をしたことはありません。当然ですよね、スポーツは完勝はいいですけど完敗は絶対あってはいけないことです。今日は(関係者でないので)喜んで乾杯の発声をさせていただきます」

大友・第5代部長:「部長を務めさせていただきまして、新潟国体で優勝することができましたので、少しは役に立てたのかなぁと思います。
こんな一同に会す機会はなかなかないので、今日は酒に酔うより皆さんに酔ったという感じです。この場をいただいたバレー部の皆さん、本当にありがとうございました。
また忘れないで声を掛けてください」

他にもOB・OGから当時の思い出を披露いただき、楽しいひと時を過ごした。

「現役選手が歴史とかいろいろ感じ取ってくれたようだし、勝ちたい欲望も増したと思う」と江口。改めて50年の伝統を感じるとともに、会社の支援、先人の活躍があってこそ今があるという認識のもと、新たなる1ページをしっかり刻んでいかなければならない。

今も昔も熱い心意気は変わらない。


((( Idle Talk )))
祝賀会2次会でOBの岡本が “バレー部数え唄” が聴きたいとリクエスト。「祝賀会パンフに数え唄が載っていたので、てっきり唄うもんだと思ってたのに」と、一度も聴いたことがないという岡本の強い要望により、OB・OG一同でフルコーラス熱唱した。
何かのイベントがある度に唄っていた当時、試合に負けると『ハーフセンターの見せ度頃』を『ハーフセンターはミスばかり』に変えて唄っていたこともあった。
…宴会場の部屋は一応締め切っていたが、ここは祝の席に免じてお許しを…


・呑むか呑まれるか

全日本実業団は仙台市、利府町で開催された。RI東北としては宮城国体以来の地元開催となる。平成最後の大会、そして図ったようにバレー部創部50周年というタイミングからも、絶対に結果を残す…現役部員、OB・OG、関係者の願いは強い。
ちなみにNittoは全日本実業団初出場(阻んでいたのはウチだが…)で会社創業100周年という、こちらも記念すべき年。昨年の全日本総合は予選G敗退だっただけに、是が非でも勝ちたい思いはあるだろう。

男女共催になって2年目だが、女子は今年度からV9チャンプリーグに出場するチームは不参加となるため、実質二部大会となった。V9チャンプ所属チームはレギュラーラウンドの宮城大会として今回参加している。
女子は強弱の差がはっきりしていて、十数チームの参加では実業団大会として、もう成り立たなくなっていた。いずれは男子もそうなるだろう… 一抹の寂しさを感じる。

既に1週間前に梅雨明けしたが、他のチーム関係者に会う度、「いやぁ、涼しいよ」と言われる。京都では38℃が1週間も続くような猛暑らしく、各所でかなりの暑さ。来県する殆どのチームは涼しく感じることだろう。特に夜は熱帯夜にならないので、過ごしやすいと思われる。

さて、開会式での選手宣誓は地元チームの役割でもある。男女共催ということもあり、RI東北・鎌田主将(男子)、宮城教員クラブ・高橋主将(女子)が務める。選手宣誓の正式依頼が来たのは開催1週間前くらいだったが、鎌田は試合とは別のプレッシャーと戦うことになる。
「いや〜、キンチョーする〜! どの試合よりも緊張する」と言っていたが、過去の経験者の失敗談も聞いていたようで、周りからも期待されているし、そのストレス度は半端なかったことだろう。
で、宣誓対策として会場正面に横断幕を張った。「“リコーインダストリー東北バレーボール部”って抜けそうで… 一応カンペ代わりにした」と鎌田、その甲斐あって?ミスなく言い終えることができた。
実は重要な文言は女子側が述べるので、あとは合わせて言うタイミングさえ気を付ければというところではあったが…「スッキリ! 肩の荷が下りた」と、もう大会が終わったかのような放心状態になった。

翌日の予選Gは練習試合などでも苦戦を強いられる日本無線が相手。案の定、接戦となった。第1セット1−3から6−5と逆転するも、すぐさまひっくり返され、一気に8−14まで持っていかれた。
タイムアウト明けから永井のB、安重に替えてピンサ清藤から佐藤C、石川強打で相手の流れを食い止めると、15−18から相手ミスと石川強打、無線時間差をブロックして18タイ、ついに追いついた。
無線ライト強打ネット、石川強打20−18、無線ライト強打、永井Aフェイントで21−19。

第2セット前半はRI東北が抜け、日本無線が追いつく展開で10タイ。無線のダブリから、工藤に替えてピンサ佐藤はセカンドでサービスエース、無線時間差ミス、佐藤サービスエースで14−10、相手タイムアウトも集中力を切らさず、石川と鎌田の強打で更に2点を追加した。
終盤、梅津の顔面にヒットする無線サービスエースなどで3失点したが、最後は佐々木時間差、21−15。
全員一丸で初戦突破へ。=セキスイハイムスーパーアリーナ
工藤のトスアップ。

少し前まではメンバーチェンジさえままならない状態だったが、この試合では積極的に行い、ベンチからは勝負をかけるという意思表示が見えた。梅津のカットミスは2014年度の全日本総合で、群雄会相手に3連続SPで逆転されたシーンを思い出したが、重い雰囲気に負けることなく持ちこたえた。
ただ、全体通してチームのサーブカット精度が悪い印象があり、そこがちょっと不安。

決勝T組み合わせ抽選の結果、RI東北は準々決勝で第1シードと対戦するゾーンに入った。「地元で負けられないプレッシャーという状況から我慢強くプレーしてくれた。強化はしっかりやってきたし、自信を持って頑張っていこう」と江口が檄を飛ばす。

RI東北は2回戦からなので第5試合が初戦。相手は1回戦でTHK甲府を破り、好調そうな造幣局。その粘りと賑やかさに巻き込まれると、本来のペースを見失ってしまう可能性がある。
リコー沼津は予選Gで敗れ、この試合を応援してくれている。また日曜日となり昨日よりも知人、家族の方々が多く駆けつけてくれた。そして宮城国体でも応援部隊を見事に統率した斎藤応援団長が復活、いやが上にも気合が入る!

第1セット序盤シーソーから造幣局が3点連取5−7と抜けるが、佐々木時間差、石川サービスエースで8−9、造幣局ダブリ、鎌田強打で12タイとなった。しかしここで攻勢に出られず、逆に造幣局の時間差とプッシュ、鎌田カットミスから造幣局ダイレクトで12−15とされてしまう。
必死で挽回しようとするが、昨日のサーブカット不安定がここで露出、連続サービスエースを決められ14−18、強弱をつけた攻撃に翻弄され15−20とセットポイントを握られる。
永井A、佐々木に替えてピンチブロッカー今野投入は造幣局レフト強打アウト、造幣局つなぎミスで猛追するものの、造幣局FR強打で18−21、セットを失う。

第2セットも序盤は互角な展開から、佐々木強打、工藤に替えてピンサ佐藤サービスエース、佐藤のサーブで崩し佐々木時間差8−5でRI東北が抜ける。
造幣局は粘るが同点には至らない。佐々木時間差、渡辺リバウンドを造幣局オーバーネット、造幣局レフト押し込みはタッチネット、永井サービスエースで15−10、永井B、造幣局FR強打をブロック、渡辺軽打でセットポイント、最後は渡辺の強打で21−13と押し切った。

第3セット序盤もシーソーとなり、造幣局が3点連取すればRI東北も4点連取し9−7。東北リードながらサーブカットが今ひとつで中盤からシーソーとなり、渡辺強打、鎌田フェイントでようやく連取し17−14。
だがここでホッとしたのか造幣局タイムアウトが有効だったのか…
造幣局A、アンテナ際のボールを鎌田返せず17−16、安重弾く造幣局サービスエース、工藤Bトスも永井触れずそのままアウト、造幣局ライト押し込み、一気に逆転され17−19。
渡辺強打で何とか切ったが、造幣局レフト強打ブロックアウト18−20。鎌田軽打で1点差、しかし佐藤へのDは触れずそのままアウト、終盤はこちらのミスが目立ち19−21、無念の2回戦敗退となってしまった。

◇  ◇  ◇

やはりピックアップすべきは第3セット終盤5連続失点。やるべきことができなかったというか…鎌田も返せないボールじゃなかったし、サーブカットも安重の実力からすれば上げられたはずだし、工藤・永井の速攻もここ最近のプレーぶりから、まさか打てずの素通りアウトになるなんて考えられない。
ちょっとした気の緩みからの崩れ、そして立て直しができず、何か足枷を付けられたような動きになってしまった。

あれほど合っていた速攻が何らかの原因で合わない兆候が見えるのだから、最後のプレー、佐藤へのDクイックはバックトスであり、かなりのリスクを伴うのは明白。
結果論だし外から見ればそう思うが、極限状態ではそういう判断に至らなかったのだろう。相手だってまさか速攻だとは思ってなかっただろうし、ここで裏をかけば流れも引き戻せる。練習もしてきた。決まれば称賛されるはずだった……
本当に難しい場面、しかし結果はついてこなかった。

それにしても応援は素晴らしかった斎藤団長は汗で上半身びっしょり。普通なら相手ポイントの時は静かになるのだが、ウチはポイントしたような声援を送る。ここが他とは違う特色。なのに勝ちに繋げられないなんて、ホント応援の方々に申し訳ない。
ただ、「負けたけど、見ていて面白かったよ」との声には救われた。

最終日、3回戦で日本精工を破り、準々決勝に進出したNittoの姿があった。横河電機にストレートで敗れたものの、見事会社創業100周年に花を添えた。ホスト県として面目を果たしてくれたが、RI東北としては本来これがウチの役目という自負があったに違いない。
宮城県勢がRI東北を成績で上回るのは、1996年の都市対抗県予選で負けて以来だろうか…

予選Gで下した日本無線もベスト8入りしており、十分あったチャンスを逃した悔しさが残る。大会は攻守に冴えを見せた横河電機が、準決勝のJT東京戦をフルセット、決勝の中部徳洲会病院戦を接戦の末に下して初優勝を果たした。
これも先の赤城カップでは2戦2勝した相手であり、大会までの調整、本番で実力を遺憾なく発揮するところは見習うべきだろう。

全日本総合は全日本実業団での優勝チームが推薦される。しかし今年からV9チャンプリーグ所属チームがすでに推薦されることが決まっているので、推薦枠が浮くことになる。
そこはV9チャンプを除く最上位チームが該当するらしく、V9チャンプ勢以外でベスト8に残ったのがNittoと日本無線であり、そこで優勝した横河電機に負けたNittoが最上位扱いとなり、推薦されることになった。

RI東北は終盤までリードしながら逆転負けという、地元開催としては屈辱的な2回戦止まりという結果に終わった。
ミスが出たところは心技体として足りない部分だと思われるので、しっかり鍛え直すしかない。
ただ、大声援のもとで試合ができたことは選手にとって幸せで光栄なことだし、感謝を力に変えて次の目標に臨んでくれることだろう。

◇  ◇  ◇

9月、総合県予選は当然ながらRI東北しかエントリーせず中止、自動的に出場権を得た。
10月1週目、V9チャンプリーグの下位チームと入替戦の前に、その挑戦権を得るための大会、入替戦出場チーム決定戦が住友電工横浜体育館で行われた。
8チームによるトーナメント制で、RI東北は1回戦で実業団でも対戦した日本無線と再戦、大会前に故障者が出てベストな布陣が組めなかったとはいえ、いつものような負けパターンにはまり、フルセット負けを喫してしまった。

初戦に挑む甘さ、カットミス連発、パスが乱れる、サーブのダブリ、セカンドサーブはど真ん中、相手特定のアタッカーに為す術なしなどなど…残念ながらミス多きチームに勝利の女神は微笑まない。
「負けたら何の言い訳もできないが、良いところ悪いところを認めて、また次に進む」と江口、V9チャンプリーグ昇格の目標は絶たれたが、主要大会はこれからなので、また全員一丸となってやり抜くしかない。

((( Idle Talk )))
川村部長退任に伴う送別会が行われた。今後は庄司部長が就任し、活動していく。
川村元部長:「辞めるまでに胴上げ頼むよ、なんて軽々言ってましたけど、実は全国で勝つっていうことが大変なのは皆さんもそうでしょうけど重々承知でした。
でも…でも私達が頂点を目指さずに何を目指すのかということですよね。永遠に私は応援し続けますし、皆さん結果は出せると思うので、是非頑張ってほしいと思います」。