高中仕様ピックアップ簡易改造方法

特別付録

 SG-2000MTを持っているけど、あのピックアップと同じようなルックスにしたい・・・と思っている方は、結構多くおられるでしょう。ここでは、あの高中仕様ピックアップを、ルックスだけ似させるための簡易改造方法を説明します。

 まず、高中氏の使用しているピックアップですが、ブルー・ホワイト・ピンクの3機種のSG-2000に搭載されていたもののことです。(ちなみに、ピンクのピックアップは他の2機種と違い、かなり白いものです。)諸氏による様々な説があり、それをまず列挙します。

    @ パワーアップのために、マグネットの厚いものをつけている。
    A パワーアップのために、コイルを多く巻いている。

 この2点については、マニアの方ならよくご存知でしょう。特にブルーのフロントピックアップは、ボビンが『ハの字』状に傾き、ボビン間が広がっていますよね。しかし、ブルーのリアはフロントほどボビンが傾いておらず、ホワイトやピンクに関しては、全く傾いていません。しかし、ボビン間に隙間はあります。
 ここで、仮説を立てました。

    B ボビン間隔を開け、ピックアップの拾う周波数範囲を広げた。
    C ボビンが通常のものより細いため、両ボビンのコイル部が接触してボビンが開いて見えるだけ。

 '80年末当時に販売されていたギターで、ホワイトボビンで3点支持のものが搭載されていたのは、'80年12月に発売されたSF3000のみ(ピックアップはF-V)です。ということから想像して、'80年終盤に登場した高中氏のSG2000CWに搭載されていたピックアップは、SF3000用のピックアップボビンを使用したオリジナルのものと考えるのが自然です。しかし、ひとつだけ疑問があります。

    D 他機種のピックアップのボビンの色違いを搭載した。

 '80年12月に発売されたギターでSF-7000というモデルがあるのですが、このピックアップ(F-X)は、実はもともと2つのボビンの間隔が開いているのです!つまりCに近い状態なのですがボビンは黒です。それゆえ、このピックアップのボビンをホワイトにして作ったものが高中氏のSG2000CWに搭載されたと見るのが一番都合がよいといいますか、自然でしょう。

 ピックアップセレクターのスイッチをフロント側やリア側にすると、その音質が違うということは皆さんもよくお分かりだと思います。それは、弦のどの辺りを拾うかによって、含まれる倍音成分が異なってくるからです。つまり1つのピックアップでもボビン間隔を広げると、それだけでそのピックアップが拾う周波数帯が広がる=ワイドレンジになる、ということです。
 このような例があります。
 EMGのPUに58というモデルがあります。現在は廃番扱いになっているようですが、カスタムでは作ってくれるらしいです。この58にとって替わったものが85というモデルです。58は当時から「ノイズが気になる」などのウワサもあり、多少人気の劣るモデルでした。私の主観ですが、本当はそんなにノイズはありません。だからというわけではないのでしょうが、TOTOのギタリストであるスティーブ・ルカサーが開発に協力し、85が作られました。このときの仕様ですが、58よりはパワーアップしていることに加え、あまり知られてはおりませんが、ピックアップボビンに間隔を設けているのです。これにより、より広範囲で弦振動を捕らえることができ、そのためワイドレンジになるなど、サウンドキャラクターに大きく影響しているはずです。

 さて、高中氏のピックアップがそれを狙ってボビン間隔を広げている・・・と確定的なことを言っているのではありません。実際に2つのボビンのポールピース間隔を測り比べてみなければ分かりません。ですので@やAであることや、DのSF7000のピックアップ特注品と見る方が正確でしょう。しかし、コイルを巻き直したり、マグネットを特注するのは、出費も相応にかかりますし、私たち貧乏ミュージシャンには辛いですよね!それに、本当にマグネットが厚いのか、どれぐらい厚いのか、コイルターン数は何回なのか・・・これらについては誰も分かりません。しかも、ピックアップを正面からよ〜く見てみると、ボビンの隙間からマグネットが覗いています!

 そこで本題!『高中仕様ピックアップ改造方法』です。これはBのみの改造をするのですが、思うよりも簡単ですので、オススメです。ぜひSG-2000MTや、その他高中仕様に改造したSGを、よりリアルにしてあげましょう!

ご注意  改造時におけるいかなる責任も負いかねます。
 改造される際は、ご自分の責任において行ってください。


 まずベースとなるピックアップですが、私はSG-800Sのものを入手していたため、こちらを使います。MT用でも同じ改造ができるはずです。

 では、ピックアップをバラしましょう。手順は
  1 ボビンを巻いているテープをはがす。
  2 ポールピースネジを外す。
  3 ベースプレートの裏の固定ネジを外す。
 これで分解できます。

 MT用のものは、ポッティング(ロウ付け)されているので慎重に!ボビンから出ているリード線を切断すると、修理が厄介ですよ。


 分解できたら、マグネットにくっついているポールピースを固定させるプレートを離し、その向きを逆にする。

 よく見て下さい。ネジ穴の上下のスペースが若干違っていますよね? これを利用するのです!この向きを180度逆にする(もしくは裏表を逆にする)ことで、ボビンの間隔が1mm程度開きます。

 これをリフCWにつけるつもりなので、ボビン間隔を広げるだけの改造をしましたが、MTのフロントにつけるのであれば『ハの字』にしたいですよね。その際はこのプレートの向きを変えずに、ちょっとした工夫をします。


 あとは逆の手順で組み立てます。
 写真の上が改造前、下が改造後です。

 ボビンに隙間ができたでしょ?微妙ですが…。実物ではもうちょっと開いて見えます。


 さてMT用の『ちょっとした工夫』ですが、こんなもので簡単にできちゃうんです。
 ピックアップを分解したら、マグネットの上に厚紙を置きます。ずれないように、両面テープでマグネットに固定するといいでしょう。それを組み込むだけで、ボビンは『ハの字』状に開くんですよ。
 私の場合、厚紙を2枚重ね、0.8oの厚さにした時にちょうどいい傾き加減になりました。


 これがリフMT用にボビンを『ハの字』状に広げたもの。
 どうですか?横から見ても綺麗に傾いています。

 ちなみに左の改造は、マグネットを'80年代初頭までのSG(OPG-1)のものに交換しています。なぜって?それは、'80年12月にはまだSG-800Sは発売されていなかったからです。ちなみに、OPG-1も800S用もアルニコですが、その種類がわかりません。(アルニコはアルミ/ニッケル/コバルトを主成分とする合金で、その割合によってアルニコU・アルニコXなどの種類があります。)


 これはSG2000改1用にストックしてあるSG800Sのピックアップです。

 改造は上記のものに加え、マグネットをSG2000用OPG-1(DATE 53.6.21/53.6.28)のアルニコに交換してあります。理由は『SG2000改2』にも書きましたが、高中氏のギターにこのタイプのピックアップが搭載された時にはまだSG800Sは発売しておらず、SG800Sのピックアップのマグネットの材質も分からないことから、OPG-1のアルニコを使っている可能性があるからです。
 もうひとつの理由は、同じピックアップを2台のギターに積んでも面白くないからですね。


 SG2000用OPG-1(DATE 53.6.21/53.6.28)です。
 これを分解し、SG800Sのマグネットと交換しました。
 ピックアップの音質は、ほぼマグネットで決まります。

 SG1000/2000のピックアップカバーをはずした時、ボビンを巻いているビニールテープの色が違うことに気付きます。
 今のところ、青・緑・黄色を確認していますが、ピックアップそのものは同じ物のようです。
 カバーを外すとボビンに隙間があることも分かりますが、ボビン上部の表面そのものが通常の物より細いためです。


 これは私のMTのフロントピックアップです。

 私のMTは、購入した楽器店による「リアル改造」が施されていますので、私が改造したものではありません。
 この改造に関しては、この楽器店がお分かりになったとしても、くれぐれも問い合わせはしないで下さい。持ち込みの改造は行っておりませんし、どのように改造したかも教えてくれません。

 ちなみに、MT用のピックアップにはU.S.A.製のアルニコXが使われています。


 横から見ると、ボビンが「ハの字」状になっているのがよくおわかりになると思います。



SG-2000MTのピックアップについて

 
SG-2000MT用のピックアップです。
フロント・リアともエスカッション付きでの販売です。
フロント用QC440900 / リア用QC441000
どちらも13,600円(税抜)です。
ちなみにエスカッションのみでは
フロント用QC441600 / リア用QC441700
どちらも840円(税抜)です。(えっ?もう買えないの?)
  SG-2000MTのピックアップの裏です。
三端子ですからバイサウンドにもできます。
取り付けられるギターの機種番号や
ピックアップデイトのスタンプは
廃止されてありません。


 
MT発売以来、特に文句の多かったのが、
ピックアップボビンを巻くテープの裏の色。
2002年に入ったあたりから変更され、
現在はテープの裏が白から黒のものになりました。
あとは、ボビンに空いた穴がなくなれば…
欲を言えば、ボビンの色と太さも…
   上がMT用、下がSG-800S(改)のものです。
ボビンもエスカッションも色が違いますよね。
これもルックスに影響してきます。
(でもエスカッションは黄ばんでおります・・・)
高中氏のものは下のものと同色です。
ピンクのSG-2000はもっと白いものでした。



これがSF7000のピックアップだ!

SF7000のピックアップ、F-Xです。
どうですか?この隙間!
これが結論か!?



これがSG2000PINKのピックアップだ!

SG2000PINK(本物)のピックアップです。
ブルーやクリーミーホワイトのものとは
全く色合いが違います。
ちなみに、エスカッションは
前後ともフロント用の低いタイプのものです。
以前はヤマハ横浜店にて展示されていましたが、
現在の所有者はある方です。
まだ所有者が公開していませんので
お名前は伏せておきます。



これがSG1000LHのピックアップだ!

噂の「蟹のお礼」のSG1000LargeHead(本物)
のピックアップです。
GIBSONのオリジナルPAFという話は
これを見れば答えが出るでしょう。
きっちりとベースプレート交換がされています。
このギターの所有者は秘密です。
ちなみに、ブリッジはナロータイプになっています。