観賞日記
インビクタス
シナリオ | 展開 | キャラ表現 | 映像 | 満足度 | |
3 | 2 | 4 | 3 | 3 |
本日はラグビー関連映画「インビクタス」を観に行きました。 会社のラグビーマニアが試写会で良かったと言うので 全く興味は無いのだが観に行ってみた。 南アフリカの政治とラグビーを関連させた 感動ストーリーノンフィクションということで 社会派映画なのでエンターテインメント性は皆無なんだろうなぁ とテンションは上がらない。 まぁたまには違うスタイルの映画を観るのも 勉強になるか?とお気楽観賞してみました。 舞台は南アフリカ アパルトヘイトに支配されていた差別社会に対して 活動していたネルソン・マンデラ。 反逆罪として30年間刑務所に投獄されていた経緯を経て 1990年に釈放され、 1994年の大統領選挙に勝ち上がる所から話が始まる。 白人支配の南アフリカが変わる。 抗争を続けてきた白人と黒人の立ち位置が変わる事は、 白人から見れば他国と同じように排除される。 黒人社会、黒人国家になっていくことが明らかだった。 そんな抗争の歴史と地位の変遷を踏まえたうえで マンデラ大統領が取った行動とは? スポーツを通じて白人と黒人が一つになる ラグビーの精神 「一人は皆の為に、皆は一人の為に(One For All, All for One)」 を国家の変革に体現したノンフィクション映画 というお話です。 ざっくりとした感想は ゲバラの映画を観た時と同じくノンフィクションの内容を知っている 知識補完出来る人が観ることで感動の度合いは変わる映画なのですが 誰が南アフリカの事情に精通しているのでしょうか? また、 1995年のラグビーW杯の内容や結果について 誰が精通しているのでしょうか? 殆どの日本人からすれば感心の無い事象を題材に扱っているので ある程度の入り込めない部分は理解しておいた方が良いです。 それでも、 マンデラ大統領の個性と人格についてはしっかり表現出来ており 各人や国民の 「心の変化」 が動いていく様を映像化出来ている点は素晴らしい。 マンデラ大統領のテーマは 「赦し(ゆるし)」 抗争を続けて戦っていた相手と協力共存する事が 南アフリカにとって大事な政策だと。 白人は黒人に排除される、 黒人は白人を排除していくという概念を変えていく為に マンデラは自らの言動を持って各人に諭し、 「赦し」の考えを説いていく。 共存共栄する為の指標に 白人に人気のスポーツラグビーが用いられる。 黒人にはサッカーが人気スポーツで、 白人で占められる南アフリカ代表のスプリングボクスは 黒人からすれば白人の象徴、 しかも世界戦では全く勝てない弱小チーム。 南アフリカのスポーツ評議会では、 国家が変わる今、チームカラー、エンブレム、名称全てを変更し、 新しい指標として再生させるべきだと満場一致で採決が下る。 そこにマンデラは 白人の象徴を排除する考え方は反感を買うだけで共存していけない。 反感が反感を呼ぶだけでは抗争と変わらない。 白人への反感を「赦す」事で国は一つになって行けるのだと諭す。 これまで通り金と緑のユニフォームをまとうスプリングボクス。 黒人にも関心を持ってもらう必要が有り、 チーム認知と試合結果が求められる。 白人で占められる代表チームに 黒人居住区に行ってラグビーの魅力を伝える行動を取らせ 主将ピナールを官邸に呼び 刑務所生活での苦悩に打ち勝つ語録を伝えチーム力の向上を促し 黒人大統領と白人主将との握手が紙面に飾られる。 スポーツが国民を一つにしていく最大で最強の政策として 1995年に南アフリカでラグビーW杯が開催される。 国民全員の関心事として 代表チームが勝ち上がる事で国民が一体化していくと。 後はご存知の通り? W杯を勝ち上がり優勝する絵が再現されます。 終盤はこのラグビーシーン、国民の心の変遷が繰り返し表現されますが ごくごくオーソドックスなフローなので ラグビーやスポーツに興味が無いと魅力半減です。 決勝戦前日の主将ピナールが 彼女にマンデラ大統領の事を話すシーンが一番印象に残っています。 30年間も環境の悪い刑務所に閉じ込められ 戦い続けていたマンデラに対し 「本当に人は赦す事が出来るのだろうか?」 と悟るシーンは象徴的でした。 勿論、疑念を表現しているシーンではなく、 それだけ凄い言動を取れる人物に対する敬意の表れ。 自分も含め人は変わる事が出来る事を 重く重く表現しているシーンには感動しました。 ヤフーレビューでは総じて評価が高い映画なのですが、 映画の構造や構成に関して批評すると、 テーマとスケールを縮小させれば、本当に失礼な言い方になるが スクールウォーズと同意と言ってもいい映画フロー。 確かに国家規模、人種差別といった 壮大なテーマの感動ドラマなのですが よくある、 スポーツや音楽で一つになれると言ったありがちシナリオと展開では 僕の映画批評の琴線には全く触れる事が無い・・・。 勿論、憎しみいがみ合っていた者同士が 「赦し」 の寛大な思想を表現して 平和を産み出すテーマと表現は評価は出来ますが テーマに沿ったイベントを重ね、 個人規模から組織規模、国民規模に拡張していくだけの流れでは 素直な作り過ぎて、先も見え過ぎ物足りなさを感じる。 まぁこういうノンフィクション映画に 手法やアクセント、驚き、意外性を求めるのは 間違っているのは分かっているが、 純然たる作りに落胆した事は伝えるべきかと。 違ったうがった感想を記述すれば 「We can change」 と民衆を取り込みセンセーショナルな当選をした オバマ大統領に対する批判映画とも取れなく無い。 マンデラを見習えと言わんばかりの映画でもあり、 オバマは何を「Change」したんだ? と国民の現状に乗っかった作品と言えなくもない。 なぜ今マンデラなのか? そこを読み取ると、 南アフリカ開催のサッカーW杯のアピールやイメージ刷り込みと オバマ大統領へのメッセージ性を込めた商業映画と取れなくも無い。 ここまでの偏見は不要だが 素直にノンフィクションを楽しみ、マンデラ大統領の個性と思想を感じ取り 南アフリカの人種差別問題をラグビーを通して変遷していった流れを 感じ取ることを楽しみましょう。 まぁ一言言うなら 「人種差別や抗争の軋轢を寛容な赦しで超越した感動作・・・」 「テーマやフローは普通ですが・・・。」 |