今日は同僚の入っている京都シティーフィル合唱団ほかによるバッハの「ヨハネ受難曲」全曲演奏会を聴きに、京都北山の京都コンサートホールに行ってきた。
 バッハの受難曲といえば、「マタイ受難曲」の方は、これまで実演も含めて多くの演奏に接してきたが、「ヨハネ受難曲」の方は、敬愛するカール・リヒターのCDですら通して聴いたのは数回のみ、実演を聴いたのは今回の演奏会が実は初めてである(そもそも演奏会で取り上げられる機会もマタイに比べてはるかに少ないであろうが)。
 私の中で、ヨハネはマタイやロ短調ミサ、さらに多くの名作カンタータに比べてとらえどころのない曲だという意識が今まであったということを、正直に言わなければならない。しかし、今日、京都シティーフィルの実演に接して、すべてではないかもしれないが、ヨハネの魅力を自分なりに”再発見”することができた。
 ヨハネの魅力は何と言っても全曲にちりばめられたドイツ・コラールにある。 京都シティーフィルの演奏は、「コラール」の「静」の部分と、「合唱」の「動」の部分をくっきりと描き分けていて見事であった。バッハの音楽に”ロマンティック”という言葉を用いるのが適切かどうか分からないが、「コラール」ではロマンティックな感情を憧れをもって美しく、「合唱」ではバッハの対位法をダイナミックに熱く表現していた。レベルの高い伝統ある合唱団であるから、ピッチが合っているのは当然として、個々の団員に指揮者の意図が明確に伝わっていたように思う。
 ソリストの歌唱もよかった。北村敏則氏のエヴァンゲリストは、全曲を通じて安定しており、真摯な歌いぶりが印象に残った。私がファンのアルト、福原寿美枝さんのアリアもいつものごとく見事だったが、ソプラノの佐藤路子さんによる第9曲のアリアは、文字通り”喜びの足取り”で素晴らしかった!
 オケをやっている人間の立場から見て、上で述べた第9曲のソプラノ・アリアにおけるフルートは、軽やかできらきらしていて見事なオブリガートだった。あと、通奏低音として最初から最後までほとんど弾きずっぱりだったテレマン室内管弦楽団のチェロ・トップは、エヴァンゲリストらとの息がぴったりで、オケの陰のMVPは文句なしにこの人だろう。
(2007.11.11)