ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.376


フランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn) アレクサンダー・ロンクィッヒ(P) (EMI CDC 7 54041 2)
 
このソナタの聴きどころは最終3楽章のロンド。ロンド主題の楽しさはモーツァルトの数あるソナタの中でも屈指といえる。冒頭ピアノだけで明るい印象的な主題が奏された後に,今度はヴァイオリンで同じ主題が奏される。この楽章では,これ以降もピアノとヴァイオリンが「交互」に旋律を奏するというパターンが多く,2つの楽器の陽気な対話を聴くようなおもしろさがある。実はこの楽章のロンド主題はオーストリアのリンツ西方のインフィールテル地方の民謡から取られたという説があり,たしかに口ずさみたくなるようなノリのよさがある。実際にこの曲を弾いてみると,ピアノもヴァイオリンも決して技巧的には難しくないのだが,重たくならずにしかも十分歌わせるのは決して簡単ではない。ソリストのセンスがたちどころに分かってしまうこわい曲でもある。

*MIDI:第3楽章(Rondeau (alegretto grazioso))