弦楽四重奏曲 変ホ長調 K.428


コチアン四重奏団 (DENON 33C37-7538)
 
記念碑的な6曲のハイドン・セットの中では最も地味な1曲かもしれない。有名曲,人気曲というのは大抵口ずさみたくなるようなメロディーを持っているものだが,この曲ではそれが少ない。その代わりにこの曲は「縦の弦の響き」がおもしろい。メロディーよりも和声で聴かせる曲というべきか。学生時代に入っていた音楽サークルで素人四重奏団 を組んでモーツァルトの曲をやったが(私は下手な第2ヴァイオリン),この曲は実際に弾いてみると本当に響きが楽しい。現代音楽のような「モダン」な響きがする箇所がとくに前半の1,2楽章にはあるのだ。
 文句なく楽しいのが急速な最終4楽章。第1ヴァイオリンの急速なパッセージはプロでないと完璧に弾くのは無理だが,それにも増して私が好きなのは,第1ヴァイオリンで静かにゆったりと歌いだされる優美な副主題とヴィオラの掛け合いである。これら急速な主題と優美な副主題が少しずつ変奏されながら交互に現れる対照の妙は四重奏の醍醐味で,スコアを見ながら聴くと大変おもしろい。

*MIDI:第4楽章(Allegro vivace)