弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465「不協和音」


ジュリアード四重奏団 (Columbia LP)
 
第1楽章の序奏部にこの時代の音楽としては珍しい不協和音が使われていることから,この曲に「不協和音」という名前がついたことはよく知られている。しかし,この序奏部を除けば,K.465はハ長調という調性もあり,6曲のハイドン・セットの中でも大変明快な音楽である。第1楽章主部の明朗なテーマがさりげなく入ってくるときの心地よさ。モーツァルトはこの主題を際立たせるために意図的に不協和音の序奏を置いたとみえる。暗と明の絶妙なコントラスト。この曲はこの第1楽章も素晴らしいが,最終第4楽章の無窮動的な躍動感も見事だ。両端第1,第4楽章は速いテンポの推進力に富んだ楽章だが,とくに第4楽章は「一気呵成」という表現がふさわしい音楽で,全く息をつく暇がない。
 名ファースト・ヴァイオリンとして著名なロバート・マンが長年率いたアメリカの名門ジュリアード四重奏団のLPは昔繰り返し聴いた演奏で思い出深い。ジュリアードは完璧なアンサンブルを武器に速めのテンポでそれこそ一気呵成に進んでいく。ゆったりしたテンポのウィーン情緒を漂わせた雅な演奏もあるのだが,この曲に関しては,ジュリアードのようなスピード感溢れた演奏が私の好みである。並の四重奏団なら確実に破綻をきたす速いテンポで一糸の乱れもなく,しかも無機質にならぬところがジュリアードのスゴイところだ。MIDIはこのジュリアードの演奏をイメージして作成した。

*MIDI:第4楽章(Allegro)