Seiji at Piano Recital 2008


 2008年10月12日に次男のせいじのピアノ発表会があった。 ”発表会”とは、コンクールを除けば、ピアノ教室にとって1年に1回の大イベント。ピアノを習っている本人はもちろんのこと、親も自分の子がどのような演奏をするのか期待と不安をもって見守ることになる。とくに、今年は先生がかわってから初めての発表会だったから、ふだんはピアノのことは”妻にまかせている”私も聴く前から力が入らざるを得ない。
 せいじは元々お客さんの前で弾くのが嬉しい性格のうえに、前からとても楽しみにしていたスタインウェイのフルコンサートグランドピアノが弾けるとあって、ソロで演奏する2曲については、私から見てもとても張り切った演奏をしていたと思う。しかし、張り切れば張り切るほどよい演奏が出来るとは限らないのが実演の難しさで、とくにショパンはホールの残響に合わせたペダリングや繊細なタッチが不足していたが、直前の小学校の修学旅行で2日間ピアノが弾けず、帰ってきてからすっかり調子が狂って前日まで泣きが入っていたことを考えると、その状態からよく持ち直したと思う。

…ただ、これで”燃え尽きた”のか、発表会の最後にした私とのヴァイオリン デュオの曲であるドヴォルザークのヴァイオリンとピアノのためのソナチネ作品100はボロボロであった。もっとも、こちらはソロの2曲に比べて明らかにせいじ自身が準備不足という面があった。私もボロボロであったので、この曲に関しては、2人とももっと研鑽を積まなければならない。…ということでこの曲については、せいじも私もさらなる練習を続けたのであった。その成果?については別のページで報告させていただきたい。

●ドビュッシー 「子どもの領分」より「ゴリウォーグのケークウォーク」 (Seiji, 2008.10.12録音)
 この曲はリズム感が命。躍動するリズム、頻繁に交代する”緩急”、微妙な”休符の間”を、自然にかつ緊張感を持って表現するのが難しい。穏やかな中間部は下手に演奏すると変化に乏しく退屈きわまりない。この曲の演奏で「やっぱりスゴイよね!」と家族一同感嘆していたのが、故人だがイタリアの天才ピアニスト、アルトゥール・ベネデッティ・ミケランジェリが1971年に録音した演奏
(上のジャケット参照)。なぜ、この人が弾くと、他のピアニストが弾く演奏と全然違うのだろうかと…。ベロフやルヴィエもフランスを代表する一流ピアニストのはずだが、ミケランジェリの演奏は彼らの演奏とは次元が異なる。修学旅行後の”悲惨な状態”から何とか持ち直したのも、ミケランジェリの演奏を繰り返し聴き直したおかげかもしれない。




●ショパン ワルツ4番 ヘ長調 「華麗なる円舞曲」 (Seiji, 2008.10.12録音)
 別名「子猫のワルツ」。「子犬のワルツ」ほど知られていないが、確かに子猫が鍵盤の上を跳びはねてるようなパッセージがある。せいじにはホールの音や残響をよく聴きながら、タッチやペダリングを精密にコントロールする、その場に応じた”適応力”を身につけていくことが今後は必要だ。家で弾いているアップライトピアノと、先生の家のレッスンで使うグランドピアノからして性格が違うし、ましてやスタインウェイのフルコンサートグランドなど、このような発表会で年に1回弾けるかどうかだ。そこが自分の楽器をいつも持ち歩いて弾いているヴァイオリニストとは大きく異なる点である。ピアノは鍵盤を叩けばとりあえず音は出るが、ホールの環境、楽器をリハの短い時間で見極め、どのようにベストの音を出すのかという点に、ヴァイオリンとはまた違った難しさがあることを感じる。
 ちなみに、ワルツ4番の星史お気に入りの演奏は、マリオ・ジョアオ・ピリスが1984年に録音したエラート盤。緩急のつけ方が素晴らしいということらしい。




(2008.11.24)