Seiji at Piano Recital 2010

   

青字: Fumiのコメント
緑字: トコのコメント

  次男のせいじが今のピアノの先生にかわってから早いもので4年近くがたち, 教室の発表会で演奏するのも3回目となる。 毎回,せいじのピアノ・ソロと私のヴァイオリンとのデュオという形で 出演させていただいてきた。 発表会では,曲目を何にするかが先生と本人がいちばん頭を悩ますところ。 生徒が無謀な希望を言って先生に却下される場合もあるし, 逆に先生が提案した曲を生徒が気に入らない場合もある。
 今回,せいじはロマン派の曲を中心に何曲か候補として先生に希望を伝えたが, 本命のブラームス ラプソディーが先生の考えとも一致したのは幸い。エルガーのヴァイオリンソナタの伴奏を聴くと,せいじも力強い音を出せるようになってきたので, ブラームスの重厚な音も出せるのではないかというご意見だった。せいじが発表会でブラームスのラプソディーを弾きたかったのには,もちろんこの曲が好きだということもあっただろうが,女の子が軒並みショパンを弾くということで(「幻想即興曲」,「別れの曲」など),自分は違う作曲家にしたかったという天の邪鬼の気持ちもあったかもしれない。せいじもショパンは好きだが,ショパンだけが特別に好きだというわけではない。私の洗脳教育?の効果もあってか,ベートーヴェンやシューマンといった独墺ものも好きである。やっぱり女の子はショパンに憧れる気持ちが男の子より強いのだろうか。
 さて,演奏の出来という点では,小さなミスはいくつかあったものの,本人評価でも満足だったということだし,いつもはすごいすごい辛口の師匠にも「成長を感じられる演奏だった」と合格点をもらって本人も私もホッとした。本番前最後のレッスンで先生に「うまく弾けてるし,よく練習してると思う。でも,感心するけれど感動しない。どう表現するか自分でよく考えて演奏しなさい」と言われたせいじは,激しい部分をゆっくり,たっぷりと重々しく弾き,逆にゆっくり歌う部分を速めに演奏することにした。ベートーヴェンを弾くときとは逆のイメージでということらしい。本番まで1週間で演奏を大きく変えるのは,せいじにとっては少し勇気が要ることだったかもしれないが,自分なりによく考えた演奏が本番で出来たことはよかったのではないか。




 デュオの方は,9月中旬のびわこホールでの演奏会が終わってから曲を決めたのだが, どうせならブラームスでかためようという話になり, 試しに合わせてせいじも気に入ったブラームスのヴァイオリンソナタ3番の1楽章をすることにした。 もちろん私が大好きな曲である。 このソナタのピアノパートは決して単なる伴奏でなく, リズムが錯綜しているうえに,技術的にはヴァイオリン・パートより大分難しい。ソロで体力,集中力を必要とするラプソディーを弾き, 続けてこのソナタの伴奏をするというのはしんどいのでは?と思っていたものの,若いせいじには問題なかったようでホッとしている。
 録画を聴き直して,音程が悪かったり弾き損ねているところは, ふだんの練習でも失敗しがちなところがほとんどで, 体に覚え込ませるまで練習することの大切さを改めて痛感。ソロのラプソディーはいかにもブラームスらしい重厚な傑作であるが,ピアノ伴奏でも重厚なブラームスのヴァイオリンソナタは,ヴァイオリンは私の倍くらい音量がないと,大きいホールではピアノに対抗できず厳しいというのが正直なところ。でもこの2ヶ月余り,あーでもない,こーでもないと言いつつ,二人でアンサンブルを作っていく作業は楽しかった。日々成長していく息子と,年々衰えていく私。 デュオの演奏で,お客さんに「お父さんが足ひっぱっているよね…」 と言われないよう(もう言われているかもしれないが)私もがんばって練習しよう。
 
録画で聴くと,ピアノ(スタインウェイ)の音量の方がヴァイオリンの音量より大きいという感じがするが,実演ではさらにピアノの中低音が耳に飛び込んできてヴァイオリンに勝っていた。ただ,今の先生の教室にかわってきて3回目の発表会ということもあり,ホールにも慣れて,2人ともちょっと余裕が出てきたのは確かである。
 でも,ホールの怖さはお互いの音が聞こえにくいこと。終わってから,「あのウネウネ弾くところ,なんでお父さんはリハと違うテンポで弾くの?」と文句タラタラの次男。「リハで合わなかったから,合わせやすいように,わざわざ遅くしたんだ!」と反撃の父。もう本番は終わったんだからケンカしなくてもいいのに…トホホな父子である。





(2010.11.20)