Coventry Carol


 このルネサンスを感じさせる古いキャロルの名の由来となっているコヴェントリーは英国の大都市バーミンガムを東へ30キロほど行ったところにあるウェスト・ミッドランズ州の市である。なぜ"Coventry Carol"という名がついたかといえば,15世紀の"Coventry Pageant of the Shearmen and Tailors"(コヴェントリーの刈り込み人と仕立て屋の芝居)という劇の中でこのキャロルが歌われるからである。劇中では,ヘロデ王の軍隊がベツレヘムにやって来て赤子の大虐殺を行うシーンの直前に,ベツレヘムの女性たちがこのキャロルを歌う。ルネサンス調の雅な響きの中にも暗い感情がただよっているのも,ヘロデ王の残酷な悪行を暗示するためだろうか。
 このような曲のいわれは別にしても,純粋にキャロルとして"Coventry Carol"はすばらしい。少し後の時代にダウランドが書いた数々のリュート・ソングを思わせるメランコリックな趣があって心に沁みる。