鉄道


■「英国鉄道物語」

小池 滋 著(晶文社)¥2,300
 世界で最初に鉄道を走らせた英国の鉄道の歴史を,その歴史,社会的背景,当時の興味深いエピソードや鉄道ミステリーに至るまで縦横無尽に語った名著。おそらく英国の鉄道に関してこれを越える本は今後現れまい。著者は鉄道が専門ではなく,本来は日本のディケンズ研究の泰斗であるだけに,ヴィクトリア朝時代についての博識ぶりが記述に深みを与えている。


■「イギリス鈍行列車の旅」

小池 滋 著(NTT出版)¥1,262
 上と同じ著者による,これはぐっと気楽な英国鉄道旅行記。英国の鉄道を知り尽くした人であるだけに,平易な語り口ながらその観察・指摘は鋭い。


■「イギリス=鉄道旅物語」

原口隆史 文・三浦幹男 写真(東京書籍)¥1,700
 英国に旅行・滞在するとき,鉄道を利用しようと考えている人の参考になる本。とくに保存蒸気鉄道の旅行記やリストは,実際わたしも英国滞在中大いに利用させてもらった。カラー写真が多いので,見るだけでももちろん楽しめる。


■「三省堂図解ライブラリー 19世紀の鉄道駅」

F・マクドナルド 文/小池 滋・和久田康雄 訳(三省堂)¥2,136
 この本の編集顧問はBath駅も管轄しているGreat Western Trainで勤めた人。それだけに,19世紀の鉄道駅といっても自然と大英帝国時代の英国の鉄道駅がメインに登場する。当時の駅を再現したカラーの絵が実に楽しく,自分もそこにいる気分にさせてくれる。


■「クロスセクション図鑑 機関車」

M・ジョンストン 文/赤木昭夫 訳(学研)¥1,350
 これも原著はロンドンで発行されただけに,英国の機関車が大活躍。元祖ロケット号から最新の電気機関車まで,その仕組みがわかるように,輪切りにして図解している。


■列車(ビジュアル博物館)
ジョン・コイリー 文(同朋舎出版)¥2,800
 最初に作られた蒸気機関車から今現在活躍する高速列車までを掲載した美しい本。鉄道の写真だけでなく,客車の内装,駅員の制服,鉄道模型など,様々の角度からの記述が魅力。


■Railways

Althea and Edward Parker 文(A & C Black)£7.50
 鉄道が現在の形になったルーツから説明。車輪の形一つにしてもいろいろの工夫がされているのだと,子供に理解させ,鉄道の歴史が楽しく分かる本。


■Railways & Trains
Caroline Young & Coline King文(Tiger Books International)£6.95
 蒸気機関車が最初に作られた時の経緯や,機関車の進歩の説明がされている。時代時代の乗客の様子も彼らの衣装と共に興味深い。リニアモーターカーまでの説明もある。


■「絵入り 鉄道世界旅行」

小池 滋 著(晶文社)¥1,845
 この本は「英国」だけでなく「世界」が対象なので,英国について書かれている箇所は一部だが,「イギリスの鉄道博物館」で,第2次大戦後まで,全国を走る国鉄というものがなく,全部私鉄だったからこそ,それぞれの鉄道独特の個性の差が見られたという著者の指摘は,当たり前なようでさすがに慧眼である。そういえば英国の保存鉄道を走っている蒸気機関車が何とカラフルで個性豊かなことか。「映画のなかの鉄道」でヒチコックの「バルカン超特急」,「絵画のなかの鉄道」でナショナル・ギャラリーにあるターナーの「雨,蒸気,スピード」を取り上げられるのも氏ならでは。ターナーの描いた絵は,Great Western Railway (GWR)の大型蒸気機関車がロンドンを出て,今でも健在のメイドンヘッドのレンガつくりのアーチ橋を渡るところだという。GWRであるから,この機関車は南西部のバースやブリストルに向かうところだったに違いない…ということを想像しながらこの絵を眺めると,一層興趣が湧く。


■「ロンドン発英国鉄道の旅」

三澤春彦 著(光人社)¥1,800
 この本の内容はタイトル通りである。著者はアマチュアの鉄道マニアで,1993年から4年間ロンドンに滞在した人。ロンドンの九つのメイン・ターミナルから出発するルートを順に取り上げている。小池氏の著作のような歴史や文学に関する薀蓄はあまり出てこないが,実際的な乗り方のコツといったものは随所に書かれているので,実用的にも役立つだろう。この著者,パディントン発のインターシティでバースにも行っている。「バースの町で見つけたアライグマの絵入りバス」として著者撮影のバスの写真が載っているが,Badgerは「アナグマ」であって,「アライグマ」ではない。こんなこと書くとバースの人に怒られるぞ!


■「See Britain By Train」

Paul Atterbury, The Automobile Association, Basingstoke (1989).
 これは「車」のAAが出している「英国列車旅行ガイド」である。全120ページとそれほど大部な本ではないが,イングランド南西部からスコットランドまで,見どころがぎっしりと詰まっている。しかも常時運転されているBritish Railの他に,各地の保存蒸気鉄道も数多く紹介されており,鉄道ファンの便宜をはかっている。オールカラーの写真と詳細なMapで全体的に非常に見やすいのもいい。