ルース・エインズワース


ねこのお客(かめのシェルオーパーのお話1)
ルース・エインズワース 作/河本祥子 訳(岩波少年文庫)¥600

 マンチェスター生まれの女流作家ルース・エインズワースは,サフォークの海辺の小さな町で育ったためか,海,砂浜,岩,洞穴など海辺の風景をたくさん作品中に盛り込んでいる。優れたファンタジー作家になるためには,人並みはずれた豊かな想像力を持っていることはもちろんだが,妖精や魔女が住んでいる大自然を知る必要がありそうだ。「かめのシェルオーパーのお話」シリーズは,冬眠から覚めたお話上手のかめシェルオーパーが,キャンディおくさんと仲間の動物たちに不思議で楽しいお話を語り聞かせるという設定。この第1巻では,魔法の力を持つ黒猫が,親切にしてくれた(ちょっとやそっとの親切ではないところがミソ)おじいさんに恩返しをする「ねこのお客」,伝統的なマザーグースをうまく使った「ドングリ人間」など10話が収められている。


魔女のおくりもの(かめのシェルオーパーのお話2)
ルース・エインズワース 作/河本祥子 訳(岩波少年文庫)¥600

 「ねこのお客」に続く「かめのシェルオーパーのお話」第2弾。村のおくさんたちと仲良くなろうとしたちょっとドジな魔女の大失敗とハッピーエンド,妖精の世界での不思議な体験とそこからの脱出劇を描いた「みどりの服の踊り子たち」など13篇を収録。どのお話も短いが,バラエティーに富んだ内容と語り調の優しく柔らかい文章が小さな子どもにもファンタジーの魅力を十分教えてくれることだろう。それにしても,お話の語り部が人ではなく,冬眠から覚めた「かめ」というのが実にいいではないか!このかめさん最後にはまた冬眠に入ってしまうのだが。