リチャード・ヒューズ


まほうのレンズ
リチャード・ヒューズ 作/矢川澄子 訳(岩波少年文庫)¥600

 ウェールズ出身で本格小説「ジャマイカの烈風」の作者として有名なリチャード・ヒューズは,一方で子どものための奇想天外なファンタジーを残した。本書は「クモの宮殿」,「ウラナイデクダサイ」の2冊の童話集から14篇を選んだもの。標題作で人間と人形をあべこべにしてしまう不思議なレンズのお話「まほうのレンズ」,中古のバイクを乗り回しているつもりがいつのまにかワニにまたがっていたという「ウラナイデクダサイ」など変テコで愉快なお話に加えて,木の人形の哀しみが心を打つ「ガートルードと人魚」のようなしみじみとしたお話もある。個性派絵本作家井上洋介の味のあるさし絵もいい。