ジョーン・ロビンソン


思い出のマーニー(上)(下)
ジョーン・ロビンソン 作/松野正子 訳(岩波少年文庫)各¥600

 ジョーン・ロビンソンはバッキングシャーに生まれ,ノーフォークの古い街キングズ・リンを作家活動の拠点とした。海辺の村にやって来た少女アンナ。彼女は複雑な生い立ちを背負いながらこれまで生きてきた。そのためか,ひねくれているというわけではないのだが,周囲の人に対して屈折した感情を抱いている。そのアンナが古い屋敷に住むマーニーという同じ年頃の少女と知り合う。二人の交流とやがて起こる不思議な事件…。現実と夢の世界を行き来するようなファンタジー。それも冒険ではなく,主人公アンナの心の動きや葛藤が中心となって物語が進む心理ファンタジーともいうべき作品。ファンタジーでありながらも,物語の背景には家族問題,子どもの養育問題などのきわめてシリアスな問題がからみ,テーマは非常に現代的である。