I Heard the Bells on Christmas Day


 このキャロルの作詞者は19世紀アメリカの代表的詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー(1807-1882)で,作詞者の有名度という点では,キャロルの中でもトップクラスの曲であろう。これは,ロングフェローが南北戦争中の1864年につくった詞である。原詞には南北戦争を連想させる箇所があるが,キャロルの歌詞からは省かれている。一方,作曲者であるJohn Baptiste Calkin(1827-1905)のことを知る人はほとんどいないであろう。彼はロンドンで生まれ,ロンドンで没した生粋の英国人であった。多くの教会のオルガニストや合唱指揮者を務めた人である。"I Heard the Bells On Christmas Day"は元々1872年に作曲された"Waltham"という曲である。この曲を聴いて遊園地のメリーゴラウンドが回るときの音楽を連想しないだろうか。ちょっとノスタルジックで変わった雰囲気のキャロルである。
 この曲は,日本の賛美歌集では第378番「霊の戦い」として,全く別の詞をつけて収録されており,日本では残念ながらキャロルとして歌うことはできない。ロングフェローの詞の方は,賛美歌第二編第51番「なつかしきしらべ」として,クリスマス色を排して和訳されている。曲はもちろん別物だ。なぜこういうちぐはぐなことになってしまうのだろう。日本基督教団は,詞と音楽の野暮な入れ替えなどせずに,できるだけ欧米で普及しているままの形でキャロルを日本に紹介してほしい。