O Come, O Come, Emmanuel


 ヴィクトリア朝のロンドンで賛美歌作詞者として活躍したJohn Mason Neale(1818-1866)は,中世のラテン語の歌詞を英語に翻訳する上で多くの業績を残した。この曲も,彼が9世紀のラテン語聖歌を1851年に英語に翻訳したものである。Nealeの訳詞につけられた音楽も,もともとは中世フランスの古い聖歌であるが,Nealeと親しかったチャペル・ロイヤルの合唱指揮者Thomas Helmore(1811-1890)が1856年にアレンジして現在の形となった。日本では賛美歌第94番「久しく待ちにし」として知られる。
 この曲にはアレンジが施されているといっても,原曲が非常に古い中世の聖歌であるため,旋律,和声ともに古く厳かな中世の雰囲気がただよっている。とくにリフレインの

Rejoice! Rejoice!
Emmanuel shall come to thee, O Israel.


は緊張感がみなぎっていてすばらしい。19〜20世紀に作曲された有名キャロルのように明るく親しみやすいメロディーが出てくるキャロルではないけれども,しっとりした美しさが心に残る曲である。このキャロルに華やかなアレンジや伴奏は似合わない。ア・カペラかせいぜいオルガン伴奏だけのシンプルな合唱で歌われるときにいちばんよさが分かる曲である。