スクールディナー

学校での昼食
 小学校(インファント・スクール) では学校で給食を食べる子供(スクールディナー),お弁当持参の子供(パックドランチ),それに家に帰って食べる子供がいる。 長男の場合初めはパックドランチを持たせていた。中身はサンドイッチ。日本の幼稚園児のように手の込んだものは誰も持ってこない。耳を取らない食パンにハムやチーズだけ挟むというのが多い。それに,せいぜい紙パックのジュースとりんご一個という具合である。これらのランチを20cm x 20cm x 4cm位の大きさのプラスチック製のランチボックスに無造作に入れる。そしてペーパーナプキンを2,3枚入れておくと出来上がり。とても楽なものである。でも,たまにおにぎりをアルミホイルで包み,麦茶と一緒に持たせることもある。隣に座るフィーという女の子がしきりにお弁当が何であるか尋ねるらしい。息子は何と答えていたのかだろうか?

給食を頼む
 しかし,彼は同じホールで他の子供達がスクールディナーを食べているのが気になりだした。スクールディナーには何とデザートが付いているんだよ,なんて羨ましそうに言うのだ。私も彼がスクールディナーを食べてくれると朝はゆっくりできる。そんな訳で,1週間分だけとりあえず頼んでみることにした。一回1.25ポンド(300円ぐらい)。もちろんイギリスの学校は週休2日なので5日分である。

悪夢?のメニュー
 しかし,彼にとってスクールディナーはそんなに甘くはなかった。悪夢のような食べ物とは,見るのも嫌で,出てくるたびに泣き出しそうになるベークドビーンズである。要するにこれは豆をトマト味の汁でくたくたに煮たものなのであるが,味付の悪さといい,のど通りの悪さといい,まったくマーマイト(非常に苦い酵母ペースト。英国の子供はこれを喜んでパンに塗って食べる。)と並んで英国のワースト・フードに入れたいくらいだ。少なくても日本人ではベークドビーンズが大好きという人には出会ったことがない。スーパーにはベークドビーンズの缶詰が山積みされているが,それを10個,20個とまとめ買いしていく英国人を見るにつけ,やはり日英の味覚の溝は永久に埋められないなと思ったものだ。

ベイクドビーンズ
 一度はこのあまりにもまずいベークドビーンズがたくさんお皿に載せられたものだから,ついに彼は泣いてしまったそうである。すると担任のMrs Charlsが心配して飛んできたそうだ。もちろん彼の英語力ではこの悪夢のようなベークドビーンズのことは説明できず,結局「なんだか彼はしんどいようなので,早退した方がよい。」ということになった。電話で呼び出され迎えに行った私は,後でその話を子供から聞いて唖然とした。

デザート
 スクールディナーのメニューは,3,4種類あるらしく自分で選ぶようだ。しかし,イギリス人の子どもに大人気のベークドビーンズはもれなく付いてくるらしい。まあ豆の種類は,グリーンピースもあるのでこの2種類が日替わりらしい。あとメインはコシ,歯ごたえのない例のむにゅむにゅソーセージ,フライドチキンなど。チップスも必ず出る。そしてデザート。これは彼が期待していたものには違いないのだが,見事に期待を裏切られたという代物である。甘い物好きの子供でも顔をしかめてしまうピンク色のカスタードクリームがどっさりついた甘い甘いチョコレートケーキなのであった。
 彼はその日のメニューに期待するのではなく,ベークドビーンズが出ないようにと祈る毎日であった。そのお陰で今や小学一年生になった彼は日本の美味しい!?給食を食べるために喜んで通学しているようだ。