買物編

初期投資にお金がかかる
 英国で1年間住むともなると,食料品を別としても,英国で買わなければならない品物の数は相当数に上る。日本からすべての生活必需品を送ってもらうわけにはいかない(大体そんなことをすると送料の方が高くつく)し,電化製品などは,日本と電圧が違うので特別な仕様のもの以外はそもそも英国で使えない。(ただし電気炊飯器は英国の地方都市では手に入らないので,日本であらかじめ240V用のものを買い求めておくことをお奨めする。)
 英国で家を借りて生活を始めるときの初期投資を最小限に抑えるためには,家具付であることはもちろんのこと,備品ができるだけ最初から揃っている家を借りるというのが大切なことである(もちろん家賃との兼ね合いもある)。St Aubinsの家は,立地条件が良く,部屋もきれいだったことに加えて,冷蔵庫,乾燥機付洗濯機,電子レンジ,掃除機など必須の電化製品が備品として最初からあり,住んですぐに生活が始められたという点では非常によかった。

それでも買わなければいけなかったもの
Futon Bed
 St Aubinsの家には,結構まともなダブルベッドが1台と,スプリングが半分いかれているシングルベッドが一台あった。1歳の次男と母親がダブルベッドに一緒に寝るとして,残りがシングルベッド1台では4歳の長男と父親には不足である。そこで,長男用に小さめの安いベッドをもう1台探すことにしたが,家具屋やARGOS(カタログショッピングの店)を覗いてみると,子供用のベッドは結構いい値段がする。
 どうしようかなと思いつつ,中央郵便局の近くを歩いていると,Futon Shopという店が目に止まった。イギリスにこんな店があるとは思わなかったが,ここは要するに日本の布団をベッド風にアレンジした,半分ベッドで半分布団のFuton Bedを売る店なのであった。木の「すのこ」のような台の上に,かなり厚手の布団がのっている。日本の布団のように敷いたり上げたりできる代物ではない。木の台は完全に倒してベッドとして使う他に,半分起こしてソファとしても使える。(実際はとても重いのでなかなかソファとして使えなかった。)Futonそのものの質は大体一緒だが,柄や幅(シングル,セミダブル,ダブル)が選べるようになっていた。ちょうどセール中のセミダブルサイズのものがあり,これを購入した。届いたFuton BedはSt Aubinsに備わっていた普通のベッドよりも寝心地がよく,長男も喜んでこれに寝ていた。
 いったい人口8万人のBathで店をやっていけるほどFuton Bedがしょっちゅう売れているのだろうか?という疑問を持ったが,帰国前にBath大学のHPに「ヘルシーなジャパニーズ・スタイルのベッド。ソファとしても使えます」と広告を出したところ,大学に勤めている中年の女性にすぐ売れたから,意外と需要はあるのかもしれない。ただ,定価の半額で売り出したのがよかったのかもしれない。英国では中古品でも割引幅が小さいようだ。半額なら破格だったのだろう。

Television
 ほとんどの電化製品が揃っていたSt Aubinsの家にも,さすがにテレビはついていなかった。居間にアンテナのケーブルはあったから,前の住人もこれにつないで使っていたはずである。はじめは市内にあるテレビのレンタルショップで1年間だけレンタルしようと思ったが,計算してみると新品の安いテレビを買った方が安い。もし帰国時にこれがある程度の値段で売れれば,さらに買った方が得になる。  そこで,COMMETという量販店で大きさの割には安いテレビを購入した。宅配もしてくれたがmorningという約束で12時まで待ったが来る様子が無い。店にもクレームをつけたが,ようやく届いたのは1時前だった。後からわかった話だが,英国でのmorningというのは昼の1時までを指すようだ。 ビデオもないし,テレテキストなどの機能も付いていないので,BBC1,BBC2,ITV,Channel 4の4局だけを見るために買ったようなものだが,1年間子供番組やスポーツ番組を見るには十分であった。なお,日本のビデオテープは英国のビデオデッキでは再生できないので,英国で日本のビデオテープを見るためには,双方のテープに互換性のあるマルチビデオを買うか,日本から持参したビデオデッキをつなぐ必要がある。私達は試みなかったので分からないが,英国で子供の日本語教育やストレス解消のために,日本のビデオテープを見せるのは有効かもしれない。

不良品はつきもの
 せっかく買ったものが不良品だというケースは英国ではよくある。旅行者だと,買った物の不良に後で気付いても泣き寝入りするしかないケースが多いが,居住者なら慌てずに返品・交換を店に申し出ればよい。
 うちで最初のケースは食器セットである。家にあった食器類が少なかったので,4人分の大皿,小皿,カップ&ソーサーのセットを買った。柄などが付いていないシンプルな,その店で一番安いセットである。ところが,家に帰ってセットの箱を開けてみると,そのうち2枚が割れているではないか。すぐに店に持っていくと,よくあることなのか嫌な顔もせず,替わりの皿に替えてくれた。ただ,「Sorry」とは言われなかった。日本ならお店の方が平身低頭なのだが,お国柄である。
 次は,生活が落ち着いた頃に買ったCDラジカセである。どのCDをかけても音とびがする。これもすぐ店に持っていくと,店員は症状を確かめもせず,代わりの品を探しに倉庫に入っていった。結局同じ製品の在庫がなく,同じくらいの値段のラジカセではどうかということになり,差額を払って一番堅牢そうなものに交換した。このラジカセは何の問題もなく1年間ちゃんと動いた。CDソフトの方が不良品だったこともある。この場合は同じCDの在庫がないので,返品してお金を返してもらった。

どこで何を買うか
 どこで何を買うかというのはまったく個人の好みによる。日本でも英国でもそれは同じことだ。実際に住んでみて,店に足を運び自分の目で確かめて買えばよい。もちろん現地の人や友人の紹介が役に立つ。郷に入れば郷に従えである。
 毎日必要な食料品については,特に個人の好みが大きいだろう。見かけはおいしそうでも,中身が伴わないものも結構ある。自分の味覚を信じ,失敗しながら気に入った食品を見つけてゆくしかない。美味しいものに出会えば,必ず銘柄を覚えるくらいの気持ちでいた方がよい。とことんまで不味いものが当たり前のように売っている国である。
 林望さんのように「イギリスはおいしい」と言うつもりはないが,全部が不味いわけではなく,美味しいものもあるのでご安心を。肉,野菜などの基本素材は決して悪いものばかりではなく,料理次第でむしろ日本ではなかなか食べられないごちそうとなる。春先のウェイルズ産骨付ラム,コッツウォルズにあるバイブリーでとれた新鮮な鱒など美味しかった。