「昭和前期の洋画」展を見て


一史 作 「県立美術館から見た宍道湖」 04.5.01


 2004年4月23日から5月30日まで島根県立美術館で開催の「昭和前期の洋画」展を見た。美術館を訪れたのは5月1日の土曜日。この美術館の企画展で洋画を見に訪れるのは本当に久しぶり(2001年春に開かれたアバディーン美術館展(イギリス・フランス近代名画展)以来なので,とても楽しみにして出かけた。前回は下の息子(星史)がまだ小さかったので,子どもともどもゆっくり見れるという感じではなかったが,今回は小学2年となり,上の息子(一史)は今小5で,2人とも絵を見たり描いたりするのは好きな方なので,今回は美術館が企画している「子供のためのギャラリー・トーク」に参加させてみた。美術館学芸員の方の案内で絵を一緒に見ていくというものである。
 今回の展示には昭和期に活躍した本当に錚々たる画家たちの絵が数多く展示されており,入口を入ったらいきなり藤島武二,安井曽太郎,梅原龍三郎などの絵が並んでいて圧倒されたが,子どもたちは当然ながら画家の名前のことなどは全く知らないから,自分の興味の趣くままに絵の感想を言ったり,質問をしたりしている。学芸員の方の分かりやすくて,その絵のおもしろいところを衝いた解説がとても楽しかったらしく,ギャラリー・トークが終わってからもニコニコ顔であった。どの絵のことか忘れたが,衆議院議長の公邸から借りてきた絵があり,イラクの人質事件が起こる直前に借りてきたもので,もし起こった後だったら借りられなかっただろうという話があり,そういった絵にまつわる裏話も一史にはおもしろかったらしい。星史は藤田嗣治の14匹の猫が喧嘩している絵(学芸員の方が子どもたちに,「この絵に猫は何匹いるかな?」と聞いて,子どもたちが一生懸命数えていた絵である)や,長谷川利行の「赤い機関車庫」の赤い色が好きだよ,と言っていた。絵を見るに先立って,キャンバス,絵具,油,絵筆,パレットなど画材の説明もあって,実際に画材に触らせてもらえたことも嬉しかったようだ。「子供のためのギャラリー・トーク」には,機会があればまた参加したい。「一流」の絵を学芸員の方と一緒に見ていくという体験は,子どもたちにとって貴重な財産となるはずだ。
 質量共に充実した素晴らしい企画展であったが,若くして亡くなった佐伯祐三は家内の卒業した大阪府立北野高校出身の五大?有名人にして偉大な先輩ということになっているので,彼の作品は家内にとってとりわけ感慨深いものがあったようだ。北野高校の校長室には佐伯祐三の有名なノートルダムを描いた絵があるが,ふだん生徒は校長室には入れないのでこの絵を見ることはできないらしい。家内は,創立記念行事のときに一度だけその絵を見る機会があったが,佐伯祐三の絵を見たのはそれ以来だったということなのでとても感激したようだ。
 絵を楽しく見た後は,自分が描く番だということで,これも美術館の企画なのだが,水彩絵具や絵筆を貸してもらい,美術館裏の土手にこしかけて宍道湖をスケッチした。好い天気に恵まれ,2人の息子ともそれぞれお気に入りのスポットで1時間あまりのんびりと絵筆を握った。このページ上の絵は一史の作品である。島根県立美術館は美術館からの宍道湖の眺め自体が「絵になる」ので,来るといつもとても得した気分になる。

2004.5.1