Widcombeの画に寄せて


Charles Robinson (1985)




  我家の一室の壁には,大きさ横50cm×縦35cmほどの1枚の水彩画がかかっている。これは,私たちが住んでいたバースのWidcombe(ウィッコム)にある運河(Kennet & Avon Canal)から南方向に見える風景である。遠くに見える尖塔は,Widcombe Churchのものである。このWidcombeの風景こそ,St Aubinsの近くから見ることのできる,最も身近で忘れがたいバースの景観の一つであった。
 帰国前に,私たちは自分たちにとって最も身近なバースであるWidcombeの風景を描いた画が欲しかった。それも,コピーではなくオリジナルのものを…。有名なローマン・バースやロイヤル・クレッセントを描いた画のコピーは,中心街の画廊で安価に求めることができる。しかし,画材がマイナーなせいか,Widcombeを描いた画はなかなか見つからない。しかし,「灯台元暗し」とはこのことをいうのだろう。ある日,地元WidcombeにあるPrint Roomという画廊に入ってみると,見覚えのあるWidcombeの風景を描いたオリジナルの水彩画が,かなりの数置いてあるではないか!これらの画を描いたのが誰か店員に尋ねてみると,Claverton(Widcombe Hillを上ってバース大学方向)に住む地元画家のCharles Robinsonだということしか分からない。画のタイトルもとくにないようだ。でも,それはどうでもよいことであった。1枚の画がすぐ私たちの目をひいた。それが,この画なのである。パソコンの画像と色調は多少違うものの,原画も明るい南国的な色調の画ではない。むしろ,英国のどんよりとした灰色の空が基調になった暗い画なのだ。私たちは,そこがまた気に入ったのだった。
 私たちが日本に帰国するにあたり,Parcel Forceにてバースから発送したたくさんの荷物の中で,最も心配だったたのがこの画のことであった。幸いにも,画廊の店員の厳重な梱包のおかげで画は無事日本に着き,バースの身近にあった美しい風景をいつも私たちに思い起こさせてくれるのである。バースを旅する人で,駅より南側を訪ねる人は少ない。しかし,バースの南にもすばらしい景観はたくさんある。願わくば,一人でも多くの方が自分だけのバースを発見されんことを!