これは遙か昔、当時(1960年代)東京のリコーバレー部監督の方が作成されたものです。その内容に、元東北リコーバレー部の部長が注釈を付け、部員へ1990年頃に配布したものです。古い内容で時代にマッチしていないかもしれませんが、一言でも胸打つような文章が見つかれば幸いです。 |
1.チーム内で仲良くする事
これは人の和でありチームワークとなり、個人の力をチームの力にまで直結させる元である。
※如何に高度の技術を持った選手であっても、チーム内にとけ込めない者では少しもチームの力とはなり得ない。
セッターとアタッカーが仲の良い友人同志であれば、セッターはアタッカーのためにどうにかして良いトスを上げて打たせたいし、アタッカーはセッターのために上がったトスはどうにかして打ち込もうとするだろう。
そうしてこそセッターもアタッカーもチームの力となり得るのだ。
2.バレーボールを愛し、自分の生活をバレーボールに結びつける事
これはコートに出たときだけが練習時間である様な考え方ではなく、一日の内、躰を動かしている時がいつでも練習であると考えて行動する事である。
※昔、相撲取りは新弟子時代、外を歩くときは鉄製の下駄を履かされ、足腰を鍛えたと云う。
同じ様に私達の生活の中にも、電車に乗ったときとか物を運ぶときとか、いろいろとトレーニング替わりになる要素があると思う。
明日からでも右利きの者は左手でハシを持ってはいかが? それと同時に正規の練習にさしさわる様な深酒や夜更かしも慎むべきである。
3.信頼され、鍛えられる選手になってもらいたい事
これは監督や選手間で信頼される選手であり、苦しい練習に耐え忍耐力のある、そして自己を苦しい練習の場に投げ込む勇気を持つ事である。
※信頼される選手とはミスの少ない選手である。安心してチャンスボール・アタック・トス等を任せられる選手である。
セッターが安心してトスを上げるかそうでないかの時のトスの変化を考えよう。
鍛えられる選手とは厳しい練習に耐え得る肉体力と精神力を持つと同時に、練習に依ってより強い肉体力と精神力を培える者である。
4.ゲームに負けても褒められるようになってもらいたい
強敵に当たって恐れず、弱敵と見て侮らず、常に自分の力の最高を発揮し、敢闘精神に燃えることである。
※強敵には自信を持とう、弱敵には過信を捨てよう。
そして負ける時には、納得の行く負け方をしよう。
5.自信を持ったプレーをする事
自信とは自分のものを持つことである。自分のものとする為に操作技術を真に身に付けるように努力することである。
※自信を持ったプレーをすると云うのは、自信を持ってプレーできるように励む事である。
エンドラインに落ちるサーブや拍手したくなる様な二段トスは、決して誰かのものだけではないはずだ。
6.真面目な選手である事
素直に指導者の云うことを聞き、それを自分のものにしようとするまじめさと同時に、生活においてスポーツマンであると云う誇りを持ち、常に摂生し、良好なコンディションを保持する様にする事である。
※真面目とは自分の心を偽らず、又、恥じない行動である。
7.くさらない選手である事
くさると云う事は自惚れに通じる。自分がうまいと思っていると、くさる気持ちも出る。常に理想を持ち、努力を続けている選手にくさるという事はあり得ない。出来なかった時は、なお一層努力することだ。
※満足のゆくプレーが出来ないからと云ってくさるな。それだけ自分が未熟であったのだ。
それよりも、くさると云う心の隅にある自分の満足のいったプレーを、あの様にも出来たのだと云う可能性として考えよう。
くさる前に1秒でも多くボールに触れろ。
8.親切なプレーをする事
独りよがりなプレーをして、他の選手に無理をさせない事である。バレーボールはチーム全員でプレーすると云う事を忘れてはならない。
※いかなる場合も相手の立場に立ってプレーしよう。
親切なプレーとは、自分の次にプレーする味方が最高のプレーを可能にさせる様、自分がプレーする事である。
9.特徴のある選手に成る事
他の人のない特徴を作り出す様努力し、それを伸ばす様に心懸ける事である。
※自分のものを持つ事、自分にあったものを持つ事であり、何らかの他人の範になるものを持つ事である。
10.若年寄にならぬ事、いつも元気に溌剌としている事
ゲーム中の最年長者であっても、プレーしているときは、もう年などは絶対に考えないこと。
※スポーツマンにとって問題なのは年齢ではなく、いくつになっても現状維持できる練習と心構えである。
年齢を感じると云うのは、練習を怠っている証拠である。
11.記録に現れないミスをやらない事
パス・トスミス等、直接記録に現れないミスがチームを敗戦へ導くことが多い。
※ミスとは全ての自分の思い通りに行かなかったプレーと思うべし。
スコアーブックに記載されているミスよりも連係プレーの中に於いての不正確なプレーの方が敗戦に繋がることが多い。
12.忠実なプレーが最高のプレーである
ボールを扱っていない時のプレーは不忠実になりがちであり、ボールから目を離しがちである。そんな時に凡失が出る。
※忠実なプレーとはバレーボールのセオリー通りのプレーをする事であり、決められた動きを怠らないプレーである。
レシーブカバー、アタックのブロックフォロー、それらには常に付いて行かなければならない。
そうしたプレーこそ、一番大切なプレーです。
13.物事に熱中出来る人となれ
何事でも中途半端では大成しない。バレーボールに自分の青春を賭ける位の気持ちでやろう。
※東京オリンピックで栄冠を手にした女子選手達は、青春を犠牲にしてバレーに打ち込んだのだろうか。
決してそうではない。彼女等にはバレーこそ青春の全てであったろう。
我々ももう一度自分自身のバレーへの情熱を考え直してみよう。
一つの事さえ完成に成し得ない人に何で他の事で大成できよう。
14.他所のチームを羨むな、自分のチームに誇りを持つこと
より良く、より強くなるには、選手同志の協力と努力より他に無いのである。
※人やチームを羨むのは自分等の不甲斐なさを認めている様なものだ。
条件が悪ければ悪いに負けない努力や練習をするべきだ。そうして自分達にも出来るのだという誇りを持つことだ。
15.立派な補欠が立派な選手であること
チームを良くするのも乱すのも、補欠次第である。どんな環境にあっても立派にその責任と義務を果たそう。
※補欠としての役目も果たせない選手がレギュラーとしての役目を何で果たせようか。
レギュラーのアタッカーのスパイクが上手になったのは補欠の球拾いの為だ、レギュラーのレシーバーのレシーブ力が増したのは補欠が後ろで突っついているからだ位の気概を持とう。
そして常に人一倍の努力を忘れぬ事。
16.与えられた責任を完遂することがスポーツマンの努めである。常に此の責任を忘れぬように
※ポイントゲッターの責任とは、第一サーバーの責任とは。前者はどうしても一点取らなくてはならずに上げたトスは、必ず入れなくてはならないし、後者も又必ず入れなければならないだろう。
同じ様に、ハーフでもバックでもそれぞれにやらなければならぬプレーがあるのだ。
その責任を充分に果たすには、練習の積み重ねに他ならない。
17.一点をおろそかにする者は一点に泣く
ゲーム始めの一点・二点は誰も余り重視しないが、終わりの一点・二点になると目の色を変える。だから常に慎重なプレーをやらねばならない。
※バレーボールに於ける一点とは、クイックによる素晴らしいポイントが一点なら、相手のネットタッチによる反則も一点である事を忘れない様に。
18.チャンスを簡単に敵に与えるな
チャンスを相手により多く与えた方は負けである。
※パス・トスミス等は直ぐに失点に結びついてくる。又、アタック出来ないラストボールの返球には特に気を付けよう。
19.チームは常にアタック・レシーブ・サーブのバランスを保つこと。それが勝利への道である
※アタック、レシーブ、サーブのどれか一つ欠けても、それら本来の力を発揮できない。
又、どれか一つ先行しても、それ本来の力を発揮できない。此の三つは個人個人の場合にも又云える。
チームとして考えた場合は、自分がいったい何を担っているかを考え、より励むべきである。
たとえ6人制の有名エースを連れて来ても、トスが上がらねば打てぬのだ。
20.選手は聞く耳を持て
選手はいろいろな人からいろいろなバレーボールの話を聞き、技術的にもわからない所はどしどし聞けるようでなくてはならない。上手に聞くことによってより多く理解し、より多くバレーボールを消化することによって、より立派なバレーボールの選手と成れ。
※選手は常に新しい知識の疑問を解く為にいろいろと聞いたり調べたりする心構えを持たねばならない。
同時に自分のプレーに対する助言や忠告を素直に聞ける人とならねばならない。