我が家の4番目の家族は“あの子”に決まった。
さぁこれからいよいよ“あの子”を迎える準備をしなくては!
まずは名前。
カズマの時もそうだったけど、今回も相当悩んだ。
たかが名前、されど名前・・。
呼んだ時の響きや書いたときの印象。名字とのバランス・・なんてのもあるけど、これはワンちゃんにはあまり関係ないかな?(笑)
とにかくいろいろな点から考えて、最終的に“ライム(来夢)”と名付けた。
ずっと夢に描いていた犬との暮らしがやってくる、という喜びを込めて・・・。
次はライムのおうち。
この家に住み始めて丸6年間、ただの1度も動かしたことのない食器棚を夫婦でヨタヨタと動かしてリビングを大きく模様替え。
広くなったスペースにライムの居場所を作った。
サークルの大きさ、形、内装(トイレとベッドをどうするか)などなど試行錯誤の末、94.5p×63.5p×61.0pのサークルを置き、中をトイレスペースと休息スペースに分けてみた。
スノコをサークル内部のサイズにカットして、その上にタオルとヒンヤリマット(これは噛まれても大丈夫なようにアルミボードを購入)を置き、給水器(ガラス製)を取り付けて休息スペースは完成。
トイレの方は、最初はトイレ用シートを置くことも考えたが、食べてしまうと危険だと聞き、結局新聞紙を広げて置くだけにした。
こんな感じでいいのかな?って不安だったけれど、とにかくライムが来てみないと良くわからないので、とりあえずこれでやってみることにした。
京都の人の家に遊びに行って“まぁぶぶ漬け(お茶漬け)でもどうどすぇ?”とお茶漬けを勧められたら“もう帰って欲しい”という合図だという例え話をよく聞く。
カランカランと音のするツッカケ(サンダル)を履いていて“いやぁえぇ音やわぁ”と言われたら“うるさい!”と言われたのと同じだとも・・。
私もパパも生まれたときから“京都”のしきたりの中で育ってきた。
こういう気質にはイヤというほど慣れている。
初めてこの家に引っ越して来たときも、洗剤をいっぱい買ってきて、向こう三軒両隣、町内会長さんの家から向かいの家まで挨拶に配り歩いたものだ。
でも、“犬を飼う”という挨拶って、どこまですればいいんだろう?
たぶん私が3軒も向こうの家の人から“犬を飼うからよろしく”と挨拶をされたら、逆に困ってしまうんじゃないかな?
いろいろ考えて、今回は両隣の2軒だけに菓子折りを持って挨拶に行った。
“カズマ君も優しい子に育たはるわ。えぇ事やなぁ。”
“その内散歩に連れて出はるんやろ? その時が(見れるのが)楽しみやわぁ”
どちらのおばちゃまも優しく対応してくださった。
でも・・。ここは京都のど真ん中。
ホンマはどう思ってはったんか・・。今でもよぅわかりまへんわぁ(苦笑)。
当日は帰省ラッシュの混雑も考慮に入れて、朝7時に家を出た。
朝ご飯は前日の夜にみんなで作ったおにぎり。
車内でそれをほおばりながら、これからの4時間の小旅行への期待が膨らむ。
でも、小さいカズマにとって、それは決して楽な旅ではない。
途中で数回の休憩を取り、大好きな戦隊ヒーローもののCDをガンガンに鳴らしながらの道中になった。
幸いラッシュに巻き込まれることもなく、お昼前に目的地に到着。
そこでびっくりするくらい大きくなったライムに出会った。
子犬って本当にすぐに大きくなるんだなぁ・・なんてあらためて思いながら、その元気の良さに圧倒される。
“名前が決まりました”というメールを出してから、ブリーダーさんが“ライム”と呼んでくださっていたおかげで、この子は自分が“ライム”という名前であるということをちゃんと自覚しているようだった。
えさのこと、ワクチンのこと、その他いろいろな話をして、いよいよ帰路につく。
バリケンにスノコを敷いて車に積んではいたが、最初は私がバスタオルにくるんで抱っこして行くことにした。
家の中ではあんなに元気だったのに、これから始まる新しい“何か”に緊張したのか、ライムは本当に“じ〜っと”私に抱かれていた。
ブリーダーさんの家を出る少し前に、大人用のフードをつまみ食いしてしまったせいか、それとも車に酔ったのか、一度吐いてしまってびっくりしたが、その後は抱っこを代わったカズマの腕の中で、とても安心したように眠っていた。
子守歌を一生懸命に歌いながら、ライムの背中を優しくトントンしてあげているカズマを見ていると、“あぁ、大きくなったんだなぁ。”なんて優しい気持ちになった。
すっかり寝入ったのを見計らってライムをバリケンに移し、車を走らせる。
途中で休憩を取ったが、この時はパパとママが交代で車に残り、ライムのそばについていた。
帰宅したのは午後5時前。
ブリーダーさんの指示通り、帰ってすぐに砂糖水をあげて、サークルで休ませてあげた。
“ここが今日からライムちゃんのおうちだよ。”
そう声をかけると、新しい我が家の家族はキョトンとしながら首をかしげていた。
しばらく休んだあと、我が家での初めての食事。
エサはブリーダーさんの所で食べていたのと同じ物を買って来た。
共働きの我が家が朝昼夜の3回食にすると時間調整が大変だろうという事で、ブリーダーさんからライムの食事は朝と夜の2回食にするように指示してもらった。
本を読むと“最初は3回食”とか“犬用ミルクでふやかして”などと書いてあるのに、2回食、しかもドライフードを硬いままで食べさせても大丈夫なのかな?なんて思っていたのだけれど、いざ与えてみると、これがまぁカリッコリッと小気味いい音をさせて、無我夢中であっという間に食べてしまった。
車酔いも、新しい環境も何のその!
“あたち、もうちょっと欲ちいわ♪”みたいな顔をして、我が家の“姫”はペロリと舌なめずりをしていた。
そして迎えた初めての夜。
近所迷惑にならないように、普段は開けっ放しの窓を閉め切ってエアコン(ドライ)をかけて眠りにつく。
“この子はオオカミの子孫なんだなぁ”と変な感動を覚えるような立派な遠吠えと、思わず助けに行きたくなるような悲痛の叫び(キュイ〜ン キュンキュン)を、夜11時と朝6時半頃に40分くらいずつ繰り返していたが、みんなが寝静まっている時間帯は静かだったので、何とかみんなゆっくり睡眠を取ることが出来た。
朝起きて行ってみると、サークルの中にはウンチとオシッコがいっぱい。
今から思えば朝方に鳴いていた理由は、寂しいの半分、ウンチを掃除して欲しいの半分、だったように感じる。
そこで、我が家が学んだ“失敗”
○寂しいかも知れないと思い、部屋の豆電球をつけたまま寝た。→× =暗くしたら寝る時間なんだと覚えさせてあげる方が良さそう。
○離れているけれど、ライムのサークルから見える位置で寝ていた。→× =寝返りなどが見えると“呼んだら来てくれるかも”という期待で鳴く。戸を閉めるなど、人の動きが見えないように工夫すること。
・・結局夜鳴きは2日間続きました。その後も朝の7時前になると決まって鼻を鳴らすような鳴き方をしていましたが、これは“ウンチ取ってぇ〜!!”の合図であるとわかりました。体調も問題なし。ライム、心身ともに“強い子”です。
・・カズマは “子犬が来たらその日からすっごい仲良しのお友達” になれると思っていた。
名前を呼んだら可愛い声で “アン♪” と鳴いて、自分のそばに駆け寄って来るものだと信じていた。
ところが・・。
ライムはそんなカズマの思いをよそに、小ちゃくてチョコチョコ動くカズマの足をターゲットにして追いかけ回し、カプッカプッと甘噛みをする。
「走って逃げたら余計に噛まれるから」と教えても、4歳のカズマにそんなこと理解するのは到底無理な話だった。
それでもカズマは最初泣かなかった。(親ばか的見解で言えば、頑張っていた(笑))
“こんな子嫌い” とか “ライムなんてもういらない” とは絶対に言わず、“ライム可愛い。来てくれて嬉しい” と、それしか口にしなかった。
たぶん子犬が来たという喜びは本心だったと思う。
ただその喜びが “怖い” とか “痛い” という気持ちに圧倒されて、カズマ自身も困惑していたのだろう。
でも、さすがに2日目の夜、張りつめていた気持ちが爆発して、カズマは大泣きする。
“カズマはライムとお友達になりたいのに〜!! カズマ、ライムと仲良しになれへ〜ん。 抱っこしてヨシヨシ♪ってしたいのに〜!! うぁ〜ん!! ”
それをパパもママも抱きしめて聞いてあげることしか出来なかった。
これはカズマにとって初めての大きな試練。
でもカズマが克服しなければ、誰にも助けることが出来ない問題だった。
そして気持ち全部をぶちまけて少し落ち着いた彼に、私は少しずつ話をしてあげた。
“ママも初めて家に犬が来た時は高いところに上ったまま降りられなかったなぁ。だってすっごく怖かったもん。犬なんて家に来なかったら良かったなぁ、とか、こんな子いなくなればいいのに、とか思ったこともあったなぁ。
でも・・。でもね、ママはワンちゃんとすっごく仲良しになれたよ。一番の友達になれたよ。少しずつ、少しずつだけど、絶対にカズマとライムだってお友達になれるんだよ。
ママはカズマとライムは世界で一番の仲良しになれるって知ってるよ。だってカズマはこんなにライムのことを大事に思っているんやもん!だから一緒に頑張ろう!カズマ、頑張ろう!”
小さくうなずくカズマと、私達の横で首をかしげているライム・・。
私は本気でこの二人の距離を縮める手助けをしたいと思った。
そして次の日、パパとママはブリーダーさんから聞いたグッズを買いに行く。
甘噛み克服グッズ・・ゴムの長靴(雨靴)!
これさえ履けば甘噛みの痛みから逃れられる=“怖い” という気持ちが和らげられる。
本当は半信半疑で、っていうか藁をもつかむ気持ちで(笑)買ってきたゴムナガだったんだけど、これがビックリするほど効果覿面!
まるで仮面ライダーがベルトを装着して変身するかのように(爆)、カズマは強くなった。
まぁ、強くなったと自覚したあと、有頂天になってスキップしてみたり、わざとライムの顔の前にゴム長の足をちらつかせてみたり・・とやりすぎて、パパ&ママに注意されることもあったけれど、とにかく二人の距離はずいぶんと縮まった。
雨の日に使われることのない長靴・・・。
でも我が家では今、もっとも価値のある甘噛み克服対策グッズである!(笑)
・・犬は家族に順位をつけるという。
群れのリーダーを決め、そのリーダーに服従するという。
ライムはまだ赤ちゃんではあるけれど、すでに本能的に私達に順位をつけているらしい。
私が考える “ライムがつけた我が家の順位” は・・。
リーダーがパパ。
ライムと私が同等。
そしてライムの下にカズマ・・。
この順位の根拠は、ママとカズマは甘噛みされるのに、パパはあまり噛まれなかったから。
(まぁパパの足がどうしようもないくらい臭くって、噛む気がしないから・・なんて意見もあったんだけど(爆)。)
ママとライムが同等っていうのは、初めて来た日から考えれば治りつつあるみたいなんだけど、カズマの順位をあげるのには相当時間がかかりそう。
何しろライムは “カズマは弱虫” だって知っているから。ビクビクしている様子っていうのは、どんなに隠してもライムに伝わっているだろうから。
でももちろんこのままじゃいけない。
そこで私達はカズマの順位をあげるためにカズマと2つの約束をした。
1:ライムのご飯はカズマが用意すること
2:ライムの前では絶対に泣かない(涙を見せない)こと
どこまで守れるかわからない約束だけど、とにかくこれを実践することで、カズマは偉い人だってライムに思ってもらわないと・・ね。