英国で暮らすときに


■「British Lifestyle A-Z」

英国大使館発行クオリティ・ブリテン 別冊(紀伊国屋書店)¥1,429
 英国大使館が発行している広報誌「クオリティ・ブリテン」の別冊として刊行された本書は,下の単行本「日本人の知らないイギリス」でもあった英国を知るためのキーワードをより拡大充実させた事典のような内容を持つ一冊である。しかしサイズがA4版と大きいオールカラーのビジュアルな本であるから,より視覚に訴えるガイドブックとなっている。男性がかぶる"Hat"の種類や用途を解説したページなど,なかなか他書では見ることがないだけに興味深い。



■「日本人の知らないイギリス」

英国大使館広報部 編(丸善ブックス)¥1,800
 日本人がイギリスやイギリス人について論じた本は山ほどあるけれども,「英国大使館広報部 編」というのが気になって求めた本。もとより現地の国民に自分たちの国のよさを宣伝するのが重要な任務の一つである大使館が編集した本(英国大使館の広報誌「クオリティ・ブリテン」の掲載記事を加筆訂正したもの)であるから,「日本人が知らない」といっても,イギリスの暗部や非能率な点についての記述がないのは当然である。問題はイギリスの美点について,本国人ならではの鋭い指摘,深い洞察があるかどうかだ。本書はパブ,音楽,スポーツ,料理などをキーワードにした全7章からなるが,面白かったのはパブについての第2章と,音楽文化を論じた第3章。パブについての記事は決して目新しいというわけではないのだけれども,いかにも著者の英国人自身がパブが好きで好きでたまらんという気持ちが伝わってくる。イギリスの音楽文化についての章を読むと,すでにヘンデルの時代から皮肉を込めて「音楽の偉大な消費国」といわれた伝統が,今も脈々とイギリスに流れ続けていることを感じる(もちろんクラシック音楽だけでなくその他のジャンルの音楽にも)。意外と面白かったのが最終章の「英国を理解するためのキーワード」と付録「英国と言う国」。知ってそうで知らない英国社会の一端が見えてくるかもしれない。



■「イギリスの英語」

西川永幹 著(ごま書房)¥900
 言うまでもなく,日本の学校英語は「アメリカ英語」であって「イギリス英語」ではない。私たち家族が渡英する前に,さて「イギリス英語」でも少し勉強してみるかと手頃な本を探したが,本屋にはほとんどなかった記憶がある。本書の初版は1998年2月だから,一応私たちが行く3ヶ月前である。知っていたら買っていたのにと思った。「イギリス英語」の特徴がよくわかる本だからである。全7章からなり,「イギリスの英語」,「「The Economist」の英語」,「パブリック・スクールの英語」,「オックスフォードの英語」,「コクニー」,「「イギリス英語」と「アメリカ英語」の違い」,「オーストラリアの英語」という構成になっている。イギリスに暮らしていちばん実感するのは,やはり「「イギリス英語」と「アメリカ英語」の違い」である。その意味でこの章は実用的にも役立つだろう。他の章は私にとっては実用的というより,むしろ読み物としておもしろかった。この本を読んだからといって,決して英国の「上流階級」が使う英語を操れるようになるわけではないし,普通の日本人がそうなる必要性は全くないのだが,文化としての多様な「イギリス英語」をより深く知ることは意義のあることだろう。



■「イギリス暮らし入門」

ICS国際文化教育センター 編(大修館書店)¥1,600
 1年間の英国滞在で一番お世話になった本のうちの一冊。とかくロンドンに偏りがちな情報を掲載している本が多い中で,この本は英国に日本人が滞在する際に必要な「普遍的」情報を満載している。



■「地球の暮らし方 1.イギリス」

地球の歩き方編集室 編(ダイヤモンド社)¥2,200
 上のイギリス暮らし入門」に比べると,対象がややロンドン滞在者向けな嫌いはあるが,多くの在住者の声には生活に役立つ情報も多い。


■「英国市販薬ガイド(OTCガイド)」

日本クラブ 訳 £8.00
*洋書扱い。ロンドンの本屋に置いてあります。
 
 「英国の薬」でも紹介した本。症状別,会社別に市販されている薬をほとんどすべて網羅したガイド。薬局で薬を買うとき大変参考になる。日本語訳も含めて改訂されるので最新のものを手に入れた方がよい。



■「英国医療ガイド」

日本クラブ 監修 £8.00
*洋書扱い。ロンドンの本屋に置いてあります。
  英国の医療制度,治療方法の日本との違いなどについて分かりやすく解説した本。うちの長男が喘息で入院したとき参考になった。ロンドン在住者にとってはとくに役に立つだろう。

■「ロンドン暮らしのハンドブック」

英国日本婦人会 編 £3.50
*洋書扱い。ロンドンの本屋に置いてあります。 
 一度見たら記憶に残る緑色の表紙の本。手書きの文に何とも味わいがある。定期的に改訂されているはずである。ロンドン以外の在住者にも役立つ情報が盛り込まれている。



■「イギリス流の愉しみ方」

話題の達人倶楽部 編(青春出版社)¥476
 ガーデニング,パブ,スポーツ,こだわりの逸品とあらゆる面から「英国式生活」を楽しむための情報を提供する本。一つ一つの項目が短いので,内容に深みはないが,どこからでも気楽に読める。


■「ヨーロッパ・カルチャーガイド1 イギリス」

(トラベルジャーナル)¥1,700
  歴史と伝統を誇る大英帝国的文化というよりも,現代の悩める英国の文化をネガティブな面も含めて紹介しており,裏話的な内容が多いのが(多少品がないとはいえ)面白い。英国の階級社会の話など興味深い。項目の数が多すぎ,やや散漫な印象を受けるのが残念。



■「アメリカ英語とイギリス英語」

大石五雄(丸善ライブラリー)¥640
 日本の学校で習うアメリカ英語と,イギリス英語が,日常会話で使う言葉のレベルで全く違ったものであることは,少し英国に滞在するとすぐ気付くことである。この本はそれを具体的な例で簡潔に説明している。この本は英国に持参しなかったが,帰国後に改めて読み直すと思い当たることが随分とあり面白かった。



■「日本文化を英語で紹介する事典」

杉浦洋一,J.K. Gillespie 著(ナツメ社)¥1,800
  私たちもそうだったのだが,英国人に日本の文化を説明するのは簡単なことではない。語学力の問題は当然として,文化的バックグラウンドが全く違うし,日本人が英国文化を知っているほどに,一般の英国人は日本文化を知らないからである。この本は,1ページに一つの項目を取り上げ,上段には写真やイラスト,中段には日本語による解説,下段には英語による解説が簡潔にのっており,非常に分かりやすい。能舞台や華道から,丼物や年越しそばに至るまで,この本と少しの努力があれば大丈夫。