God Rest You Merry, Gentlemen


 "God rest you merry, gentlemen"は,英国では「ミスター・ビーン」のシーンで長々と使われるほどポピュラーなのに,他の国ではあまり歌われない「不遇」なキャロルである。歌詞も曲も18世紀英国のトラディショナル・キャロルということになっているが,この曲が英国で広まったのには,William Sandysの寄与するところが大きかった。彼は英国南西部のトラディショナル・キャロルを精力的に収集し,1833年にそのコレクションを"Christmas Carols Ancient and Modern"として出版した。"God rest you merry, gentlemen"の歌詞もこの本に含まれている。この歌詞は15世紀まで遡るものだと言われている。もっとも曲の方はロンドンで採取されている。現在の形に編曲(1867)したのはJohn Stainer(1840-1901)で,彼はオックスフォード大の音楽科教授を務め,ナイトの称号も得ている。歌詞1行目の"merry"と"gentlemen"の間のコンマ(,)はこれで正しい。"God rest you merry"は"God keep you merry"(神が汝をよくしたもう)の意味である。なお"you"のかわりに古い"ye"を使って"God rest ye merry, gentlemen"としている文献やホームページも多いが,ここでは"The Oxford Chiristmas Carolbook"の表記にしたがうことにする。
 この曲はかつては町や村の見張り人が,小銭稼ぎのためにクリスマス・シーズンに町や村のなかでとくによく歌ったとされている曲である。「ミスター・ビーン」の中でも,救世軍のブラスバンドがこの曲を街なかで演奏している。とすると,「ミスター・ビーン」のシーンは,さりげなく英国のキャロルの伝統を伝えているといえるだろう。日本では賛美歌第二編128番「よのひと忘るな」として収録。